ドイツ・ルネサンス最高のエロティシズムに誘惑される「クラーナハ展」記者発表会

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2016.4.11
「クラーナハ展ー500年後の誘惑」チラシイメージ

「クラーナハ展ー500年後の誘惑」チラシイメージ

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透けるような滑らかな肌、誘うような視線ー16世紀の画家、ルカス・クラーナハ(父)が描くのは、特異なエロティシズムの中にエレガントな様式美を取り入れた魅惑の絵画。ピカソなど多くの近代芸術家にも多大な影響を与えた、その魅力にせまる日本初の展覧会「クラーナハ展ー500年後の誘惑」が、今年10月15日より上野の国立西洋美術館で開催される。今月4日、記者発表会が行われその全貌が明らかになった。

ウィーン美術史美術館ザビーネ・ハーク館長の主催者挨拶

ウィーン美術史美術館ザビーネ・ハーク館長の主催者挨拶

ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意》  1537年 個人蔵

ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意》 1537年 個人蔵

ドイツ・ルネサンスの至宝、初の日本展へ

ルカス・クラーナハ(父)は16世紀におけるもっとも魅力的かつ多彩な画家。本展ではその画業を、当時のドイツにおける思想や社会の状況と併せて、丁寧に紐解いていく構成となる。ウィーン美術史美術館と本展主催TBSとのパートナーシップのもと、オーストリア、ドイツをはじめとする世界10カ国から本展のために約100点の作品が集められた、史上最大規模のクラーナハ展だ。

ウィーン美術史美術館外観

ウィーン美術史美術館外観

日本では「マルティン・ルターの肖像画」を歴史の教科書で目する機会が多いだろう。冒頭にあるような魅惑的な裸体表現で有名な画家だが、一方で同時代の著名人たちの肖像画も数多く手がけ、宗教改革の激動の時代の証言者でもあった。

ルカス・クラーナハ(父)《マルティン・ルターの肖像》  1525年 ブリストル市立美術館 © Bristol Museums,Galleries&Archives

ルカス・クラーナハ(父)《マルティン・ルターの肖像》 1525年 ブリストル市立美術館 © Bristol Museums,Galleries&Archives

早くからその画力を認められたクラーナハは、自身の大きな工房で大量生産を行うなどビジネスの才も発揮。特徴的な様式美を息子や弟子に伝承し、長きにわたってクラーナハ芸術を広めていった。

ピカソ、マン・レイ、森村泰昌…近現代まで影響を与えるクラーナハ

また、日本ではまだめずらしい「古典と近代作品の併置」という展示方法へのチャレンジも本展のみどころのひとつ。ピカソをはじめとしたクラーナハ芸術に影響を受けた近現代の芸術作品を、大胆にも並べて見比べるというものだ。

オリジナルをコピーしていくことでイメージが増幅したり、読み替えを生んで新しい芸術になっていく。本展監修・新藤淳は「クラーナハをひとつのプリズムとして、乱反射していくイメージを伝えられたら」と語った。

大規模な修復、輸送困難を乗り越えて

宗教改革からちょうど500年の節目を迎えることもあり、近年クラーナハは再び世界の注目を集めている。そんな中、ついに日本でもそのベールを脱ぐこととなるが、そこには多くの苦難が待ち受けていたという。

クラーナハの作品はそのほとんどが板絵。板を支持体とする絵画は、カンヴァス画と比べて温度・湿度などの変化にデリケートに反応しやすいので、細心の注意を払って輸送・展示をしなければならない。今回のメインとなる作品《ホロフェルネスの首を持つユディト》も例外ではなく、本展のために大規模な修復が施された。

ルカス・クラーナハ(父)《ホロフェルネスの首を持つユディト》  1530年頃 ウィーン美術史美術館 ©KHM Museumsverband

ルカス・クラーナハ(父)《ホロフェルネスの首を持つユディト》 1530年頃 ウィーン美術史美術館 ©KHM Museumsverband

そうしてやっと日本への長い輸送に耐えうる準備をして、貴重な作品が私たちの目に触れることとなる。魅惑的な裸体を前に、自分の奥底を覗き込まれるような感覚をぜひ味わってみたい。

イベント情報
クラーナハ展―500年後の誘惑

会期:2016年10月15日(土)~2017年1月15日(日)
会場:国立西洋美術館
開館時間:午前9時30分~午後5時30分
毎週金曜日:午前9時30分~午後8時※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、2017年1月2日(月)は開館)、2016年12月28日(水)~2017年1月1日(日)
主催:国立西洋美術館、ウィーン美術史美術館、TBS、朝日新聞社
観覧料金:当日/一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円
前売/団体:一般1,400円、大学生1,000円、高校生600円

展覧会特設サイト:http://www.tbs.co.jp/vienna2016/

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