ヒトリエ 「木っ端微塵になるまで踊って」キャリア最大の新木場STUDIO COASTをダンスフロアに
ヒトリエ 撮影=西槇太一
2011年より活動を開始し、14年にメジャーデビュー。フロントマンであるwowakaの紡ぐスリリングで叙情的、かつ耳に残る歌詞とメロディ。シノダ(G)、イガラシ(B)、ゆーまお(Dr)という、強力な個性と実力を持つプレイヤーたちと描きだすダンサブルでディスコティック、かつ強靭なグルーヴ。それらが重なり、他には感じられない音色が絵画のように広がるサウンドを展開しているヒトリエ。今年2月には、2作目となるフル・アルバム『DEEPER』をリリースし、全国14カ所をまわるワンマンツアー2016 『one-Me Tour "DEEP/SEEK"』を敢行。その千秋楽となる東京公演が、4月29日新木場STUDIO COASTにて開催された。
ヒトリエ 撮影=西槇太一
バンド史上最大キャパシティとなる会場でおこなわれた公演。開場直後からオーディエンスでぎゅうぎゅう詰めのなか、会場にはサイレンのような音が響きわたり、やがて宇宙映画を思わせるようなSE(サウンド・エフェクト)へと変わっていく。そこにメンバーが登場し、最新アルバムのオープニングを飾る「GO BACK TO VENUSFORT」と「シャッタードール」を披露し、ショーの幕が開ける。彼らのスピード感満載のグルーヴに、観客は熱狂。前方へ流れる人の波が激しさを増していった。
ヒトリエ 撮影=西槇太一
そしてシノダの「全身が木っ端みじんになるまで、踊っていただきます!」という、(ヘヴィメタ風な)シャウトとともに、会場はさらにテンションを高めていく。「Swipe, Shrink」のうねるファンキーなグルーヴに会場は大きく揺れ、切れ味鋭いビートが特長の「ワンミーツハー」や「サークル サークル」ではフロア内にモッシュ・サークルが生まれるなど、歯止めの効かない盛り上がりっぷり。それにシノダは「これヤバくね?(オレたち)人気なんじゃね?」と、驚きの様子をみせていた。
ヒトリエ 撮影=西槇太一
続く「Inaikara」では、レイザーライトを駆使しそれまでとは異なるメランコリックな部分も表現。「なぜなぜ」ではwowakaが、ギターレスでどこかに思いをぶつけるような感情的なヴォーカルを披露。そして「フユノ」になるとwowakaはキーボードを駆使し、さらに繊細な心象風景を描くなど、美しい旋律で会場の空気をあっという間に陶酔的な雰囲気に変えた彼ら。すると、MCでwowakaが「バンドを始めてから、今まで決して楽しいことばかりじゃなかった」と、これまでの活動を振り返る。「苦しいこともあったけど、すべてを忘れさせてくれる景色がある。それがライヴ。自分が何かになることができると思うようになれた。あなたたちに生かされている。ありがとう」と心からの感謝の思いを伝えると。会場から惜しみない拍手が巻き起こる。バンドと観客がさらに強い心で結ばれたような気がした。そして、彼らが最初に作った曲という「カラノワレモノ」と、最新作に収録された彼ら曰く「最高にカッコいい」ナンバー「輪郭」を続けてパフォーマンス。曲の途中ではゆーまおが立ち上がってドラムを叩きつけるなど、4人の気迫のこもった、音楽に対する強い思いを感じるパフォーマンスであった。
ヒトリエ 撮影=西槇太一
彼らの真摯な音楽への思いを堪能した後は、シノダの「まだまだ踊れますよね?」というシャウトと共に、再び会場はダンス・フロア化。「後天症のバックビート」や「MIRROR」など、次々轟かせるスリリングなビートに観客は酔いしれ、本編ラストに披露した「トーキーダンス」では、冒頭のシノダの言葉ではないが観客は「全身がくだけるほど」のエネルギッシュなダンスをしていたような。
ヒトリエ 撮影=西槇太一
アンコールでは、本公演の模様がDVD & Blu-ray化され8月17日に発売されることと、自主企画イベント"『bAnd』vol.4"が7月15日に下北沢GARDENで開催されることを発表。そして、新曲の疾走感のある跳ねるビートが印象的な「ハグレノカラー」も公開! 最後は、メジャーデビュー曲である「センスレス・ワンダー」を披露。充実の2時間以上に及ぶステージだった。
ヒトリエ 撮影=西槇太一
重厚感、疾走感、そして躍動感……ヒトリエが持つ多彩な音楽世界に、一瞬たりとも気を抜くことのできなかった、今回のライヴ。wowakaは「(このメンバーとささえるリスナーがいる限り)もっといい場所に行ける気がする」と語っていたが、その通り。今後、彼らは何かとてつもない音楽的な宇宙を魅せてくれるような予感がした。
撮影=西槇太一 レポート・文=松永尚久
ヒトリエ 撮影=西槇太一
発売日:8月17日