chef’s 音源にライブに多彩なコンセプトを次々と繰り出すバンドが作る「おいしいおんがく」とは?

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2026.8.18
chef’s 撮影=山川哲矢

chef’s 撮影=山川哲矢

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日々の生活にちょっぴり疲れたら、真夏の暑さに負けそうになったら、まずは一休み、そしておいしいおんがくでも食べに行こう。サポートミュージシャンとしても多方面で活躍するソングライター・高田真路を中心に、結成から今年でちょうど5周年、chef’sの掲げるコンセプトは「おいしいおんがく」。物語を伝える歌詞とカラフルなバンドサウンド、素敵な非日常の演出家だ。
8月26日に下北沢ADRIFTで開店する『東京晩餐会~Moonquet~』は、専属シェフが腕をふるうお食事付き。そして9月11日に渋谷eggmanで開催される『utage』は、「飲み放題」も選べるお楽しみ付き。音源にライブに、多彩なコンセプトを次々と繰り出して着実に人気上昇中、chef’sとは一体どんなバンドなのか。高田真路(Ba)とヨシダアヤナ(Vo&Gt)に、おいしいはなしを訊いてみよう。

――「おいしいおんがく」を掲げて、結成からちょうど5年。あらためて全部聴いて、「最初からすごい完成されているな」と思ったんですね。コンセプチュアルな世界観が、すでに出来上がっていて。

高田真路(Ba):組んだ当初から、バンドがある程度形になるまでのルートを考えていました。音源を料理のフルコースに見立てて作ろうと思っていて、1枚目(EP『NOBODY CALLS ME CHICKEN』/2021年)から完成度はありつつも、「今回はこういうコンセプトで、こういうジャンルに絞って、こういう楽器に絞って」みたいなことをやってきて、少しずつ自由になっていってる感はありますね。僕は元々鍵盤を弾く人間なんですけど、最初は鍵盤を使うのを禁止していて。それをここ1、2枚で解禁したりとか、「今ここでやるべきこと」を考えつつ、順番に作っていってる感じです。

――そういうコンセプトって、メンバーには先に教えてくれるんですか?

ヨシダアヤナ(Vo&Gt):曲を作る段階で、「今回はこういうコンセプトで」って、事前に共有はあります。でも知らないこともあって、縛りがあったりとか、「そうだったんだ!?」みたいな。こういうインタビューを通して知ることも結構あります(笑)。

――音源のフルコースって、いちおう完結したんでしたっけ。今出ている最新EPが『Hollow Dripe』、通称「コーヒー盤」ですけども。

高田:今出ているものにプラス、あと「スープ盤」が出たら終わりですね。ただコンセプトも大事だけど、今の気持ちに沿って作ったほうが、いい作品ができるなって、最近自分の中で変化があって。スープ盤のコンセプトが、今の自分のテンション感に合わないので、一旦保留になっている感じです。今まではフルコースの順番に沿って、正直、その時自分がめちゃめちゃ聴いてる音楽じゃないものを作っていたりもしたんですよ。今は全然ロックの気分じゃないけど、「ロックを作る」という縛りがあったりとか。

――それ、いつ頃でしたっけ。

高田:『Garden Variety』(2024年)が、一番ロック色の強い作品だったんですけど、あの時にはもう「鍵盤触りたいな」みたいな気分になっていて。ただ、その盤に入ってる最後の曲「ヒールマニュフェスト」は、ライブでも最後にやる曲で、アンセムみたいになってるから、そういう曲を作れて良かったなとは思ってます。それ以降は、自分の気分に合うものを曲に落とし込む方向性にチェンジしてますね。

ヨシダアヤナ(Vo&Gt)

ヨシダアヤナ(Vo&Gt)

今作ってる新曲では今までのchef’sの歌詞が散りばめられていて、私もファンみたいな気持ちで、「あ、これ!」みたいな。曲を作っていく時はいつもワクワクします。(ヨシダ)

――アヤナさんの仕事は、料理人である高田真路の作る曲を受け取って、歌としてみんなに届けること。どんな役目だと思っていますか?

