「あっと先生が描く、のんのんびよりの原点とも言える試行錯誤のマンガ「こあくまメレンゲ」」
©Atto 2014
いじられてうろたえる女の子を可愛いと愛でるマンガ「こあくまメレンゲ」
7月も終わりが近づき、夏アニメも3分の1が経過しましたが、みなさんはいかがお過ごしでしょう。私はのんのんびよりりぴーと4話で大変笑わせていただきました。今回のお話では1期にもあったホラー回で小鞠が慌てふためく姿が拝めたわけですが、非常に可愛かったですね。まあ、今回の話は割りと実際あったら某ホラーゲーム「SIREN」っぽい雰囲気で実際私も恐怖だと思います。今回この記事ではそんな自爆系残念少女が主人公のマンガ「こあくまメレンゲ」を紹介します。
「こあくまメレンゲ」とは2007年12月~2009年3月に渡って「月刊コミックアライブ」にて掲載されたあっと氏の漫画。魔界の王の娘である少女ルーチェは、世界征服に乗り出すも、まともな人間界や制服に関する知識を持たなかったばかりに逆に人間の春風に可愛がられたり春風の友人にいじられたりと散々な目に。本作はそんな魔界の少女と人間界の少女の交流を描いたハートフル学園ギャグコメディです。
侵略系ヒロインアニメといえば、他に2010年にアニメ化した「侵略!イカ娘」があります。ヒロインが侵略に来たのにも関わらず、いろいろな要因ですっかり人間界に馴染んで人間界で生活する点はどちらも変わりません。ですが、「こあくまメレンゲ」の主人公ルーチェと「イカ娘」の主人公イカ娘には決定的に違う点があります。それは、イカ娘は海を汚す人間に怒り人間界を侵略するという、明白な目標意識を持って人間界に現れています。結果的にはすぐに人間に懐柔されてしまうわけですが、侵略するという気持ちは持ち続けています。しかし、ルーチェは「魔界を統べる魔王の娘だから人間界を恐怖で満たそう」という、特に深い理由も無い上、その恐怖が「他人の家に落書きをする」といった小学生レベルのものです。イカ娘と比べてさらに低レベルの侵略者と言えるでしょう。実際に普通の女子高生である春風とひかげにあっさり返り討ちにあって懐柔されてしまいました。
このように、本作はそんなルーチェのつたない侵略行為(ほぼ人間界での生活を満喫しているだけ)を見て愛でるマンガです。ただし、ただし、その愛でる行為は純粋に可愛がるということではなく、いじってその反応を楽しむといった少し歪んだ愛情です。いじられて、もしくはテンパッて半泣きの女の子が大好きな人にオススメです。
ネタのチョイスやマンガ形式の変更など、試行錯誤でさらに面白くなっていく
本作は1話~4話までが4コマでその後は通常のマンガ形式になっています。4コマ時からルーチェの残念侵略者ぶりを愛でる意味では光るものがありましたが、正直なところ、どこか平凡で数ある萌えマンガの中に埋もれてしまう作品といった印象を受けました。しかし、通常のマンガ形式にしたことで、徐々にテンポの良いネタの応酬が心地よい作品になっていったと感じています。起承転結で4コマでオチをつける4コママンガ形式よりも、一つのテーマで多くのネタを詰め込み、最終的にオチをつける形式のほうが、このマンガには合っていたのかもしれません。
また、ネタも徐々に可愛いだけではないブラックなものや人の闇を感じさせるものを織り交ぜるなどして、工夫されています。特に顕著なものは、ルーチェの妹のピコがメインの話です。彼女はルーチェと違い、非常に残虐な性格をしているため、その話では、従者の悪魔であるマスコットのじいやが全弾入りロシアンルーレットを受けるなど、非常に悲惨な目に合います。その責め苦が非常に小気味良いテンポで行われていくことと、じいやのギャグ漫画体質のおかげで安心して笑わせてもらいました。このように、ルーチェの残念ジダバタ話の他にも色々なテイストの話を模索していたように思われます。
こうして色々な試行錯誤を繰り返された結果、後半にいけばいくほどネタの応酬が心地よく、面白い作品になっていきました。それだけに、この作品が1巻で終わってしまっていることが残念でなりません。彼女たちの日常をもっと見たかったという気持ちが私には強くあります。ですが、この作品での試行錯誤があったからこそ現在の「のんのんびより」があるのだと思います。この時、4コマからマンガ形式に移行していなければ、そして、この時さまざまなテイストの話を模索していなければ、癒やしから笑いまで色々なものを与えてくれる「のんのんびより」という作品は生まれていなかったと感じます。とはいえ、一度だけ「のんのんびより」2巻で復活した「こあくまメレンゲ」は少しテイストの違う笑いを提供してくれていたので、たまにでいいから復活してくれないかなと思います。