『広島に原爆を落とす日』でこぐれ塾が初大阪公演
(左から)こぐれ修、永池南津子、田谷野亮、安座間裕子 [撮影]吉永美和子
「“前向きなマゾヒズム”と言うべき愛の極限を見せる作品です」(こぐれ)
「劇団☆新感線」旗揚げメンバーのこぐれ修が、自ら演出を務めるプロデュース企画「こぐれ塾」。今年1月に、こぐれが敬愛する故・つかこうへいの『広島に原爆を落とす日』を東京で上演したのに続き、本作で初めて大阪に上陸する。
『広島…』は、まだ原爆投下の衝撃も生々しい1979年に発表されたものの、厳しい批判を浴びて封印されたいわくつきの作品。1998年に新感線のいのうえひでのり演出、SMAPの稲垣吾郎主演で18年ぶりに上演され(そのツアーには広島も含まれていた)、改めて国家や男女の愛の極限を描いた傑作と認識された。この再演版では、物語の背景を説明するような加筆が行われていたが、こぐれ塾では初演のオリジナル脚本を使用している。
こぐれ塾『広島に原爆を落とす日』東京公演より
「初演をいのうえと観て“(演劇で)こんなことをやっていいんだ”と思って新感線を旗揚げしたので、僕にとっては特別思い入れのある作品です。とはいえ(主役の)ディープ山崎と、ヒロインの夏枝をやれる役者がいないと絶対できない。今回は田谷野と永池…特に永池がいるから“できる”と思いました」とこぐれ。いずれも全力のストレートを2時間近く投げ続けるような体力と、極端な愛憎を表現する演技力が必要とされる難役だ。「最初は差別的な言葉に馴染めなくて反感を持ちましたが、何度もやると不思議とすんなり受け入れられました。過激な愛や、戦争がいけないということなど、説明がない部分をいかに伝えられるか? ですね」(永池)「日本一多いんじゃないかというぐらいの台詞量があり、特にラストの10分近い長台詞は、稽古中に酸欠で倒れたほど(笑)。(初演の)風間杜夫さんを超えられるよう、鍛え直して頑張りたいです」(田谷野)。
こぐれ塾『広島に原爆を落とす日』東京公演より
最近は俳優業より、演出が面白くなっているというこぐれ。「役者に興味がなくなってきたので、(演出に専念するようになった)いのうえの気持ちがわかります(笑)。今は“こうやらないとつか芝居ではない”という演出や演技を残していきたいという思いが強い。若い役者を使って、つかさんの芝居を正しく伝えていく舞台を作っていけたらと思います」。
原石とも言える若い役者たちと、つかワールドの「原型」とも言える世界作りに挑戦するこぐれ塾。大阪でも熱い感動を呼ぶ世界を見せてくれるに違いない。
■場所:近鉄アート館
■料金:4,500円
■プロデューサー・演出・出演:こぐれ修
■出演:田谷野亮、永池南津子、小谷けい、岡田涼、中川拓也、林田葵、ちゃんてじょん、大西輝卓、安座間裕子、加藤亮佑、森崎正弘
■公式サイト:http://kogure.client.jp