「ふじのくに⇄せかい演劇祭2016」ラインナップ発表会レポート
4月29日(金)から5月8日(日)にかけて、静岡で開催される国際的な演劇祭「ふじのくに⇄せかい演劇祭」(主催:静岡県舞台芸術センター〈SPAC〉)のラインナップ発表会が、22日に日仏会館(渋谷区恵比寿)にて行われた。
「美的=普遍的、ではない」という気づき
発表会の第一部は、SPAC芸術総監督の宮城聰氏による「フランス演劇との関わり」についての講演会が行われた。自らが主宰の劇団「ク・ナウカ」時代(1990~2007年)にフランスで公演した際、ただ単に“美しい作品”というだけでは、現地のシアター・ゴーアーには伝播していかないことを痛感したという話から、「観客内での対話を引き出す為には、思いつきではないイシュー(論点)を込める必要がある」ことを学んだと語った。そのことは、鈴木忠志氏(演出家・劇団SCOT主宰)の「美的=普遍的、ではない」という一言から得た気付きでもあるという。
今回の演劇祭で宮城氏が手掛ける『イナバとナバホの白兎』では、人類学者レヴィ=ストロース(※)による仮説(古事記にも出てくる「因幡と白兎」のエピソードと、北米先住民の伝承神話との関係性について)を“演劇的想像力で読み解く”というイシューを込めた作品になるという。
3か国による国際共同制作『三代目、りちゃあど』
発表会の第二部では、全作品をスライド紹介した後、日本・シンガポール・インドネシアの3か国による国際共同制作『三代目、りちゃあど』の演出家、キャストが登壇、作品にかける意気込みを語った。演出は、古典と現代の芸能の対話を通じてアジアの現代芸術に取り組む、オン・ケンセン氏(シンガポール国際芸術祭ディレクター)が務める。キャストには、歌舞伎俳優の中村壱太郎氏、狂言師の茂山童司師ほか、3か国の俳優が参加。3月の稽古開始をバリ(インドネシア)で迎えたという。なお、同作品は野田秀樹氏が『リチャード三世』を潤色し、1990年に「夢の遊眠社」で上演した作品だ。
左からオン・ケンセン氏、中村壱太郎氏(写真提供:SPAC)
『三代目、りちゃあど』は「ふじのくに⇄せかい演劇祭」での上演後、9月にシンガポール国際芸術祭、11~12月に東京芸術劇場、12月には国内4か所(熊本県立劇場、吹田市文化会館メイシアター、高知県立美術館、福岡市文化芸術振興財団)のツアーが予定されている。
静岡市街でのフリンジ企画「ストレンジシード」
今回の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」は「ふじのくに野外芸術フェスタ2016」との同時開催となり、静岡市中心部の駿府城公園や静岡市街地も会場となっている。街中でのフリンジ企画「ストレンジシード」では、プログラムディレクターにウォーリー木ノ下氏が就任し、カンパニーデラシネラ、FUKAIPRODUCE羽衣、CHAiroiPLIN、壱劇屋、スイッチ総研ら13組によるラインナップとなった。