”家畜”になりたくなる!! 『SHOW BY ROCK!!MUSICAL~唄え家畜共ッ!深紅色の堕天革命黙示録ッ!!』レポート
シンガクリムゾンズ 左からヤイバ役鳥越裕貴、アイオーン役輝馬、クロウ役米原幸佑、ロム役滝川英治 写真=鈴木久美子
『SHOW BY ROCK!!MUSICAL~唄え家畜共ッ!深紅色の堕天革命黙示録ッ!!』が、2月16日(火)まで絶賛上演中だ。『SHOW BY ROCK!!』とは、音ゲー×キャラクター要素を掛け合わせた、あのサンリオによる異色プロジェクト。2013年、スマホゲームアプリをリリースし、2015年のTVアニメ化でブレイク。現在、200万ダウンロードを越える人気を誇る。そんななか、2016年、満を持しての初の舞台化が幕を開けた。
物語の舞台は、”音楽を制するものが世界を制す”と言われるMIDI CITY。耳&シッポがキュートな「ミューモン」たちがバンドを組み、トップをめざす世界。今回の舞台版に登場するのは、弱小音楽事務所BRRに所属する「シンガンクリムゾンズ」と、人気絶頂のアイドルバンド「トライクロニカ」の2グループだ。シンガンクリムゾンズは、「2015年サンリオキャラクター大賞」で、大勢のキャラクターを押し分け、堂々の2位に浮上したほどの人気。その爆発的人気の理由が、今舞台でも十分伝わってきた。
今作のストーリーは、事務所の社長・有栖川メイプル(野崎数馬)が作った多額の借金を返済するため、シンガンクリムゾンズが「King of MIDI CITY Live Festival」に参加するところから始まる。優勝賞金獲得を目指す彼らの前に立ちはだかるは、最強のライバル・トライクロニカ。最高の音楽を創り、優勝を勝ちとるため、地獄(?)の合宿に突入するシンガンメンバー。一方、トライクロニカのカリスマアイドル・シュウ☆ゾーに、怪しい男の影が忍び寄る。いつもキラキラ☆のシュウ☆ゾーの様子が一変。フェスは大波乱に……!?
まず最初に目を奪われるのは、衣装、ヘアメイク、小道具に至るまでの、忠実な再現度だ。目線、指先、キメポーズの角度、立ち居振る舞いに至るまで、完璧に具現化され、原作への敬意と、役者の気合いがにじみ出る。特筆すべきは、ヤイバ(鳥越裕貴)とロム(滝川英治)の衣装。原作どおりの再現の結果、見事な腹筋が露わに……。ロムに至っては、ばさっと上着を脱ぎ捨て、ステージ中央でボディビルダーのポーズをとったり、“裸エプロン”で登場したり。リアルな肉体美が堪能できるのも、アニメ原作舞台の魅力!
ほとばしるロムの肉体美! 写真=鈴木久美子
シンガンクリムゾンズの掛け合いやツッコミ合いにも、生ならではの怒涛の勢いがのっかる。怖い者知らずの自信家・クロウ(米原幸佑)に、挙動不審でポーズを決めないとしゃべれないアイオーン(輝馬)が突っかかり、そこへロック魂と武士道をリスペクトするヤイバが参戦。やんややんやと収拾がつかなくなった3人に、リーダーのロムが愛の拳をくらわせ、熱い語りで感動させ、結束を強める……というファンおなじみの掛け合いも豪快で、気を抜くと置いていかれそうなテンポ感。「キング・オブ・男飯」といって、なぜかラーメンの丼片手に歌って踊ったりと、どこかズレた4人の姿もキュートで、思わず笑ってしまう。すべてのリアクションがオーバー&全力でぶつかり、かわいくて面白くてカッコいいシンガンクリムゾンズの魅力が、余すところなく味わえる。ライブでの米原幸佑の圧倒的な歌唱力や、本人が「一生懸命研究した僕なりのアイオーン」と語る輝馬のイケメンぶりにも注目を!
