『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 デラックス風味』なるせゆうせい・阿部丈二インタビュー

インタビュー
2016.4.5

2000年、月刊少年ジャンプから連載開始。現在もジャンプスクエアで大人気連載中の『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』。
昨年9月、不条理がかった一風変わったこの作品を舞台化し、大成功をおさめた、脚本・演出を手がけたなるせゆうせい。今年は新たに人気劇団キャラメルボックスより阿部丈二がゲスト出演!昨年の作品には登場しなかった原作の人気キャラクター松尾芭蕉を演じる。「ギャグマンガ日和って?」「松尾芭蕉って?」「阿部丈二出演って?」渦巻く数々の疑問を直撃!


「好き」は大事でしょ?

——このマンガを舞台化しようと思ったのはなぜですか?

なるせ 自分の生理的にあった、アホなものがいいかなと。原作は短編のつながりで、いじりがいがあるし、自分のセンスとすごく似てる部分があるからやりやすいなと思って。

——阿部さんはこのマンガをご存じでしたか?

阿部 ぼくはあんまりマンガを読まないので。読んだらめちゃくちゃおもしろかったです。
なるせ 誰もやらなそうだなと思って。誰もこれを舞台化しようなんて思わないじゃないですか。

——先が読めない展開ですし、1990年代のナンセンス演劇を思い出しました。

なるせ そういう演劇ね。今回は、笑いを狙った作品というよりは、一つ流れているお話があった方がおもしろいなと思っていて。実はラブストーリーなんです。何千年もの世紀を超えた壮大なラブストーリー。原作の『ギャグマンガ日和』には、ダメな男が振られるパターンがいくつかあって、それを軸に作ると話が進めやすい。だから、ラブストーリーを軸にして、飛び道具的な人物が出てくるとおもしろいかなと。キャラクターとして聖徳太子とか松尾芭蕉とかの人気者もいるし。

阿部 脚本を読んで、「なるせさん、この作品すっごい好きなんだな」と感じました。読んでると笑えるし、原作の世界観が変わらない気がするんです。センス、感覚があってる人が書いてるんだろうなと。本当にすごいです。だから信頼もできますよね。

なるせ 「好き」は大事でしょ?

——この作品への出演の話が来たとき、どう思われましたか?

阿部 原作を詳しくは知らなかったのですが、演出家がなるせさんなところに惹かれました。なるせさんはキャラメルのことをよく見てくださっていますし。ぼくの先輩が何度もなるせさんの作品に出ていて、現場でのなるせさんの居方とかを雑談で聞いていたので。そういう現場に行ってみたいなと思っていました。

なるせ 阿部君をキャスティングした理由は、まずは違う畑の人の方、2.5次元系の作品に慣れてない人の方がいいかなと。いい化学変化が起きそうな気がしていて。

——どんなふうにですか?

なるせ 2.5次元系の作品だと、キャラクターに重きが置かれがちなんですけど。この作品では、変だけどキャラクターの中に一つの流れているものがある。阿部君が演じる芭蕉は、自分の中ではすごい俳句を詠みたいんだけど、スランプで、しかもよくわかんないサディスティックな弟子に叱咤激励されるという。そういうところを引き立たせるために、ちゃんとした力のある役者さん、阿部君に演じてもらおうと考えましたね。あとは単純に阿部君にこういうものをやらせてみたいという欲求かな。キャラメル以外でやれるものを見てみたいという演出家としての思いもある。慣れてない仲間の中で、初めての現場だと相手のタイプもわかんないですしね。逆に稽古場でどんなことを考えているのか知りたいです。みんなちゃんとした芝居はするんだけど、キャラメルとは全然違うじゃないですか。頭おかしい人ばっかりだし(笑)。

阿部 現場の空気は、映像とかほかの現場とも比べても、特別な気がしますね(笑)。すごく刺激的ではあります。特に役者さんたちのテンションの高さとか、拡散の仕方とか。こういう現場ってなかなかないような。作品の力もありますし、なるせさんの独特のキャスティングにもよるのかなと思います。
 

阿部丈二

阿部丈二

役の命を伝えたいです。

——どんな松尾芭蕉になりそうですか?

阿部 お芝居だとわかってはいても、会えた感と言いますかマンガでは見られなかった一面、雰囲気とか、実際に居たらこんなふうだったかもしれないという錯覚かな、疑似体験を、役の命を伝えられたらいいなと思っています。すごいぶっ飛んだキャラだし、こんな人は実際に存在しないということは重々承知の上でなんですけど。できればライブで見たときに体温を感じるというか、居るということを感じて欲しいなと。そうでないとぼくら役者の意味がないですから。アウトプットの方法、見せ方に関しては、なるせさんの脚本と演出を信頼していますので。感情に嘘がない、そこに体温があるというのをなんとか伝えたいですね。こういう作品は、ぼくも初めてなので挑戦なんですけど、やっぱり基本はそこ、いつもと同じようにやりたいなと思っています。

なるせ 松尾芭蕉と河合曽良というのが人気キャラで。もうひと組、聖徳太子と小野妹子というキャラも居て、初演での評判はすごくよくて。流れているものを自分の中で作っているので、見ていて爽快といえば爽快。芭蕉とか聖徳太子はシリーズ物でずっとやってるし、なおかつ旅をしているキャラクターなので、そこらへんをうまく使えればいいよね。

阿部 掴みたいですね。ビジュアル似てる人、居ますよね。小笠原健君の曽良もすごい似てるなと思って。

なるせ 目つきの悪さとかね。


阿部 最初会ったとき、もっとほっそりとした印象を持っていたので、意外とごつくて気がつかなかったんです。でも顔が似てる!と思って。あの冷たい感じは秀逸ですね。

なるせ 目つきがね。目つきの悪さが重要だよね(笑)。

——キャスティングには見た目も重要ですか。

なるせ ポイントがあるので。そのキャラの雰囲気や空気が大事だと思います。阿部君のイメージはいい人でしょ? そいうい空気感が大事だと思う。そこがいいなという部分もあるし、相方の曽良役の小笠原君はドSな部分もあるし、その両方が空気感として大事。

——芭蕉はひどい目に遭うのですか?

