xHL仕掛け人871(柳井貢)が新機軸『Hype Like it!』『ハイプラオーディション』への想いを語る
871(柳井貢)
xHLが、2027年1月23日・24日に幕張メッセでイベント「Hype Like it!」を開催。あわせて、複数のレーベル・マネジメントが参加するオーディション「ハイプラオーディション」を実施している。xHLとはヒップランドミュージック内のベンチャーで、仕掛け人はTHE ORAL CIGARETTES、Saucy Dog、KANA-BOON、フレデリック、ハルカミライのマネージャーである871(柳井貢)。「Hype Like it!」にはその5組に加え、go!go!vanillas、Chevon、WurtS、10-FEET、04 Limited Sazabys、BLUE ENCOUNT、HEY-SMITHなど錚々たるメンツが出演する。
「ハイプラオーディション」には、xHLがキュレーションする20社以上のレーベル・マネジメントが参加。その最大の特徴は「選ばれるだけでなく、アーティスト自身が契約先を選ぶ立場になれる」というスタイルにある。複数社から評価を得たアーティストは、各社からの提案を受けた上で、どのレーベル・マネジメントと契約をするかを選ぶことができる。さらに、最も高い評価を獲得した2組のアーティストには「Hype Like it!」の「HOPE STAGE」への出演権と賞金50万円が贈られる。
また、7月からはxHLが手掛ける音楽バラエティYouTubeチャンネル『ハイプライビー / HYPE L!EBE?』も始動。架空の音楽プロダクションを舞台に、音楽業界の裏側や若手アーティストの紹介をテーマにしたトークが繰り広げられる。
どんな思いのもとにイベント、オーディション、番組をスタートさせたのか。柳井氏に狙いを聞いた。
――まずは「ハイプラオーディション」を立ち上げようと考えたきっかけから聞かせてください。
柳井:起点はMASH A&Rのオーディションをやめるところからでした。苦渋の決断だったんですよ。7組のアーティストと出会って契約をして、その中にTHE ORAL CIGARETTES、フレデリック、Saucy Dogとアリーナクラスのアーティストが3組いて、Enfantsも含めると4組が今も継続して活動している。オーディションとしても機能していたし、業界や若いバンドマンにも認知されていた。ただ、契約したアーティストをしっかり売り出したいし、マネージャーも足りないという理由で、2021年を最後にオーディションを休止するに至ったんです。で、そこから時が経ち、今回「Hype Like it!」というイベントをやるにあたって、それと絡めてオーディションをやるチャンスができた。その過程の中で、「オーディションって果たして自社で関わるアーティストを募集することの一択しかないのかな?」ということを考えたんです。
――というと?
柳井:自分たちのメリットだけを考えるならMASH A&RなりHIP LAND MUSICなりのオーディションをやるのでもいいんですけれど、もっと面白いこと、もっとバンドやアーティストにとって価値のあるものを作りたい。というのも、リスナーに届く可能性があっても、アーティストのカラーや考え方や目標の持ち方がオーディションをやる会社とマッチしない、みたいなケースもあり得るので。だったら、複数のレーベルや事務所がオーディションに参加して、昔のテレビ番組の『スター誕生!』みたいな感じで、「やりたい人が手を挙げる」みたいな形にしたい。で、たとえば4社から手が挙がったら、4社の担当者がそれぞれプランを提案するんです。そして、どこと契約するのかはバンドやアーティスト側が選ぶ。そうすると価値がありそうだなと思ったんですね。
871(柳井貢)
――なるほど。アーティストとレーベル・マネジメントのマッチングの場を作るということを考えている。
柳井:そうですね。きっかけとわかりやすいゴールの一つはイベントなんですけど、このオーディション自体の特性や狙いに関しては、複数のレーベル・マネジメントが参加しているという方が意味合いは大きいです。
――「ハイプラオーディション」のTOP2に選ばれたアーティストは「Hype Like it!」の「HOPE STAGE」への出演権が得られるということで、フェスやイベントに紐づいたオーディションというとフジロックの「ROOKIE A GO-GO」やサマソニの「出れんの!?サマソニ!?」みたいなイメージを持つ人もいるかと思いますが、設計としては結構違うものですね。
柳井:全然違います。アーティストが同時にたくさんのレーベル・マネジメントの人たちにプレゼンテーションできる場、その先で評価を得れば契約先を選べる立場になる機会を提供したいということが大きい。というのも、アーティスト側の機会と経験量って少ないんです。ほとんどの若手アーティストにとって、レコード会社やプロダクションとの出会いの機会は限られている。だから、声をかけてくれた人から「うちはこういう形でやっている」という話を聞いた時に、それを比較検討するチャンスもなく所属契約を結ぶことが大半なんですね。契約内容についても、それがいい条件なのかどうか、予算がどうか、権利分配が適正か、そういう知識がない状態で契約をせざるを得ない。だいたいのケースだと、そのレーベルやマネジメントの他の所属アーティストの名前を頼りにイエス・ノーの二択を迫られる。それもあんまり良くないことだと思うんです。これからは、レーベルもマネジメントも選ばれる立場であるべきだし、ある種、我々のような人間も競い合って、アーティストに選んでもらえる立場、役割、価値、キャラクターを見出していくべきだと思う。そういう考えのもとで、このオーディションを設計しています。
――新しいオーディションを始めるにあたっては、今の時代のあり方、今の音楽シーンを踏まえたものにしなければならないという考えもあったんじゃないかと思います。そのあたりはどうですか?