「キング・オブ・男飯」ラーメン! 写真=鈴木久美子
ロックでワイルドなシンガンクリムゾンズに対し、トライクロニカはキラキラ☆まぶしい、王子様グループ。シュウ☆ゾー(三津谷亮)が、“キラ星”のポーズをとるたびに、黄色いライトがピカッと飛び散る様は、まさに銀河のアイドル☆ 彼を支える双子のリク(橋本祥平)&カイ(月岡弘一)の双子感も、「どう表現するか、稽古場から考えていた」(橋本)というだけあり、しっくりと調和。一方で、シュウ☆ゾーが音楽に悩み、山之上メフィスト(木村靖司)の誘惑に負け、迷走する展開も。いつも笑顔のシュウ☆ゾーが苦悩する、切ない表情が垣間見られる。果たしてシュウ☆ゾーを救うことができるのは、誰なのか……?
トライクロニカ、左からリク役橋本祥平、シュウ☆ゾー役三津谷亮、カイ役月岡弘一 写真=鈴木久美子
他グループとして、「ドロップアウト先生」が登場し、シンガンクリムゾンズと音楽勝負(?)を繰り広げつつ、友情を深め合う一幕も。音を使ったバトルや、グループ同士の掛け合いも注目だ。特に、シュウ☆ゾーとロムは、過去に因縁を持つ間柄。シュウ☆ゾーに対してだけ、普段と違う雰囲気になるロム。彼らの友情模様を含め、音楽を愛する若者の“青春”がまぶしく描かれている。ストーリー原案は、アニメ版で脚本・構成を手がけた待田堂子。心温まる作風が定評の福島三郎が脚本と演出を担当する。はちゃめちゃな展開のなかにも、「最高の音楽とは何か?」「理想vs現実」といったテーゼがこめられ、芯のある“青春ドラマ”に仕上がっている。
シュウ☆ゾーを心配するリクとカイ 写真=鈴木久美子
とはいえ、基本的に難しいことを考えず、スカッと楽しめるのが、本作の魅力。ライブパートは、サイリウムOK! 「Falling Roses」「Crimson quartet」「キミと☆Are You Ready?」といったアニメ楽曲のみならず、「VERSES」「虚飾の旋律」といった舞台オリジナル楽曲も演奏される。シンガンクリムゾンズは、クロウの「いくぜ、家畜ども!」のセリフがライブの合図。家畜=シンガンクリムゾンズのファンのことで、まさに家畜になった気分で、ペンライトを振り上げ、彼らの音楽にひたることができる。
迫力のライブシーン! 写真=鈴木久美子
キャスト7人がそろったゲネプロ直前の記者会見からも、本作の魅力や、役者同士の仲のよさを感じとることができた。
写真=鈴木久美子
――作品の見どころや、自分の役で見てほしいシーンは?
クロウ役米原幸佑(以下、米原):僕たちシンガンクリムゾンズは、アニメではすごくバカなシーンが多くて(笑)。大人になりきれない大人たちが、音楽のためだけに熱くぶつかっている。そんな“中二病感”を、昔の気持ちを思い出しながら全力でやっています。でも、音楽のシーンはカッコよく。メリハリを意識して演じています。
アイオーン役輝馬(以下、輝馬):音でのバトルが新しいですね。観たことのないものになっていると思うので、注目してください。
ヤイバ役鳥越裕貴(以下、鳥越):僕はやっぱり、すさまじい筋肉を……。
ロム役滝川英治(以下、滝川):それ、自分でいうの!?(笑)
鳥越:観ていただいたらわかるんで!(笑)
滝川:昨日、ラーメン食べてたがな。
米原:(腹筋に)オイルぬっとるがな。
鳥越:いやいやいや(笑)。
滝川:シンガンクリムゾンズは、音楽が本当に好きだという点で、バラバラな個性がつながっています。わちゃわちゃ演じつつも、シュウ☆ゾーとの関係でシメるところはシメる。メリハリを心がけています。
シュウ☆ゾー役三津谷亮(以下、三津谷):僕は、キラキラした衣装に負けないキラキラをお届けします! 中身は28歳のおじさんですけど、若作りしているので!(笑)
鳥越:イケてるイケてる。
滝川:ここに、36歳おるぞー!
