三谷幸喜書き下ろし6年ぶりの新作『ショーガール~きみは最高~』開幕 川平慈英、シルビア・グラブ、荻野清子と贈る贅沢な大人のエンターテインメント
『ショーガール~きみは最高~』公開ゲネプロより(左から)シルビア・グラブと川平慈英(撮影:翡翠)
三谷幸喜氏が脚本・作詞・構成・演出を務めるPARCO PRODUCE 2026 パルコ・ミュージック・ステージ KOKI MITANI’S SHOW GIRL vol.3『ショーガール~きみは最高~』が、東京・PARCO劇場で2026年9月19日に幕を開けた。川平慈英とシルビア・グラブのコンビで、2014年に上演が始まった作品。3度の再演を経て、今年は6年ぶりに三谷氏が脚本を書き下ろした。第1部は「大人のラブストーリー」がテーマで、ショートミュージカルを展開。第2部はシンディー・ローパーの『Time After Time』、夏川りみの『涙そうそう』などの名曲を華麗に披露していく。上演は同所で27日まで。SPICEでは、川平とシルビアが100分で16役を演じ、40曲を熱唱したゲネプロの様子をレポートする。
『ショーガール』は、故・福田陽一郎氏が脚本・構成・演出を務め、木の実ナナと細川俊之のコンビで1974年から88年まで上演された伝説のショー。日本のショービジネス界のエポックメイクとも言われる作品を、尊敬する福田氏への最大のリスペクトを込めて、2014年に三谷氏が川平とシルビア、作曲家で音楽とピアノ演奏も担当する荻野清子氏と共に上演をスタートした。
劇場に入ると名作ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の『ダンス・オール・ナイト』や、フィルム・ノワールの傑作『第三の男』の『ハリー・ライムのテーマ』など、始まる前から気持ちを高揚させてくれる楽曲がSEとして流れていた。
『ショーガール~きみは最高~』公開ゲネプロより
※ここから先は劇中の演出やストーリー、セットリストに関するネタバレを含みます。気になる方は観劇後の閲覧を推奨いたします。
■【第1部】濃密なショートミュージカルの連続
6年ぶりの新作はアップテンポな『ショーガールのテーマ~なんかいいこと』で幕開け。黒のシルクハットと、黒いジャケット姿の2人が軽やかに踊りながら歌い、観客をショーの世界へと誘っていく。
毒ヘビに噛みつかれ、泣きそうな顔を見せたアントニウス(写真左)と驚くクレオパトラ
物語の語り手は、なんと三谷幸喜。第1部では「世界の歴史を飾った恋人達を紹介していく」といい、1組目は古代エジプトの女王・クレオパトラ7世に扮(ふん)したシルビアと、ローマの有力者マルクス・アントニウス役の川平が登場した。大戦に敗れ追い込まれたクレオパトラは、自ら命を絶つことを決意。世界中の不幸を集めたような顔で毒ヘビが入った壺を持参するのだが、ヘビが脱走。逃げたヘビが、アントニウスに噛みついてしまう。慌ててヘビに噛まれようとするクレオパトラだが、アントニウスのお尻から引き離した際にヘビが絶命。次の手として、毒サソリを持ってくるが、再びアントニウスに不運が。悲劇の芝居を、わざと大げさにすることで一瞬で喜劇に変えてしまう、2人のエネルギッシュなパフォーマンスに大きな笑い声が起こっていた。
〝鉄の女〟の異名を持つ、イギリスの元首相マーガレット・サッチャー(写真右)とその夫
古代ギリシアの哲学者・ソクラテスと、悪妻として知られたクサンチッペのやり取りを描いた場面では、投獄されている夫のもとを訪れたクサンチッペが、ワインのコルクを開けるように求めたほか、銀食器を磨かせるなど意地悪ばかり。ソクラテスが「明日、遠くに行く」と告げると、その身を案ずることなく、「トリッパのトマト煮の作り方を教えて」と冷たいひと言。ソクラテスが微笑みながら、レシピを歌詞にした『トリッパの作り方』を思いを込めて歌うと、夫への優しい気持ちを隠していたクサンチッペが少しずつ夫に近づき、そっと寄り添った。1人で歌っていたソクラテスと目を合わせると、煮込む様子を歌詞にした「♪ぐつぐつ、ぐつぐつ」の部分を2人でデュエット。気持ちを通わせた夫婦の姿が美しかった。