ヨシダ:言ってしまえば、お客さんと同じ感覚なんですね。自分が曲を作っていないからっていうのもあるんですけど、曲の背景とか、歌詞の意味とか、そういうものを教えてもらいながらレコーディングして、でもやっぱり理解しきれていない部分もあるので。それを自分の経験と照らし合わせて、「こういう解釈もできるな」とか思いながら、ライブを重ねることで自分の中に落とし込んでいく、そういうことが多い気がします。

高田:バンドだったら、普通はスタジオで演奏して、合わせてからレコーディングするけど、chef’sの場合は「できるかできないか」は放っておいて、まずレコーディングして、その後にライブがあるんですね。もちろん、頭の中ではライブでできる想像があって作っているんですけど。トラックメーカーの考え方に近いところがあって、料理(曲)先行という感じではありますね。頭の中にあるものを、「これできるよね?」っていう。

ヨシダ:「これできるよね?」が多いんです(笑)。

高田:基本的に、「想像できるものはなんでも作れる」というのが僕の持論で。頭の中で想像できるものは、全てこの世界に落とし込めると思っているので。音楽もそうで、「頭の中で鳴ってる音を再現しよう。絶対できるから」という感じです。

――「想像できるものはなんでも作れる」というのは、すごいキーワードですよ。音楽というか、もはや文明論。

高田:それこそフルコースの盤ができたりするのも、一個一個コンセプチュアルになっているのも、自分がワクワクすることをまずメンバーにワクワクしてもらいたいし、チームにワクワクしてもらいたいし、さらに見てくれる人がワクワクしてくれたらいいなと思っているからなので。近いところからどんどんワクワクさせれたら、一番いいなと思っています。

――ワクワクしてますか。アヤナさん。

ヨシダ:してます。それこそ今作ってる新曲とかもそうですけど、今までのchef’sの歌詞が散りばめられたりしているんですよね。私もファンみたいな気持ちで、「あ、これ!」みたいな、そういうワクワクがめっちゃありますね。曲を作っていく時はいつもワクワクします。

 

高田真路(Ba)

高田真路(Ba)

プレイリストを作る感覚で、自分が好きな音楽が「おいしいおんがく」というジャンルだという思想があるんです。だから、何が好きか?と言われると「おいしいと思うものは何でも好き」という感じです。(高田)

――真路さん、元々どんなジャンルが好きなんでしたっけ。ギターロックが好きなのはもちろん、エレクトロとかダンスの要素も結構聴こえてくるから、どこの人なのかな?って。

高田:作品作りはコンセプチュアルにやっていますけど、音楽をラベリングする行為は元々苦手で。自分が好きな音楽のラベルが欲しくて「おいしいおんがく」というものを作った、みたいなところがあるんですね。プレイリストを作る感覚で、自分が好きな音楽が「おいしいおんがく」というジャンルだ、という思想があるんです。だからいろんなものが混ざっているけど、同じように「おいしい」と感じるもの、という意味で、僕の中のジャンルはあるっていう感じですね。だから、何が好きか?と言われると、「おいしいと思うものは何でも好き」という感じです。

――好き嫌い、ないんですね。

高田:音楽においては、ないですね。食事においてはめっちゃあるんですけど(笑)。

ヨシダ:偏食です。

高田:それで言うと、自分は曲を作る側なので、「これはなんでおいしいと感じるか」「なんでおいしくないと感じるか」とか、分析はめっちゃします。それはたぶん、音楽を作ってる人はみんなやってると思うんですけど。「多くの人に響くにはどうしたらいいか」という観点は、僕にとってはあんまり関係なくて、隣にいるこの人と、例えばすごく仲のいい人と、同じものを見ているのに「これは好き、これは嫌い」と思ってしまう、この差はなんだろう?とか。そういうことはすごく気になるかもしれないです。

――そこ、もう少し詳しく知りたいです。

高田:ちっちゃい頃から、たぶん聴いてる音楽の幅がみんなと違ったりはしたんですけど、でもそこよりも、「一番仲のいい子がこの曲をいいと思わない理由は何か」ということを考えていました。そこで僕なりの解釈を伝えて、好きになってくれたらそれはそれでいいし、でもそうならない場合ももちろんあるから、その次に、向こうは好きだけど自分はあんまり好ましいと思ってないものについての分析を始める、みたいな感じですかね。そこで、自分がいろんな音楽を好きになるきっかけができてくるという、そういう感覚に近いかもしれないですね。

