五十嵐ハル 「音楽やっててよかったなって心から思いました。ありがとう!」――生身で向き合うライブで築いたファンとの絆

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音楽
2026.9.7
五十嵐ハル

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五十嵐ハル LIVE TOUR『Mr. Sentimental Vol.2』
2026.8.27 渋谷CLUB QUATTRO

シンガーソングライター・五十嵐ハルが、8月27日、東京・渋谷CLUB QUATTROで『五十嵐ハル LIVE TOUR「Mr. Sentimental Vol.2」』を開催した。

昨年11月、本人登場の瞬間から1stライブとは思えないほどの一体感を作り出し、SNSの世界だけではなく、ライブシーンにおいてもしっかりと爪痕を残した五十嵐ハル。今年の春に開催された東京と大阪での初のワンマンツアーでは会場の規模も拡大され、そこから約5ヵ月という短いタームで開催されたこのツアーも、会場は大阪・東京ともにCLUB QUATTROへとアップグレードされた。ボカロP「ぺむ」として発表してきた楽曲で出会ったファンや、元警察官という異色の経歴がきっかけとなって注目し始めた人、テレビアニメ『デッドアカウント』のオープニングテーマを手がけたことでその存在を知った人など、今夜もさまざまなきっかけを経て集まったオーディエンスの熱気が渦巻いている。バンドメンバーに続き、両手を振りながら五十嵐が登場するとこちらの予想を遥かに上回る歓声と拍手が沸き起こった。

ライブの幕開けは、ハードなギターリフで猛進していく「スカーレットハート」から。ぺむ名義で発表されたボカロ曲だが、ラウドなバンドサウンドで新たな魅力を発揮したこのライブバージョンでフロアは一気にヒートアップ。テレビアニメ『デッドアカウント』のオープニングテーマとして書き下ろされた「デッドエンド」では、LEDビジョンに映し出されるアニメーションの映像が楽曲の世界観を鮮やかに盛り上げ、五十嵐は装着していたイヤモニが吹っ飛ぶほど激しいジャンプを繰り返していた。サビでひときわ大きな大合唱が巻き起こった「それでも生きてみた。」では、アグレッシブなパフォーマンスが加速していく中、「本当は人を愛していたいだけだ!」と叫んだ五十嵐。自分自身も含め、人生に疲れた人たちに向けた全身全霊のメッセージに、オーディエンスからは最大級のリアクションが寄せられていた。

短いMCを挟み、次のセクションは自身でイラストを手がけたMVをバックにした「笑う癖」から。表情が見えない分、全身で言葉を届けようとする五十嵐のシルエットが映像に溶け込み、視覚的にもより深いところから主人公のもがきを訴えかけてくるような1曲に仕上がっていた。5月に配信リリースされた「ラヴノイズ」ではキャッチーなメロとダンスビートでフロアを沸かせ、「AM2:00」「ジ・エンド」では、五十嵐とオーディエンスがどうしようもなく切ない思いをぶつけ合う。お互いに激しいパフォーマンスやリアクションを繰り広げながらも、心の中では号泣しているようなこの空気感は五十嵐ハルのライブならではだ。

次のMCでは「最高だね! ありがとう!」と笑顔で感謝を伝え、嬉しそうに会場を見渡す五十嵐。着ていたジャケットを脱ぎ、ひと息つくと「"五十嵐ハル"はSNS上では表面的な部分しか基本的に出してないから、内面の部分は出しにくくて溜め込んじゃうんだけど、それを曲にして浄化してる。でも最近は、音楽を続けるのもしんどいなって思うくらい考えたりしてた。このまま続けて、俺やってる意味があるのかなとか、これが俺が生きる正しい道なのかなとか考えてたんだけど、皆さんの笑顔を見て、歓声を聴いて、今日のためにやってきたんだな。音楽やっててよかったなって心から思いました。ありがとう!」と素直な思いを伝えていた。また、「いろんなアーティストがライブで「今日はありがとう」って言ってて。みんなそうだと思うけど、いや、これはガチの"ありがとう"だから(笑)! 何回も言ってごめんね。ありがとう」と、少しだけ照れくさそうな表情を浮かべる場面もあった。