華岡青洲になったシルビア(写真左)と、クセが強い川平の妻
医師・華岡青洲と、その妻・加恵らのエピソードを紹介したシーンでは、ネズミ、ネコ、ウサギで全身麻酔の効果を実証した夫のために、妻役のシルビアが「次は私が全身麻酔を受ける!」と提案。世界で初めて人間の全身麻酔手術を成功させた偉業までの道のりを、笑いの連続で進行していく。最初は妻役だったシルビアは、最後には青洲に。青洲として登場した川平は、最後はクセが強い加恵に変身。1人で何役もこなす仰天の展開には頭が下がる。全身麻酔の実験台になることは譲らない!思いがこもった『私を眠らせて』は必聴だ。
アインシュタインのキメポーズで笑わせた川平
大声を出して笑った後は、ドイツの理論物理学者、アルベルト・アインシュタインと、その2人目の妻・エルザの“愛”を紹介。胸に大きく「A」とデザインされたオレンジ色のTシャツが気になりすぎる白衣姿のアインシュタイン役は川平が担当。「私には考える時間が必要だ」とステージを所狭しと歩き回った序盤、ふと立ち止まると観客席を見つめ有名な舌を出すポーズを披露。思わぬいたずらに、再び大爆笑が起きていた。ほんわかした一方で、史実では、病弱な妻に冷たい仕打ちをするなど、“モラハラ夫”として知られるアインシュタイン。夜食に作るトリッパのレシピを教えるように求めると、きかん坊の子どもをなだめるようにエルザが『トリッパの作り方(リプライズ)』を優しく歌い始めた。その丁寧な作り方に、愛情が込められていることに気づいたアインシュタインは「待て、やっぱりお前が作ってくれ」とエルザを抱き寄せた。ここでも煮込む過程を歌った『♪ぐつぐつ、ぐつぐつ』で2人は声を重ね、気持ちが一つになった様子も表現していた。
■【第2部】名曲満載の怒濤のショータイム!
第1部から、第2部へ。ショーは、ノンストップで続行。2人が準備をしている間は、ピアノの荻野、ベースの一本茂樹、ドラムの萱谷亮一の演奏に合わせて三谷が、ショーの歴史を解説していた。
音楽を手がけた荻野清子(写真左)の伴奏で情熱的に歌うシルビア
目が覚めるようなブルーのドレスに身を包んだシルビアと、タキシードでキメた川平が再登場すると、観客は大きな拍手で出迎えた。第2部の1曲目は、コール・ポーターの『Night and Day』。軽やかにステップを踏みながら英語で「♪昼も夜もあなただけ」と愛しい気持ちを歌い上げていく。コミカルな表情を見せた第1部とは一転、大人の色気で魅了していた。
息がピッタリ合ったダンスを披露する(左から)シルビア・グラブと川平慈英
歌手の森山良子が早世した兄への愛しさと寂しさを歌詞に込めた『涙そうそう』では、沖縄出身の川平が、オリジナルの歌詞、ウチナーグチ(沖縄の方言)、川平自身が訳した英語で歌唱。会場を優しい歌声で包み込んでいた。
しっとりと聴かせた川平のもとへ、真っ赤なドレス姿で戻ってきたシルビア。2人で並ぶと、タップダンス対決を開始。キレがあるジャックナイフなどの技が飛び出ると、川平は「ビッグテクニック!!!」と大興奮。ドナルドダックのモノマネを交えたタップダンスを披露すると、シルビアは「やったことないけど」と言いながらも、ドナルドダックの真似をキュートにしてみせ、川平をノックアウトしていた。
続くメドレーでは、CHAGE and ASKAの『YAH YAH YAH』、ラテン調にしたベン・E・キングの『STAND BY ME』などを歌唱。『YAH YAH YAH』では、「♪YAH YAH YAH」と歌うごとに、シルビアが音階をアップ。苦しくなった川平は最後「♪イヤ、イヤ、イヤー!!!」と歌い笑わせた。不穏な照明の中で、ゴーストがステージに飛来すると、2人はゴースト退治を行う「ゴーストバスターズ」に早変わり。レイ・パーカー・ジュニアが歌った映画の主題歌『ゴーストバスターズ』を歌いながら、ゴーストを一掃しPARCO劇場に平穏をもたらしていた。