――分析して、魅力を見つけて、好きなものの幅を広げていく。それはもう、音楽家になるしかない人。

高田:たまたまそれが音楽だったのかもしれないですけどね。ただ、「自分の“好き”を大切にしてほしい」と思うだけで、それを誰かに押し付けたいとは思わなくて、「自分の“好き”の見つけ方をみんなに知ってほしい」という感じかもしれない。音楽って、それでいいと思うんですよ。自分が好きなものは誰かに否定されるものじゃないし、自分の好きを誰かに好きになってもらう必要もないんですけど、自分の「好き」をたくさん得る方法を見つけるのは、大事なことじゃないかなと思っています。

――すごくいい話。アヤナさんは音楽一家の出身だと聞いてますが、どんなルーツがありますか?

ヨシダ:音楽一家というか、お父さんが音楽が好きで、学生の時からずっとバンドをやっていて、ご飯を食べている時も家でCDとかレコードとかがずっと流れていました。それで山下達郎さんとかを好きになって、私のルーツはそのあたりになっています。お父さんはギターを弾いていて、私も始めやすい環境があったので、高校生の時に軽音部に入って音楽を始めたという感じです。

――すごくいい声。可愛さと、透明感と、説得力を兼ね備えた、芯のある声というか。

ヨシダ:ありがとうございます。

高田:メンバー全員に思っているんですけど、自分にないものを持っているところが大きいです。特にアヤナさんは、(chef’sには)元々女性ボーカルがいいと思っていたんですけど、その中でも「アヤナさんしかいない」ってなりましたね。元々自分の歌詞は、実体験とかではなくて、伝えたい哲学や思想があって、それを物語調にしているんですけど、アヤナさんを通して代弁してもらっていると思いつつ、外から見るとたぶんアヤナさんが言ってるように聴こえるのが、アヤナさんの力だし、アヤナさんの人間性の魅力をめっちゃ感じています。

ヨシダ:ありがとう。照れますね。

――メンバーを褒める時間。ギターのフルギヤさんはどうですか。彼のギター、すごいですよね。今どき珍しい、いい意味で弾きたがりというか。

高田:弾きたがりというよりは、僕が「弾いてほしい」と言っているからで、それはもちろん彼がめちゃめちゃ弾けるからでもあるんですけど。僕はプレイヤーを「持ってるか、持ってないか」ってよく言っちゃうんですけど、彼は「持ってる」タイプで。もちろん努力もしていると思うんですけど、パッと弾いたものがかっこいいタイプなんですよ。ギターソロとか、家でめっちゃ考えてきてくれるんですけど、「ちょっと別のやつも弾いて」と言ったものがめっちゃかっこいいんです。ライブでも、「ソロ弾いて」と言われてパッと前に出て、そこで出るものは本当に唯一無二だし、やっぱり年を取れば取るほど、ステージが大きくなればなるほど、ミスしたくないとか、いろんなことを考え始めると思うんですけど、彼は前に出た瞬間にいい意味で全部忘れて弾いてる感があって、そこが彼の魅力だし、まさにギターヒーローって感じですね。

――ドラムの吉島伊吹先輩は?

高田:僕はベーシストなので、ドラマーが一番大事なんですけど、うまい人なんてこの世に腐るほどいる中で、自分が一生信頼できる人をドラマーにしたいと思って、それがイブくんなんですね。ほかのバンドを見ていて、このドラマーとベースは仲悪いんだろうなとか、やっぱりわかるんですけど(笑)。でもそこの信頼関係で、最終的にバンドが長生きするかどうか、音楽が長生きするかどうかが決まると思っていて。僕はイブくんのことをたぶん一生信頼できるし、イブくんも僕を信頼してくれて、ついていこうと思ってくれているというか。向こうが先輩ではありますけど、高校の時から一緒にやっているし、技術ももちろんすごいですし、僕が作ったものを何でも叩いてくれるところに、全幅の信頼を置いています。人間性も、僕がちょっとヒートアップして、過剰な思想になった時にも、彼はずっと冷めてるので。

