ヒトリエが目指すスリーピースバンドの極地とはーー10周年を経た現在地、ライブ原体験や『HITORI-ESCAPE TOUR 2026』への想いを語る

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 ヒトリエが、2026年5月よりライブハウスツアー『HITORI-ESCAPE TOUR 2026』を開催する。バンドとして初めて訪れる愛媛公演を皮切りに、全国13都市14公演を巡る。メジャーデビュー10周年を経た今、どんな思いを抱えてステージに立つのだろうかーー。今回SPICEでは、シノダ(Gt.Vo)に長年ヒトリエを追いかけてきたFM802 DJの田中麻希がインタビュー。スリーピースバンドの極地へと進むヒトリエの現在地、そして47都道府県の弾き語りツアーを経験したシノダの心境の変化やライブの原体験など話を訊いた。

駆け抜けたメジャーデビュー10周年イヤー、
全国弾き語りツアーで獲得したものと心境の変化

ーー2024年1月からのデビュー10周年のアニバーサリーイヤーには、『センスレス・ワンダー[ReREC]』のサプライズリリースから始まり、『オン・ザ・フロントライン』のアニメOPテーマ起用、国内・アジアツアーや日比谷野音でのライブ、そしてシノダさんは47都道府県弾き語りツアーを回られたり、とすごく濃い期間を過ごされたと思います。

あんまり覚えてないんですよね。その間にアルバム『Friend Chord』を作ったりもしていたので、「ここを駆け抜けたらきっと休暇がやってくる」という気持ちが強かったと思います(笑)。

ーー記憶が飛んでしまうほど慌ただしく濃かったと(笑)。

ワープに近い感覚ですね。なんか気づいたらこんなとこにいる、みたいな。

ーー10周年を経て再確認できたことや、印象に残っていることはなんですか?

やっぱり弾き語りツアーですね。人生で1番歌った年になったと思います。ツアーを通して、ようやく自分の歌の型が完成してきたような実感を得ることができました。いいのか悪いのかはまだわかりませんが、ヒトリエとしてステージに立つ時にもオンとオフの境目がいよいよなくなってきて。今はオンとオフを切り替えるリモコンがどっかにいっちゃって、限りなくフラットな状態のままステージに立っている感覚が増した気がします。

ーーそれだけ歌と向き合った1年だったと。バンドのライブと、1人でステージに立つ弾き語りとではまた全然違った体験ですよね。

全く別ものですね。なぜなら僕以外の人間がステージにいないから、何を言っても全て僕の責任なんですよね。いつもはメンバーがストッパーになってくれるけど、「ひとりだとこういうライブになるのか」みたいな発見はかなりありました。本当に行ったことがない県にも行かせていただいたし、田舎の町にも行ったりしていろんな景色を見て、それぞれの町の空気を感じながら歌えるのが楽しかったですね。

ーーいろんな地域を訪れて、そこで暮らす方の生活を感じながら歌い続けたことで、よりステージがライフスタイルに近いものになったのかもしれませんね。

それはあると思います。

ーーそもそも弾き語りツアーをやってみようと思ったキッカケはなんだったのですか?

3人になってからそれぞれ個人の活動も増えてきたのですが、自分は3ピースバンドに何が還元できるのかを考えていくと、ボーカルを追求していくことがいいんじゃないかと思うようになったんです。ライブを観に来てくれたのに、歌でがっかりされるのは嫌だし。そう思っていたところ、事務所の代表からライブのリハ中に電話がかかってきて。スピーカーにしてみんなで聞いているときに、サプライズ的にその弾き語りツアーを伝えられて「47都道府県、行ってもらいます」と言われたんですよね。スタジオの楽屋で電話を受けた、その瞬間の記憶がすごく残っています。

ーーもう47都道府県を回ることが決まっていた(笑)。旅でもあり修行でもありますよね。

よくよく話を聞くと、47都道府県を制覇したかったみたい(笑)。

ーーいくつかのツアーで制覇することはあっても、1回のツアーで47都道府県を回ることってなかなかないですよね。

今もたまに、「俺、行ったことない県がないんだ」とふと思い返すことがあります。

ーー今年のライブ初めも弾き語りでしたね。改めて今のシノダさんは、歌うこと、音楽を届けるということをどうとらえているのかなというのも気になりました。

2019年にwowakaを失い3人になったタイミングで、「このバンドは変わっちゃうんだな」と離れて行く人もいたと思うんです。それは俺らも感じていたから仕方がないことなので、そこもしっかり受け止めて新しいアルバムを作ったり、コロナ禍でもツアーをやったり。それから10周年記念、弾き語りツアーと続けていくなかで、それでもライブを観に来てくれることにどこか「こんな自分たちにもついてきてくれている」という思いを抱えながらやってきたところはあります。だけど、今となってはそういう気持ちよりも、純粋に今のヒトリエがおもしろくて好きで、ライブが観たくて来てくれているんだ、と思うようになりました。俺の弾き語りにまで来てくれるんだ、みたいな。