柳井:今は、アーティストにとって、レーベルやマネジメントが必ずしも必要とは限らない時代になってきたと思います。お金もそこまでかけずに音源も作れるし、自分たちの制作に対してのリファレンスも無限にあるし、なんだったらアレンジの提案デモをAIからもらうこともできる。ミュージックビデオも低コストで作れるようになったし、自分たちのアカウントで発信もできる。それをいかにアルゴリズムに乗せるかというところで、音楽を聴いてもらうためのチャンスを得ることはできる。ただ、そこからしっかり経済的な価値を生み出して、自分たちの活動基盤を作るためには、やっぱり我々のようなマネジメントやレーベルの機能は役に立つものだと思います。つまり、ライブに集客をする、グッズで利益を出せるように製造と売上とディレクションをコントロールする、ファンクラブをあるべき形で運用する、そういった中でバンドのブランディングと実際のビジネスとの整合性をチューニングしていく。そういうことができるパートナーは必要だと考えているんですが、それをアーティストが見つけるためのスキームは、今のところあまりない。そういう現状に対する提案ですね。
――HIP LAND MUSICだけでなく業界各社がこのオーディションに参加しているというのは、そうした提案や考え方への共感もあったのではないかと思います。そのあたりはどうですか?
柳井:みんなどこかでうっすら危機感を感じているんじゃないかと思います。どうやってアーティストと出会えばいいのか、そして、どうやってアーティストに自分たちの価値を提供していけばいいのか。音楽に限らず、アーティストがマネジメントを離れたり、タレントが所属事務所との契約を終了して独立することが、今の世の中ではたくさん起こっている。その中で自分たちがアーティストに選んでもらい続けるためにどうすべきかということを、みんな考えている。ただ、こうやって企業のロゴがずらっと並んでいると、大人の匂いみたいなものを感じる人もいると思うんです。会社同士で、キャラクターの見えない誰かが手を組んでやっているんだという印象を持つ人もいるかもしれない。でも、実際は、僕が直接の面識とお付き合いのある現役バリバリの一線級のマネージャーやディレクターに連絡して、口説いて、その人の意志で参加してもらってるんです。なので、ちゃんと人格があり、あくまで僕からの目線ですけれど、実績があって、信用がある人たちに、それぞれの考えのもとで参加してもらっている。そこはちゃんと伝えたいですね。
871(柳井貢)
――「Hype Like it!」というイベントについても聞かせてください。これはどういうきっかけで立ち上げたものなんでしょうか?
柳井:これまで、他の方が中心になったいろんなイベントを見て、もし自分がやるならどんな形だろうということを想像していました。自分はマネージャーとして複数のアーティストに関わっていて、アリーナクラスの公演が打てるバンドが5組いる。そういう人間は周りを見渡してもそんなにいないし、それを分かりやすく伝えるには、イベントをやるのが手っ取り早い。そう考えたことが、今回のイベントにつながっていますね。
――THE ORAL CIGARETTES、Saucy Dog、KANA-BOON、フレデリック、ハルカミライの5組との縁が土台として大きかった。
柳井:ちゃんと自分の中で理由を持ってアーティストにオファーを出せるイベントにしたかったというのもあります。「俺はこういう考えでやるから、みんな出てもらえませんか」って言えるイベントにしたかった。今回は、メインステージの「HYPE STAGE」に出る5組だけでなく、もう一つの「HOPE STAGE」にも自分が関わってきたアーティストの出演が決まっていて。自分の歴史を振り返るというか、幅広いスタンスでアーティストと関わることを20年やってきたらこんなことになるよというのを表現したかったというのもありますね。そこにお客さんが来てくれるか、楽しんでもらえるのかどうかという実験も含め、影響力の確認というのもありました。
『Hype Like it!』
――イベントは2日間で、1日目にはChevonやWurtS、2日目には10-FEETやHEY-SMITHなども出演します。必ずしも柳井さんが担当したわけではないアーティストも含まれるラインナップになったわけですが、そこにはどんなイメージがありましたか?
柳井:最初は5組を1日に出したかったんですよ。でも、幕張メッセでイベントをやるにあたっては、1日だと収支的に厳しい。なので2日間のイベントを成立させる上でどうやったら面白くなるのかを考えて、そこでお客さんファーストに立ち返ったんです。実際に来る人がフルで楽しめるようにするにはどうするべきかを考えた。その上で、2日間のトリはTHE ORAL CIGARETTESとSaucy Dogに務めてもらいたい。そこから、それぞれの日で色がちゃんと分かれてた方がお客さんにも楽しんでもらえるんじゃないかというイメージが出来上がって。そこから、自分がお世話になってたりとか、アーティストを通じてたびたびご一緒させてもらう機会があったアーティストに声をかけさせてもらって、結果的にこういうラインナップになったという感じですね。
――ちなみに「Hype Like it!」って、どういう由来の名前なんですか?