ヨシダ:冷静だよね。

高田:間違っていることは、冷静に「それは違うね」と言ってくれるし、客観的判断をしてくれる。僕は自分が正しいか正しくないかで考えるタイプですけど、彼は客観性があって、「イブくんが言うんだったら僕が間違ってるんだ」と思えるという、人間性としての信頼が厚いです。最初から仲良かったし、バランスがめっちゃ良かった。家族よりも一緒にいますし、お互いにカバーし合うというか、僕が例えばアヤナさんにちょっと言い過ぎてるなと思ったら、たいぴょん(フルギヤ)が間に入ってくれたりとか、逆にフルギヤが結構言ってるなと思ったら、僕が「大丈夫だよ」ってアヤナさんに言ったりとか。いい感じに入ったり離れたりしながら、みんなやっぱり大人だなと思いながら僕は見てますね。

ヨシダ:いいメンバーを集めてくれたね。ありがとう。

高田:いやいや、こちらこそ。ありがたいですね。

chef’sがどんどん広がっていった後にも、「やっぱり『utage』が好き」とか「『おてまえ』は面白いな」とか、バンド自体に集客が依存しない形をどこかで作れないかなと思っていたんです。(高田)

――いいなぁ、お礼を言い合うバンド。話を進めて、chef’sにはライブが3種類ありますね。『おてまえ』『東京晩餐会』『utage』という、最初から3つあったんですか?

高田:まだやっていないものもあるんですけど、ライブに関しては5つぐらいコンセプトがあって。『東京晩餐会』は、最初は自分たちより先輩のバンドと一緒にやるライブという印象で、東京で自分たちの冠を持つライブをしたい、挑戦的なことをしたいというコンセプトでやっていました。『utage』は、どちらかというと同世代の友達と一緒に宴をしたいというコンセプトででやっていて、前回から「飲み放題」という試みも始めて、最終的には年に何回かある祭りにしたいと思っています。

――いいですね。

高田:そして『おてまえ』というのは、「おてまえ拝見」みたいな感じで、新曲を絶対やるというライブです。その3つをやってきたんですけど、だんだん自分たちの中で差別化ができなくなって、「おてまえ」はしばらくやっていなくて、もう一回『東京晩餐会』と『utage』でしっかりコンセプトを立ててから、あらためて追加していこうという感じです。あと一つ、『APEIRING』(アペアリング)というのがあって、それは各都市で「ここでこの人とやりたい」という、ワインと料理のペアリングみたいなツーマンライブで、今はその4つと、あともう一つ、まだやっていない企画があるんですけど。全部で5つぐらい軸があります。

――さすが。コンセプトなら任せとけと。

高田:基本的に、バンドが大きくなっていくとワンマンが多くなると思うんですけど、chef’sがどんどん広がっていった後にも、「やっぱり『utage』が好き」とか、「『おてまえ』は面白いな」とか、バンド自体に集客が依存しない形を、どこかで作れないかなと思っていたんですね。そういうところにライブの可能性はあって、フェスに行く感覚に近いとは思うんですけど。フェスまで行っちゃうと1日の労力が大きすぎるから、それぞれのイベントに対していろんなチームが動きつつ、例えば2ヵ月に1回とかで面白いライブがあれば、そこへのファンもつくし、お客さんからしたら1年に1回だけど、自分たちからしたら2ヵ月に1回いろんな楽しいことがあるという生活のほうが、僕は楽しいなと将来的に思っているので、5つぐらい持っていたいなという感じです。

高田真路(Ba)

高田真路(Ba)

『東京晩餐会』は食事を出すという都合上、本当に限られたお客さんしか入れないんですけど、「これから何回もやるよ」ということは伝えておきたいです。(高田)

――それって経営者の思考じゃないですか。イタリアンのお店と和食のお店を出して、もう1個バーを出そうとか。ビジネス脳という意味ではないけれど。

高田:そうかもしれない。だからchef’sという、わかりやすくコンセプトができるものを自分の冠に持つということは、最初から決めていました。chef’sというバンドがあって、「おいしいおんがく」があって、『東京晩餐会』ができて、『utage』ができて、『おてまえ』があって『APEIRING』があって、全てが繋がっていますね。ただそれは、自分たちに繋がる人たちがもっと増えていかないとできないことだし、何より自分たちは音楽を作っていく職業でありたいと思っているので、音楽がおろそかにならないように、自分の人間作りがここからの課題かなと思っています。バンドとしても「こういうことをやりたい」というワクワクをもっと、メンバーにも、チームにも、周りで支えてくれてる人たちにも伝えていければいいなという感じですね。

