ショーン・ホームズ演出×段田安則主演『セールスマンの死』再演が決定、その意気込みを直撃
『セールスマンの死』取材会より (左から)ショーン・ホームズ、段田安則 撮影:細野晋司
アーサー・ミラーが1949年に発表し、世界中で上演され続けている『セールスマンの死』。2022年、イギリスのショーン・ホームズが演出し、段田安則が主人公ウィリー・ローマンを演じた舞台は絶賛を博し、段田は芸術選奨演劇部門・文部科学大臣賞と読売演劇大賞・最優秀男優賞に輝いた。その舞台が2027年春に帰ってくる。ホームズと段田が取材会に登場、作品への意気込みを語った。
『セールスマンの死』初演舞台写真 撮影:細野晋司
「この『セールスマンの死』は、私がこれまで演出してきた中でもっとも好きな作品の一つ。段田さんのウィリー・ローマン役のパフォーマンスは、これまで観てきた中でもっとも優れたものだと心から思う。優れた俳優は技術の緻密さと自由とを兼ね備えていて、毎晩、同じことをやりながらも違ったように演じられる」と言うホームズ。段田も、「ウィリー・ローマンの頭の中に起こった出来事のようなニュアンスで表現するという演出で、演技としては写実的な芝居をするんですが、舞台全体としてはただのリアリズムではないというのがおもしろい。演出のセンスがよく、明確な演出プランがあるが、頭が柔軟な方なので、ご自分で違うと思ったらすぐに変更するし、役者の芝居を見てこうしてみたらもっといいんじゃないかと提案してくれるので、一緒に舞台を作っているという感覚になる。芝居の稽古をしていくうちに人種の違いとか芝居の取り組み方が違うという感覚がなくなり、一緒に作っていく仲間みたいな感覚になってきた」と、『セールスマンの死』初演、『リア王』、『スリーゴースト』と三作品を共にしてきた演出家への信頼を語る。ホームズは、「言葉がわからなくても芝居がいいかよくないかははっきりとわかるし、日本で演出することによってよりよい演出家になれたと思っている。言葉がわからないからこそ、目の前で起きている一瞬一瞬がちゃんと自分の理解できるものになっているかどうか注意して見ることになるし、視覚的な表現方法、身体的な表現方法をいかに使うかにも注力することになる。文化が違うからといって分断されているというより、むしろより一つになれている感覚がある」と言語を超えた協働について語ってくれた。
「ウィリー・ローマンは弱虫で卑怯者でファンタジストで絶望的で、けれども彼のキャラクターの中に私たちは自分自身の欲望を見出し、共感する。人生の多くを仕事に捧げてきたが、満足や喜びを覚えるようなものが返ってこない、資本主義という巨大なシステムによって彼が破壊されていく姿が描かれている。戯曲が書かれた当時、アメリカは大恐慌で、その後、新しいアメリカが立ち上がっていった。今回の演出では時代設定を大まかに60年代~80年代、軸としては80年代に寄せている。というのも、イギリスも日本もその時代に経済ブームを経験したという点で共通する側面があるように思えたから。私たちは今、政治や経済、環境、社会的に、世界がどうなっていくのか誰もが不安を抱く時代を生きているが、そういった不安もこの作品にこめられていて、一人の人物が世界をどうとらえ、歩んでいくのか、その心理的な旅を追体験することになる」と、今日における作品の上演意義について語るホームズ。段田も、「人生に成功した人も失敗した人もいるし、一人の人間の中に成功も失敗もある。ウィリー・ローマンのような生き方で生活している人が今もいる。つまり、見た目は成功者であっても、その内実、家族関係で負のものをもっているところがあったりもする。ギリシャ悲劇もそうだけれども、いい戯曲には現代に通じるものがあるから見たくなるんだと思うし、そういう要素がつまっている。父と子の葛藤みたいなものもすばらしく描かれている」と作品の魅力を語る。
PARCO PRODUCE 2027『セールスマンの死』チラシビジュアル
あっと息を呑むラスト・シーンの演出が話題を呼んだ初演の舞台。段田自身もそのシーンがもっとも印象に残っているという。「私は割と飽きっぽいというか、一度やるともういいやとなってしまうタイプ。しかし、このすばらしい作品はもう一度やってみたいと強く思った。せっかくやるので前にも増していいものをやりたい。ただ、上演のとき私は70歳。大丈夫かお前は、と不安と自信とが入り混じったような状態」と語り、初演の際に受賞した演劇賞が書かれた宣伝ビジュアルに、「プレッシャーですね。こう書いてあって、観に行こうかとなって来ていただいた方に、この程度かと思われたくない」と笑いを誘う。「20代のとき滝沢修さんが演じているのを観た。リー・J・コッブ、フレデリック・マーチ、ダスティン・ホフマン、日本でも風間杜夫さん、イッセー尾形さんと、名優の方がやっていて、あ、まずいな、比べないでとも思うけれども、いろいろな方がやっていらっしゃるので私も挑んでみたい」と、再演への意気込みを語る段田の姿が印象的だった。
取材・文=藤本真由(舞台評論家)
公演情報
作=アーサー・ミラー
翻訳=広田敦郎
演出=ショーン・ホームズ
会場=PARCO劇場 他新潟、豊橋、大阪、岡山、北九州公演あり
ハッシュタグ=#セールスマンの死
企画・製作=株式会社パルコ