ーーお話を聞いて、私も大好きな曲で「ステレオジュブナイル」の<こんなん聴いてんのお前だけ>という歌詞を思い返しました。10年を経て、心境の変化のタイミングがひとつ訪れたのかもしれませんね。

こんな状態でもいいから聴いてほしい、という一心で曲を書いてきたからこそ、届く人には届いてきたのかもしれませんね。

ーーFM802の番組でゲストにお越しいただいた時に、「ライブは自分を取り戻していく感覚になる場所」とおっしゃっていたのがすごく印象的でした。

コロナ禍の頃ですよね。それまではがむしゃらにライブをやっていたと思います。ステージに立つ、という自分のバンドマンとしての本懐がナーフ(弱体化)されていた時期だったのかもしれません。それに自分がフロントマンになったことで、今までとは違う位相でやってきた感覚もあるんですよね。中途半端なところに固定されているような。ここからライブをいっぱいやってフロントマンとして力をつけていきたいのに、それができないとか。そういう時期も経て、今は何の気兼ねもなくライブができるようになりました。

ーー私にとってヒトリエのライブは「心の安全地帯」だと思っていて。DJに転職する前の会社員時代にライブに通っていた時から、「ここは鎧を取っ払ってもいい場所なんだ」と。そこで、シノダさんのライブハウスの原体験はどんなライブだったのかなと気になりました。

17歳の頃、地元石川の金沢アズで開催されたNUMBER GIRLのアルバム『NUM-HEAVYMETALLIC』リリースツアーです。その前に、石川テレビの『N-18』という音楽番組の公開収録があって、NUMBER GIRLの向井秀徳さんと、P2H(ピック・トゥー・ハンド)、ジァイアントステップ、FLYING KIDSの浜崎貴司さんがゲスト出演されて、弾き語り&トークするということで観に行ってたんです。

ーーなかなか濃いメンツですね。

すごくおもしろかったです。で、その公開収録に来た人は、その場で発表された合言葉をイベンターに電話して伝えると次のツアーの先行予約ができるよと。そこで向井さんが色紙に書いた合言葉がたしか「鉄の女サッチャー首相」で、実家に帰って電話をかけて、を手に入れてツアーを観に行けることに。ちなみに、その合言葉を書いた色紙のプレゼントも当選してもらえて、「やべえ!向井秀徳が書いた色紙だ!」と喜んだのを覚えています(笑)。実際にライブを観に行くと、もうお客さんがもみくちゃで半端なくて。まだ『AIR JAM』とかパンクの流れが強く生きている頃で、巨大な洗濯機の中に入れられたような体験で衝撃的でした。それから高校時代は、the pillowsやeastern youthのライブにも行ってましたね。

ーー今ではヒトリエのライブが原体験になっている人も多いと思います。

たくさんいると思います。デビューしたての頃は、古着屋で買えるようなTシャツを衣装にしていたので、真似されたりすることも多くて。その時に、eastern youthのライブを観に行くと坊主でメガネをかけた人がいっぱいいたなというのを思い出して、俺はついに吉野寿側に来れたんだと思いました(笑)。

ヒトリエのライブでしか得られない体験を
まもなく『HITORI-ESCAPE TOUR 2026』開催

ーー5月30日(土)愛媛公演から『HITORI-ESCAPE TOUR 2026』がスタートします。今回はオールタイムの選曲で届けると発表されています。メンバーみなさんそれぞれが職人気質なバンドだと思っているのですが、ライブの構成や楽曲作りなども綿密に話し合われて作っていくのでしょうか?

wowakaがいなくなってからは、彼の世界観をバンドで表現することを目指してスタートしたバンドなので、みんなでああじゃないこうじゃないと言いながらやってきたところはあります。だけどどこかのタイミングで、誰かが軸になった方が話が早いなと気づいて、それぞれにデモを書いてきてもらったものに僕が主に色付けしていくようになりました。楽曲作りも、4人で完結する曲も多かったので、失った分を補完しなきゃいけないという思いが強かったので同期を使う曲が増えたり。だけど、それも煩わしくなってきたところで、サポートも入れず3人だけで演奏するライブもカッコいいなと思うことが増えてきたので、スリーピースを追求してくために「ジャガーノート」を書いたり。その先にライブバンドらしいCDを作ってみようと思って、『Friend Chord』に辿り着くことができたんだと思います。

ーー最新シングルの「みにくいかたち」は、そんなヒトリエがスリーピースのバンドとして次のステージにいくためにはどうしたらいいか、というところが出発点になった曲なんですよね。

そうですね。スリーピースバンドとしてもっと鋭角な角度で攻めて行くためには、どうしたらいいかということをもっと考えていかないといけないなと思って。そのなかでいろんな音楽を聴いて、今のところ出せる正解がこれかなと。

ーー美しさのなかで歪さがあり、その共存こそがヒトリエの魅力だなと。

そもそもそういう音楽が根っこにありますからね。珍しいなとか、変だなというものを感じさせて、予想しない角度からフックを浴びせないと人を倒せるような衝撃は与えられないかなと。

ヒトリエ「みにくいかたち」

ーー改めて、今のヒトリエにとってライブはどういう場所になっていますか?