――冷静ですね。ドリーマーでありつつ、実務的でもある。真路さんの、このバンドのスタンスがよくわかりました。そして直近、8月26日に東京・下北沢ADRIFTで『東京晩餐会~Moonquet~』が開かれます。このサブタイル、なんて読むんだろう。

高田:ムーンクイットです。月の食事という意味があって。元々、僕らのワンマンライブ自体が、最初が『Neubiss』(ノービス)というタイトルで、ドイツ語の新月=Neumondから来ていて、そこからどんどん月が満ちていくというワンマンライブのコンセプトを組んでいるんです。2個目が『Cenacle』(セナクル)で、セナクルというのは「最後の晩餐」が行われた場所なんですけど。「繊月」という言葉があって、新月の次に来る月の形のことで、その「セン(Cen)」も織り込んでいます。その次はたぶん「三日月」になると思うんですけど、その前に、ワンマンライブであり、お食事ができるということで、「月の食事」というイメージが一番近いなと思って『Moonquet』というタイトルをつけました。

ヨシダ:ああ~、そうなのか。

――メンバーが感心してる(笑)。まさに、さっき話したみたいな。

ヨシダ:こういうことがあるんですよ(笑)。初めて知りました。

高田:食事を出すという都合上、本当に限られたお客さんしか入れないんですけど、「これから何回もやるよ」ということは、伝えておきたいです。eggman(chef’sが所属するmurffin discsの系列会社)が経営しているレストランのシェフが来てくれて、ADRIFTのキッチンで作ってくれるんですけど、本当においしいレストランで、シェフもめちゃめちゃいい人で、すごく仲良くなって、今回やってもらえることになったので。料理を作ってくれる人ともちゃんと繋がりがあって、人と一緒にやれてるなという気持ちになれるのが、僕的にはすごくいいですね。

ヨシダ:食べながら聴いているのを見て、こっちもいい気持ちになるのか、「聴いて!」っていう気持ちになるのか、冷めないうちに食べてって気持ちになるのか、想像がつかないです。でも料理自体は、全部めちゃくちゃおいしいので。

――チキンのトマトチーズ焼き、角煮のパフ、白茄子のステーキ、トリュフポテト、プリン。読んでるだけでおいしそう。

高田:ほんとにおいしくて。僕、ナス食べられなかったんですけど、白茄子のステーキを食べて、「ナスほどうまいものはない」と思いました(笑)。そして、今回出す料理は曲にも結びついていて、chef’sは曲名に料理が入っている曲が多いんですけど、ちょうど食べてる時にその曲が聴ける、みたいな仕掛けができたらめっちゃ面白いなと思って、そういう感じでセットリストを組んでいます。

――そこまで考えているとは。参加する方はぜひ耳と目と舌で楽しんでください。そして行けない人は、次に乞うご期待。

高田:あまりにも人数が限られてしまったので、「また必ずやるよ」とお伝えしたいです。

ヨシダアヤナ(Vo&Gt)

ヨシダアヤナ(Vo&Gt)

前回の『utage』から、ちゃんと宴らしくしようっていう、コンセプトを明確化するようになって。「乾杯からライブを始めよう」ということになりました。(ヨシダ)

――楽しみです。最後に一個、聞きますね。chef’sの曲は物語っぽいテーマが多くて、タイトルも料理の名前だったり、想像力を膨らませてくれるんですよね。それってどこから来るものですか。

高田:僕はちっちゃい頃から映画が好きで、最初のEP(2021年『NOBODY CALLS ME CHICKEN』)の「スピンオフヒロイン」「ヒーローコンプレックス」とか、2枚目に出した『Selfish Theater』(2022年)も「シアター=映画館」だったり、「Humlet」は戯曲というか、お芝居のほうに入りますけども、「ヒッチコック」も映画ですし。基本的に、映画とか映像とか、そっちの趣味は深いかもしれないですね。それと料理が結びつきやすいのもあって、「Humlet」にハムが入ってたり、「ヒッチコック」も、僕はコーラが好きで、コックとコークがかかっていたり、「Ci(n)der era」も、nが抜かれて「サイダーエラ」になって、《はじけ飛んだ時代になった》みたいな歌詞があったりとか。「Humlet」と「Raclet」もレットで揃えたりとかとか、そういう言葉遊びが大好きですね。なんでも、繋がりがあるものが好きです。


