「つかこうへいへのけじめをつけたい」松尾スズキが京都芸術大学の受講生らと挑む朗読劇『蒲田行進曲』取材会オフィシャルレポート到着
『蒲田行進曲』
10月19日(土)、20日(日)に京都芸術劇場 春秋座にて上演される朗読劇『蒲田行進曲』の演出を務める松尾スズキと主演の上川周作、ヒロインの笠松はるによるオンライン取材会が実施された。オフィシャルレポートが到着したので紹介する。
朗読劇で挑むつかこうへいの名作『蒲田行進曲』
京都芸術劇場がプロデュースし、舞台芸術の最前線を担う演出家・作家・俳優とコラボレートする本企画。今年は、2023年に舞台芸術研究センター教授に就任した松尾スズキの演出で、つかこうへいの名作『蒲田行進曲』を朗読劇として上演する。ヤス役に京都芸術大学の卒業生・上川周作、数々の舞台・コンサートに出演する笠松はるがヒロイン・小夏を演じる。稽古を控えた9月末、リモート取材会に3人が参加し、つか作品への思いや意気込みを語った。
松尾スズキ
松尾が初めてつかこうへい作品と出会ったのは18歳。学生演劇の『熱海殺人事件』を観て「セリフがすごく過激で、それまで観ていたお芝居と全然違って新鮮で刺激的。その時から芝居を始めてみようと思ったんです。でも、学生時代に1度だけ九州に来た『蒲田行進曲』が観られず、その後上京した時はつかこうへい事務所が解散。最後のチャンスを逃してしまったことが、ずっと心残りでした」(松尾)。
上川周作
作品の世界観に「強い影響を受けすぎ、敢えて遠ざけていた」という松尾は今年62歳。つかが亡くなった年齢となり「自分の中でつかこうへいへのけじめをつけたい」と朗読劇で挑むことに。作品はつかこうへい不朽の名作『蒲田行進曲』を選んだ。映画の撮影所を舞台にスター・銀ちゃんと大部屋俳優・ヤスの奇妙な友情、その間で揺れ動く女優・小夏の姿を描く物語。大学時代につか作品に出演経験のある上川は今回「一生懸命生きるヤスの姿にスポットライトが当たり、すごく勇気をもらえました。名も無き自分も人生で光る瞬間があるように思えて。今回そんな瞬間をお見せできたら嬉しいです」。笠松は「松尾さんがつか作品に衝撃を受けた様に、私は大学時代に松尾さんの『マシーン日記』に衝撃を受けた。『蒲田行進曲』の台本からはエネルギッシュなテンポ感や、ヒリヒリするような言葉の応酬による迫力と魅力を感じています。小夏の切なさに寄り添えるよう頑張りたい」と話す。
笠松はる
松尾は、つか作品を朗読劇でどう表現するのか。「自分の心の中でずっと思い描いてきたつかこうへいの世界を、今の時代に浮かび上がらせたい。そこに肉体が入ると、どうしても僕の色が強く出過ぎるので言葉だけで勝負したいなと。ヤスと銀ちゃんと小夏、3人の心模様を声の力で繊細にみせていけたらと思います。でも僕は、朗読劇はほぼ初めてなので、どうなるのかまだ予測がついていないです。それが冒険としておもしろい」。出演者には、京都芸術大学で、松尾の授業を受講する学生が参加する他、音楽はオリジナルの舞台と同様に生ギターを入れ、演奏は京都芸術大学の学生が担当する。
取材・文/高橋晴代
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