シルビアも川平もバイリンガル。そんな2人がパフォーマンスした、テレビドラマ時代劇『水戸黄門』のテーマ曲『ああ人生に涙あり』は変化球だった。シルビアが「♪人生楽ありゃ苦もあるさ」と歌うと、川平が『♪Easy life,Hard life~』とたたみかけるように英訳。少しも気が抜けない仕掛けに驚き、真剣な眼差しで面白いことをするギャップに、何度も肩を揺らして笑ってしまった。20曲以上の歌を歌い繋いだメドレー。終盤には、歌舞伎の早替えのように赤いドレスから一瞬にして、黒いレオタード姿になったシルビア。大喝采の中で、ザ・ビートルズの『ツイスト・アンド・シャウト』などを歌い会場をヒートアップさせていた。
エンターテイナーが揃った舞台は、サプライズの連続だ。思いもよらないカップルが登場する第1部。そして、その合間。バンドと共に再開した第2部と、ドラマや映画、舞台などで大活躍する2人が魅せる想像を超える時間を、劇場でぜひ体験してほしい。
三谷、荻野、川平、シルビア・グラブのコメントは次の通り。
▼三谷幸喜
「ショーガール」は二人の役者とミュージシャンによるショーステージ。前半はお芝居、後半はsong&dance。福田陽一郎さんが作演出をされていた頃から、この構成は変わりません。日本を代表するエンターテイナー川平慈英とシルビア・グラブ。歌って踊れて芝居も出来て、おまけに英語も話せる二人。天は二物を与えるどころか、三物も四物も与える奇跡を、ぜひ皆さんご自分の目と耳で確かめて下さい。ちなみに二人は今回、100分で16役を演じ、40曲を歌いまくります。
▼荻野清子
待ちに待ったこの時がやってきました!
12年前の初演から、「ショーガール」は私にとってなんだか特別な作品です。三谷さんの緻密な台本を少しずつ立ち上げていくお芝居やミュージカルの稽古も好きですが、この「ショーガール」はそれとはちょっと違います。キャスト、バンド、スタッフ全員で、楽しみながらアイディアを出し合い試行錯誤を繰り返す手作り感…この例えが合ってるかわからないけれど、まるで壮大なサークル活動やお祭りの運営活動のようにも感じ、ワクワクする大好きな時間です。自分達が面白いと思うことをとことん真剣に追求する。
そんな「ショーガール」新作がいよいよ開幕します。
この楽しさを全てのお客様と分かち合いたい!
劇場でお待ちしております。
▼川平慈英
帰って来ました『ショーガール』!しかも三谷さんの完全新作! 第一部は小粋なコメディミュージカル、第二部は怒濤のショータイム! まさに一粒で二度美味しいとはこのこと。今回もパルコ劇場のステージを所狭しと駆け回ります! わざわざニューヨークやウエストエンドなんて行かなくても、電車で渋谷へ出掛けるだけで極上のエンタメが味わえちゃうんです!お客様が席に座ってくれさえすれば、シルビア、清ちゃんといつもの鉄板メンバーが最高の時間をお届けします!
是非『ショーガール』を劇場で体験してください!
来てくれたら、“きみは最高!”
▼シルビア・グラブ
また三谷さんからの「えー!?」と思うような発想を実現しようと奮闘しながら頑張っています! 6年ぶりの6年熟した「最高のパートナー」三谷幸喜×荻野清子、そして川平慈英×シルビア・グラブ。 このメンバーでしか作れない最高のエンターテインメントをお送りいたします!楽しみにしていてください。
取材・文・写真=翡翠
公演情報
KOKI MITANI’S SHOW GIRL vol.3
特別協賛:株式会社イープラス
企画・製作:株式会社パルコ
ハッシュタグ:#三谷幸喜のショーガール