なるせ ほとんどいじめられてます。

阿部 蹴られたり殴られたり(笑)、でも小笠原君には遠慮なしで来て欲しいですね。お客さんがリアルに心配しちゃうとエンターテインメントにならないけど、「あー、お芝居ね」というのもダメなので、そこらへんのギリギリの部分を狙って行きたいです。なるせさんも先日の稽古で「(つっこみとか身体を使うシーンで)遠慮とかしない方がいい」と言っていたので、ぼくもそう思っていたのでうれしかったです。

——阿部さんにとっていつもと違う作品ですね。

阿部 本当に挑戦だと思います。作品全体、物語全体を見たときに、自分が一番貢献できるポジション、スポーツと似てるのかな。このチームで勝つためには自分がどういうポジションにつけばいいのか考えるんですけど、今は役者さんたちとの関係を測っているところです。もちろん、監督、演出家さんが指示を出してくださるんですけど、自分で動いて見せるのが大事だと思いますので。

なるせ いろんな演出家がいて、いろんなやり方があると思うんですけど、自分はまず役者さんに自由に出してもらって、そこから交通整理をするタイプなので。出してきたものがおもしろかったりすると、なるべくその人のよさを引き出すためにはどうしたらいいかなというのを考えたりしますね。(決め顔で)役者の力を信じたい(笑)。
 

なるせゆうせい

なるせゆうせい



率先してどこまでアホができるかと。

——阿部さんに期待しているのはどんなことですか?

なるせ キャラメルのときの阿部君はいい役が多いから、いい男の感じでしょ? 今回はなんか残念な感じ、だらしない感じを真剣にやってるところを見てみたいな。30代後半になってけつ蹴られてスライディングする人はなかなかいないですから。若い人たちから見るともうベテランだから、率先してどこまでアホができるかという。狙ってではなく一生懸命だからこそ、出てしまう何かを見せて欲しい。それを率先してやれるようになると、みんなも刺激になるから。このカンパニーだとけっこう年長だよね?

阿部 多分そうですね。2~3人くらいしか年上の人はいないと思います。

なるせ そうなると陰のエースですよ。役者としてもそうだし、人間としてもエース。一応、主軸の鎌苅健太君がいろいろ物語的に振り回される存在ではあるんですけど。陰のエースというと、阿部君という存在が一つの指針ですよ。これからのね。

阿部 おー!っちょっと問題ですね(笑)。

——原作が短篇ギャグマンガで、登場人物たちの突飛なビジュアルから、異色な舞台かと思っていましたが、スタンダードな演劇作品作りとあまり変わらないみたいですね。

なるせ まじめです。大人だから。

阿部 真剣に作ってます。なるせさん独特の目、チョイスはあると思いますが、しっかりと作品に向き合っていますね。こちらが楽しんだらお客さんも楽しいんだというノリは全然ないみたいにぼくは感じています。勝負してくる若い役者たちも遊んでいるのではなく、役者として勝負してるのがすごく分かるし。そういうのが今、稽古場でぼくはおもしろいです。そんな若手の子たちが愛おしいですね。こんな出し方、自分は忘れてたというか。もうなかなか他の稽古場では見ないような。だからそれがお客さんに受けるといいなと思っています。

 

【プロフィール】

(左から)なるせゆうせい、阿部丈二

(左から)なるせゆうせい、阿部丈二


なるせゆうせい(左)
岐阜県出身。脚本家、演出家、株式会社オフィスインベーダー代表、シナリオ作家協会会員。97年、早稲田大学在学中に「劇団インベーダーじじい」を旗揚げ、脚本・演出を手がけ、トムプロジェクト新人脚本賞やパルテノン多摩演劇祭特別賞などを受賞。現在は映画、広告、マンガ原作など幅広いジャンルで脚本家として活躍中。

阿部丈二(右)
あべじょうじ○フィリピン・マニラ出身。俳優。2004年、演劇集団キャラメルボックスに入団。主役から三枚目まで魅力的なキャラクターを数多く好演。2012年、小説家・有川浩と演劇ユニット「スカイロケット」を旗揚げし、役者・プロデューサーとして参加。近年は外部舞台、映像出演も多い。なるせゆうせい作品には初参加。

 



〈公演情報〉 



『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 デラックス風味』
●4月6日~4月10日◎ AiiA 2.5 Theater Tokyo
脚本・演出◇なるせゆうせい
出演◇
鎌苅健太、根岸 愛(PASSPO☆)、西山丈也、長江崚行、宮下雄也、
増井みお(PASSPO☆)、真凛、磯貝龍虎、ボン溝黒、岡田地平、小野由香
酒井 蘭、飯山裕太 他
ゲスト◇阿部丈二、小笠原健

http://butai-gagmanga.com/


【取材・文/矢崎亜希子】
 

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