堀米ゆず子(ヴァイオリン) “2B”の大詰めは完璧な“名曲コンサート”
堀米ゆず子(ヴァイオリン) ©T.Okura
堀米ゆず子が2013年から続けてきた『J.S.バッハ/ブラームス プロジェクト at Hakuju』全6回がいよいよ最終回を迎える。
「たぶん私が一番多く弾いてきた作曲家がバッハとブラームス。バッハは背骨みたいにかちっとしていて、ブラームスはその合間を縫って感情のひだを表現するような存在。そして二人には独特のつながりがあります。よくバッハは対位法やフーガが難しいと言いますけど、絶対にメロディの作曲家なんです。それは学生時代に江藤俊哉先生もおっしゃっていたのですが、40年もたってようやくわかってきたこと。そして、そのバッハを研究して、ほとんどの曲で彼のモティーフを取り入れていたのがブラームス。この企画を通してわかったことです」
曲順の構成も特徴的なシリーズだ。五重奏や四重奏といったアンサンブル編成で始めて、各回の最後に独奏で、バッハ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」全6曲を1曲ずつ配置するという趣向。
「大きな編成で体力を使い果たした後に無伴奏って、やっぱり怖かったです。でもやってみたら、何曲か弾いて楽器が鳴ってきているし、お客さんも耳が慣れて、すうっと集中してバッハの世界に入っていける。企画としては大成功だったと思います。プログラミングっていうのは成功の半分なんですよね」
そのバッハの無伴奏全曲を新たに録音したCDも、オクタヴィア・レコードより3月に発売される。最終回の大トリはソナタ第3番を弾く。
「バッハの無伴奏の中で一番弾いているのが第3番のソナタだと思います。日本音楽コンクールでもエリーザベト王妃国際音楽コンクールでも弾いたし。かといって、ちっとも楽になってこない(笑)。本当に大曲ですよね。あんなにすごいフーガもありますし」
毎回のプログラムは、調性を基準に選ばれている。今回のソナタ第3番はハ長調の作品。そこから逆算して、ひとつ前にハ短調の「音楽の捧げもの」のトリオ・ソナタ、冒頭には変ホ長調(平行調)のブラームス「ホルン三重奏曲」を置いた。
「完璧に“名曲コンサート”。ホルン三重奏曲はめちゃくちゃ好きなので、最終回はこの曲から。こういう企画ができて幸せでした。これまでの共演者のみなさんにも『ありがとう』と伝えたいです」
「モーツァルトとバルトークも合うと思う」と、何やら楽しげな次を期待させてくれる発言もありつつ、まずは“2B”の大詰め! 共演はサボルチ・ゼンプレーニ(ホルン)、工藤重典(フルート)、リュック・ドゥヴォス(ピアノ)。頼もしい“援軍”も待っている。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)
3/17(木)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp