新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』大野和士(指揮・芸術監督)など、緊張と期待に包まれた稽古初日のコメントが公開
新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』稽古場より
2026年11月23日(月祝)に開幕を控える、新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』。海外からのキャスト・スタッフも続々と来日し、新国立劇場内でいよいよリハーサルが始まった。
この度、緊張と期待に包まれた稽古初日のコメントが届いたので紹介する。
新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』稽古場より
本作は、イギリスを代表する作曲家ベンジャミン・ブリテンの代表作で、1945年にロンドンで初演され、ブリテンの名を一躍有名にした傑作。ブリテンの故郷オールドバラを思わせる荒涼とした漁村を舞台に、孤独な漁師ピーター・グライムズが村人たちから少年殺害の疑惑をかけられ、追い詰められていく物語だ。
ミラノ・スカラ座公演より Photo: Brescia and Amisano (C) Teatro alla Scala
ミラノ・スカラ座公演より Photo: Brescia and Amisano (C) Teatro alla Scala
貧困や児童虐待を題材にし、孤立していくピーター・グライムズの悲痛な叫びと暴走する集団心理とが描かれ、グライムズのささやかな希望と挫折、絶望への転落を緊張感の中に綴り、社会の不条理を観客へ突き付ける。海や月の光、嵐を描写する音楽の美しさ、力強さも特徴で、『ピーター・グライムズ』から編曲された「4つの海の間奏曲」は、オーケストラ作品として頻繁に演奏される名曲でもある。
ミラノ・スカラ座公演より Photo: Brescia and Amisano (C) Teatro alla Scala
ミラノ・スカラ座公演より Photo: Brescia and Amisano (C) Teatro alla Scala
大野和士(指揮、新国立劇場オペラ芸術監督) コメント
新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』稽古場より 大野和士
『ピーター・グライムズ』は1945年、終戦の年に初演された、若きブリテンの特別な作品。そして、純粋であるにも関わらず周囲の社会から排除されるピーター・グライムズの物語は、私たちの今の時代に多くのことを語る、そして私たちが語るべきオペラだと思っています
ブランドン・ジョヴァノヴィッチ(ピーター・グライムズ役)コメント
新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』稽古場より ブランドン・ジョヴァノヴィッチ
ピーター・グライムズは徒弟の少年に厳しくあたるけれど、少年に愛情も注いでいます。その証拠に、彼の船には、最初に死んだ少年ビリーの名前が付けられていました。少年を仕事の相棒とみなしていたし、少年の父親的な存在でなければと心から思いながらも、愛情を表現できないのです。
彼には自分を理解してくれるエレンと一緒になりたいという夢がある。けれども、その夢を叶えようと躍起になるせいで、友達を作ろうともせず、ますます孤立してしまう。その代償が、二人の少年の死であり、自らの死なのです。非常に不器用な、けれど心根の良い人物だと思っています。この視点をもとに、この作品の心理的な深みを出していきたいと思います。
オリヴァー・プラット(演出補)コメント
新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』稽古場より オリヴァー・プラット(演出補)
『ピーター・グライムズ』は、日本と同様、他の世界から孤立した島国であるイギリスの物語。貧しく、外界から遮断された村が舞台で、そのコミュニティはお互いを助け合う一方で、よそ者を嫌う社会でもある。皆と違う、外部から来る、あるいは外に出ようとする存在に対し、あっという間に狂暴化した群衆が襲いかかるのです。
この行動の根底には、知らないものや異質なものへの不安があります。異質なものを受け入れたくない、受け入れがたいのです。同じようなことは、現代の私たちも経験しています。
さらに、このピーター・グライムズという人物の、何かに執着し、精神錯乱状態になっていく傾向、時に暴力的な衝動に駆られるところは一種の病で、グライムズ自身が虐待を受けた経験が連鎖して表出してくるのだというのが、ロバート・カーセンの解釈です。繰り返し連鎖すること、それを断ち切るのは非常に難しいこと、これが私たちの本作へのアプローチです。
私たちの演出では、最後に再び「次の誰か」が被告席に立たされます。コミュニティはターゲットを求め、すぐにスケープゴートを見出す。この連鎖が続いていくのです。
ここにいる皆の力でまた東京でこの作品を創り上げることを楽しみにしています。
新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』稽古場より
新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』稽古場より
ロバート・カーセン演出の『ピーター・グライムズ』は、2023年にミラノ・スカラ座で初演され、現地でも絶賛を博した。
ミラノ・スカラ座公演より Photo: Brescia and Amisano (C) Teatro alla Scala
暴走する心理の底には何があるのか、繊細に劇的にそして痛切に今日に伝える、若きブリテンの傑作オペラ『ピーター・グライムズ』。ブリテン没後50年の2026年、必見必聴の公演と熱い視線が注がれている。
公演情報
令和8年度(第81回)文化庁芸術祭主催公演 昭和100年記念公演
ベンジャミン・ブリテン
『ピーター・グライムズ』<新制作>
Peter Grimes / Benjamin Britten
全3幕〈英語上演/日本語及び英語字幕付〉
【会場】新国立劇場 オペラパレス
【
【指揮】大野和士
【演出・照明】ロバート・カーセン
【美術・衣裳】ギデオン・デイヴィー
【照明】ピーター・ヴァン・プラート
【映像】ウィル・デューク
【振付】レベッカ・ハウエル
【演出補】オリヴァー・プラット
キャスト
【ピーター・グライムズ】ブランドン・ジョヴァノヴィッチ
【エレン・オーフォード】サリー・マシューズ
【バルストロード船長】ジョーダン・シャナハン
【アーンティ】ニコール・ピッコロミーニ
【姪1】渡邊仁美
【姪2】今野沙知恵
【ボブ・ボウルズ】糸賀修平
【スワロー】河野鉄平
【セドリー夫人】齊藤純子
【ホレース・アダムス】村上公太
【ネッド・キーン】吉川健一
【ホブソン】大塚博章
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
Production of Teatro alla Scala of Milan
公演情報 WEB サイト https://www.nntt.jac.go.jp/opera/petergrimes/