三津谷:(笑)。みなさんのお力をお借りしています。(照明は)まぶしいと思いますけど、しっかり皆さんの目でご覧くださいね(笑)。
カイ役月岡弘一(以下、月岡):そんなシュウ☆ゾーくんの後ろで、僕らは楽器を弾いてがんばっています。バンド演奏も見どころです。セリフも「シュウ☆ゾーくん」がほとんどなんですけど(笑)、ニュアンスの違いを感じていただけたらと。
リク役橋本祥平(以下、橋本):この作品ならではのライブを皆さんでお楽しみいただけます。僕らのトライクロニカをだして、シンガンクリムゾンズに負けないようがんばります! カイとの双子感をどう出すか稽古場から考えていたので、そこも見ていただけるとうれしいです。
――稽古で楽しかったこと、苦労したことは?
米原:原作に寄せすぎても舞台としての会話にならないので、アニメを観て、クロウというキャラクターのよさを盗みつつ、舞台なりのクロウを作ろうと意識してきました。1か月稽古しましたけど……ホント、いい感じにバラバラでアホですね。
鳥越:いい意味で、でしょ?(笑)
米原:稽古途中で、ハマったなーと思って。みんなが投げてくる球をどう料理しようか、考えるのが楽しかったです。
輝馬:僕は、難しかったところ、楽しかったところが一緒なんですけど……イケメンを出すこと。どうやって、一歩引いてキャラを成立させるか、自分なりの空気感を出すか。みんなで馬鹿できるところは楽しみつつ、1か月、稽古をやらせてもらいました。
鳥越:普段、シンガンがどんなスタンスでいるかとか、アニメで描かれていない部分を、稽古場からずっとやってきました。稽古場からずっと楽しくて。それがいい意味で、シンガンっぽさとして、舞台上に出ればいいなと思います。
滝川:ロムは、わちゃわちゃしたところを、うまく立て直す大人の部分もあったりして、メリハリを出すのが大変でした。あとは、滝川栄治が……ロムもですけど、足が長すぎて(笑)。何回かビリビリビリビリ衣装を破って、ご迷惑おかけしました。
鳥越:はい、次、シュウゾー!(一同爆笑)
三津谷:この世界観のなかで、ちゃんとトップアイドルとして生きていることを、はじめてのお客さんに伝えなきゃいけない。どうやったら大スターになれるのか、僕自身がまだトップスターになれてないからわからないので、なったつもりでシュウ☆ゾーとして生きることが大変でした。
月岡:カイは、元気いっぱいなキャラなので、楽しかったです。苦労したのはリクじゃないかな?(笑) (リクとは、役では双子だけど、役者としては最初は)赤の他人なので……どう双子感をだすか話し合いました。(トラクロの)3人でご飯を食べに行ったりして、徐々にグループ感が生まれたなあと。
橋本:三津谷くんの人柄がいいんですよね。3人の時間がすごく楽しくて、いい稽古が過ごせました。舞台上でも、そんな3人の関係性が表れたらいいですね。
――最後に、メッセージを!
米原:『SHOW BY ROCK!!』という爆発的人気の作品の初舞台化ということで、原作ファン、アニメファンに認められつつも、さらにそれを超越するミュージカルとして、続いていけばいいなと思います。ぜひ観に来てください!
三津谷:人気のあるアプリ、アニメということで、プレッシャーもありますが、舞台で楽しんで生きています。元気がないなと思ったとき、ぜひ観に来ていただけたら、一緒に元気になれる作品です。ぜひ一緒に、ペンライトをブンブンしてくれたらと思います!
写真=鈴木久美子
舞台『SHOW BY ROCK!!MUSICAL~唄え家畜共ッ!深紅色の堕天革命黙示録ッ!!』は2月16日までZeppブルーシアター六本木にて上演中。
レポート・文=荒川陽子 写真=鈴木久美子
日時:2016年2月11日(木・祝)~2月16日(火)
会場:Zeppブルーシアター六本木
出演者:シンガンクリムゾンズ:
米原幸佑 as クロウ、輝馬 as アイオーン、鳥越裕貴 as ヤイバ、滝川英治 as ロム
トライクロニカ:
三津谷亮 as シュウ☆ゾー、橋本祥平 as リク、月岡弘一 as カイ
石川誠也/吉田雄樹/高樹京士郎/野崎数馬/木村靖司
高木裕和/石丸隆義/丸山泰右 /中智紀