メンバーがみんなで集まる場所、という感覚がありますね。それぞれアーティストのサポート活動も忙しかったりしますから、僕は僕なりにもっとヘンテコなものを目指していこうかなと。そういえば昔、4人だった頃にレッチリの話になって。なんであんなに人をワクワクさせるんだろうねと、みんなで話してその時に出た答えが『アベンジャーズ』が集まるみたいな感覚だからではないかと。

ーーそれぞれの楽器のヒーローが集まっているから。

ベースのフリーが出てきて、ドラムのチャド・スミス、ギターのジョン・フルシアンテ、そして最後にボーカルのアンソニー・キーディスが出てくるあのワクワク感は、それぞれがヒーローだから。「俺たちが目指すのはそこなんじゃない?」って、今思えば高校生みたいな会話ですけどね(笑)。だけど、今でもそうだなと思います。イガラシもゆーまおもいろんなアーティストのサポートで経験を積んで、演奏の妖怪みたいになっていますから。俺も俺の妖怪度を上げて、妖怪たちの集合地点がヒトリエであったらいいなと。

ーーそんな強者が集まるヒトリエのライブを、ツアー各地で観られるのが楽しみです。最後に意気込みをお願いします!

なくなっちゃったライブハウスもいっぱいありますから、大変な時代でもサバイブしているライブハウスには行き続けたいし、それぞれの場所で積み重ねてきたものや記憶を更新していきたいですね。キャリアを重ねて不思議なバンドになってきましたから、なかなか観られないものが観られる、ほかにはない体験ができると思うので、ぜひ観にきてほしいです。

取材=田中麻希 撮影=浜村晴奈


 

ツアー情報

『HITORI-ESCAPE TOUR 2026』
2026年5月30日(土) 愛媛:松山サロンキティ
2026年6月6日(土) 島根:出雲APOLLO
2026年6月7日(日) 広島: 広島SIX ONE Live STAR
2026年6月13日(土) 北海道:札幌ベッシーホール
2026年6月21日(日) 宮城:仙台MACANA
2026年6月27日(土) 京都:ライブハウス磔磔
2026年6月28日(日) 愛知:名古屋CLUB QUATTRO
2026年7月1日(水) 東京:LIQUIDROOM
2026年7月2日(木) 東京:LIQUIDROOM
2026年7月5日(日) 石川:金沢AZ
2026年7月11日(土) 鹿児島:鹿児島SR HALL
2026年7月12日(日) 福岡:福岡DRUM Be-1
2026年7月19日(日) 大阪:梅田CLUB QUATTRO
2026年9月6日(日) 沖縄:沖縄Output

料金>
スタンディング  ¥5,500(税込)*ドリンク代別

ライブ情報

『シノダ弾き語り単独公演"海に逢いに行く"』
2026年9月5日(土)沖縄 Output
OPEN 16:30 / START 17:00

>自由席 ¥5,500(税込)

リリース情報

「みにくいかたち」
2025.12.17 Release
Digital Single

配信リンク:https://hitorie.lnk.to/MinikuiKatachi

ライブ情報

■アルカラ稲村太佑弾き語り研究所『いなむLABO #6』
日程:2026年5月14日(木)
場所:東京Spotify O-Crest
時間:OPEN 18:30/START 19:00
出演:稲村太佑(アルカラ)、ゲスト:シノダ(ヒトリエ)
FOOD:山下英将(folca)

■O-Crest pre. 『多次元制御機構よだか × cakebox』
日程:2026年5月18日(月)
場所:東京Spotify O-Crest
時間:OPEN 18:30/START 19:00
出演:多次元制御機構よだか、cakebox

■『THE KEBABS 激突』
日程:2026年6月22日(月)
場所:札幌cube garden
時間:OPEN 18:30 / START 19:00
出演:THE KEBABS w/ヒトリエ
 
■『MURO FESTIVAL 2026』
日程:2026年7月25日(土)・26日(日)
場所:横浜赤レンガ倉庫 野外特設会場
出演:ヒトリエ、cakebox 共に 7月25日(土)出演
※タイムテーブルは後日発表
https://eplus.jp/murofes26/
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