柳井:長くなっちゃうんですけど、まず自分がプロデュースしているイベントやコンテンツを全てまとめる「xHL」という屋号があるんですね。位置づけとしては「ヒップランドの中の社内ベンチャー」という表現をしているんですけど、要は、僕の部署が子会社化した時の屋号を考えて先につけたんです。そこにヒップランドのブランドはちゃんと残しておきたい。なのでヒップランドのHとLを取って、その歴史と、信頼あるノウハウを新しい何かと掛け合わせて世に送り出していく、という意味で「xHL」という屋号にした。そこから、いろんなものをその「xHL」に紐付けていきたいというので、頭文字がHとLの言葉から、自分のマインドや表現したいものと親和性のあるワードをセレクトしていった感じです。
871(柳井貢)
――『ハイプライビー / HYPE L!EBE?』という音楽バラエティYouTubeチャンネルも始動しましたが、こちらの狙いは?
柳井:やっぱり、メディアを持っているというのはすごく重要なことだとずっと思っていて。面白くて、カジュアルに接触できるような、音楽を紹介できるメディアを作りたいというイメージがあったんです。前にTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也と「『うたばん』とか『HEY!HEY!HEY!』みたいなやつを自分たちでできないんですか?」みたいな話をしたこともあって。ああいうお喋りが面白い音楽番組がなくなってきてるのがもったいないし、自分もそういうのに出れるんだったら出たいみたいなことを言っていた時期があった。そういう風にいろいろ考えていたんですけれど、イベントに向けて幕張の会場がとれた段階で、「やるんだったら今やらなきゃいけない」と思って走り出した感じですね。
――こういうイベントやオーディションや番組について柳井さんが「871」という名義で発信していることについても聞かせてください。音楽業界には「マネージャー職は裏方たるべし」みたいな考え方も根強くあると思います。とはいえ、SNSの普及以降、スタッフを指す言葉として「チーム」や「運営」という言葉がファンやリスナーの間でもよく使われるようになり、スタッフの発信を通じたブランディングも行われるようになってきている。そういう時代の変化も背景にあるのではと思うんですが、そのあたりはいかがでしょうか?
柳井:まず、自分は「裏方たるもの、影でやるべし」という考え方に、ちょっとした窮屈さは感じていたんだと思います。20代前半に大阪で店をやって、自分の顔でDJナイトを企画してバンドをブッキングしていた。当時の店やイベントは自分のキャラクターがあって成り立っていたので、それをゼロにするという意識がそもそもなかった。cutman-boocheのスタッフをしていた時も、自分のブログを作ってプロモーションをやっていた。なので、そういう素養はもともとあったと思うんですね。「前に出たがりだ」という誤解を受けることもあるんですけれど、そこには何かしらの効果なり価値があるんじゃないかと思ってやってきたんです。ただ、振り返るとワンアーティスト・ワンマネージャーという関係での発信にはリスクもあるし、逆に自分がアーティストに提供できる価値も少なくなってしまう。THE ORAL CIGARETTESと奇妙礼太郎に同時に関わるようになってからは、そういうことにも気付きました。あとは、コロナ禍の時に何もできなかったんで、ほぼ毎日インスタライブをやっていたということもあって。やっぱり、自分の立場なり役割だからこそ語れることは語った方がいいんじゃないかと思うようになりましたね。もちろん、もっといいやり方、いいバランスを模索していかなきゃいけないと思いますけれど。やっぱり、プロデューサーやマネージャー、裏方の人間がちゃんと言葉で語れる、姿勢を出せるというのは、特に今のこのSNSベースの社会性の中ではとても重要だと思っていますね。
取材・文=柴那典 撮影=大塚秀美
871(柳井貢)
ハイプラオーディション
イベント情報
2027年01月23日(土)24日(日)
幕張メッセ国際展示場 1・2・3ホール
KANA-BOON, Saucy Dog, フレデリック
Day2 24日(日)開場09:00 / 開演 11:00
THE ORAL CIGARETTES, ハルカミライ
1日券 ¥11,000 / 2日通し券 ¥20,000
U-21券 ¥8,800 / こども
オーディション情報
えらばれる → えらぶ
アーティストとレーベル・マネジメントのマッチングオーディション
xHLがキュレーションした複数のレーベル・マネジメントが、各社それぞれの価値観を掛け合わせニューカマーアーティストと出会うオーディション。
複数社から評価を得たアーティストは、それぞれからの契約および育成契約の提案を受けた上で、どのレーベル・マネジメントと契約をするかを選ぶことができる。
ファイナリストは12月に行われる「ハイプラ - x Hype Live」に出演、その中で評価の高かった2組のアーティストが、2027年01月23日(土)24日(日)に開催される「Hype Like it! - HOPE STAGE」の出演権と賞金50万円を手にすることができます。
ハイプラオーディションは、アーティストがえらばれるだけではなく、自分たちによりよい環境や条件をえらぶ立場にもなれるオーディションです。
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