 
 

――その発想はchef’sの根幹にありますよね。それこそコンセプトライブの繋がりもそうだし。

高田:一つ一つに意味がない言葉は好きじゃないです。「なぜここにこの言葉があるのか?」という理由付けがないと書けないですね。でも逆に音楽は、意味がない音が好きです。「なぜここにこの音が入ってるのか?」みたいな、でもめちゃめちゃ耳に残るとか、無為な音が好きです。音楽って音だから、意味を持たないものだからこそできることがある、みたいな気持ちがあります。楽器を全く弾かない曲があるのも面白いと思うし、環境音とか、いわゆるボタニカルな音楽も好きですし、ノイズミュージックも大好きです。それこそ、曲の中にはフィールドレコーディングした音とか、人の喋り声とかもめっちゃ入っていますし。人の喋り声が、帯域的にこの楽器のこの部分に近いと思ったら、その楽器の代わりに人の声にしちゃうとか、めっちゃしてますね。そういう、「なぜこうなるのかわからない」というものが、音楽的には好きです。

――共存しているんですね。言葉には意味がなきゃいけない。でも音には意味がなくていい。

ヨシダ:そういうものが、いっぱい掘ってもきりがないくらいたくさん曲に詰め込まれてるので、面白いんですよね。真路が作る曲は。

高田:範疇で言ったら、趣味の範疇に入ってくるので、そこは好きな人が掘り下げてくれればいいし、僕が一番受け取ってほしいのは、みんながパッと最初に聴いて、「おいしい」と思ってくれるかどうかなので。料理人が「ここにめっちゃこだわってんだよ」とか言っても、「あ、そうですか」ってなっちゃうと思うから、こっちから提示はしないです。聞かれたら全然言いたいですけど、「おいしいかおいしくないか」でいいと思っています。ただ、「おいしい」と思ってもらうためには、自分の「好き」を詰め込まなきゃいけないし、そうじゃないと自分が納得できないですよね。ちょっと手を抜いちゃったなと思った料理を「おいしい」と言われても、「実はこれ冷凍なんだけど」みたいな話じゃないですか。だからやっぱり丹精込めて作りたいというところで、僕はちゃんと「好き」を詰め込んでいますけど。「おいしいかおいしくないか」でいいと思ってますね。


 


――これからも「おいしいおんがく」、待ってます。そして9月11日には、東京・渋谷eggmanでもう一つのコンセプトライブ『utage 2026 autumn』が開かれます。

高田:『utage』は季節ごとにできたらいいなと思っていて、今回は2026年の秋の宴をやろうと思ってます。前回(7月6日@大阪 Yogibo HOLY MOUNTAIN)から「飲み放題」を出したり、カバーをやったり、『utage』にしかないものをより鋭角化するというか、コンセプティブにやりたいところがあって、それを東京でもやろうということで、パーカーズとツーマンでやります。元々chef’sを好きでいてくれて、chef’sもパーカーズが好きだし、人柄もすごくいい人たちなので、いいライブになると思います。『utage』は前回から、お客さんと乾杯してから始めてるんですよ。

ヨシダ:前回の『utage』から、ちゃんと宴らしくしようっていう、コンセプトを明確化するようになって。前回から「乾杯からライブを始めよう」ということになりました。

――いいですね。どんどん広がる宴の輪。

高田:『utage』も『東京晩餐会』も、これからも続くし、やりたいことはまだまだあるので。楽しみにしていてほしいです。


取材・文=宮本英夫 撮影=山川哲矢

ライブ情報

utage 2026 outumn
9月11日(金)Shibuya eggman
OPEN 18:30 / STRT 19:00
ACT:chef's / パーカーズ

 

受付期間:8/8(土)10:00~
イープラス 
https://eplus.jp/chefs/

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