「まだ暑い季節ですから。夏の曲もちょっとやらせてください」というひと言に続いて「恋花火」のタイトルがコールされると、盛大な拍手と共に悲鳴のような歓声が上がった。スクリーンに映し出された燃えるような夏の夕景がだんだんと暮れていき、狂おしいほどの思いが弾けるように大輪の花火が夜空に咲く。押し殺すように、愛おしむように歌う五十嵐。ピアノ1本をバックに歌い始めた「心音」も、切なさの極致ともいうべき心情を綴った「少しだけ」もそうだが、歌をじっくり届けるこのセクションでは五十嵐のボーカルの七変化も際立っていた。

ライブもいよいよ後半戦へと突入。このライブの前日にショート動画が公開された「無垢」は、ゲーム『デッドアカウント~二つの蒼い炎~』の公式テーマソングだ。まだリリース日も発表されていない新曲だが、直前のMCで五十嵐は「この曲のイントロは僕の声だけじゃ成立しないから、一緒に歌ってほしい。そして五十嵐ハルがもっと有名になった時に、リリース前のライブで一緒に歌ったよって自慢してください!」と呼びかけていた。ユーモアも交えつつではあったが、一瞬で一体感を生み出したオーディエンスの本気はさすがのひと言。あえて薄暗く作られていた照明が五十嵐の表情をしっかり照らし始めた「ノーネーム」。楽しそうにアコギをかき鳴らしながらみんなと一緒に歌った「めんどくさいのうた」のサビでは、ボーカルの声をかき消すくらいの大合唱だ。五十嵐の「ありのままの姿でぶつかろうぜ!」、「ここ渋谷クアトロで、あなたと私で、最高にダサい、カッコいい空間作りましょう!」という呼びかけに反応するオーディエンスのリアクションは、さらに熱狂的なものへと昇華していた。新曲として披露された「夏風」は、みんなが右手を大きく振りながらサビを楽しめるポップなナンバー。手拍子もジャンプもてんこ盛りの、キャッチーな1曲に仕上がっていた。

「相当みんな盛り上がってくれてるけど、次の2曲、まだまだ限界突破してほしいわけ! 全力でついて来れるか!」

最後のセクションは疾走感あふれる「ロア」、そしてラストの「センチメンタルヒーロー」と続いた。「センチメンタルヒーロー」は以前「自分が一番しんどかった時期、生きる意味に悩んでいた時期に作った曲」ときっかけを語っていたが、この日のMCでは「俺が唯一、ヒーローになれる瞬間がある! この曲を歌う時だ!」と胸を張る五十嵐。サビで大合唱となる《ヒーロー! ヒーロー!》のフレーズはライブを重ねるたびに大きくなっているし、誰もが自分のこととして歌っているような共感のエネルギーがとんでもないことになっている。PCの画面やヘッドフォンの中だけに収まりきれない五十嵐ハルというアーティストの魅力が、最新の状態で正しく伝わるライブだった。

アンコールでは、大阪で初めて歌ったというタイトル未定の新曲が弾き語りで披露された。「あまりにもぐちゃぐちゃした感情を吐き出した曲だからもう出さないでおこうかと思ったけど、やっぱり東京の皆さんにも伝えたくて」と前置きされて歌われたその曲は、何もかも手放したくなるような気持ちや諦めきれない気持ちなどが素直な言葉で綴られていた。《そんな歌、歌ったら笑われるか》というフレーズがあったが、そこまで赤裸々な気持ちを歌えるのもきっと目の前のオーディエンスを信頼しているからだろう。生身で向き合うライブという機会を重ねながら、この関係性はますます強固になり、絆を深めていくんだろうなと予感させる新曲でライブは幕を閉じた。

取材・文=山田邦子
撮影=麗 Twitter: __otankonasu__ Instagram: __otankonasu__

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