パリ 71年間の芸術がここに集結!『ポンピドゥー・センター傑作展』レポート

レポート
アート
2016.6.29
 girls Artalk

girls Artalk

画像を全て表示(15件)

『ポンピドゥー・センター傑作展   ―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで―』が東京都美術館で2016年6月11日(土)より開催中だ。パリの中心部に位置するポンピドゥー・センター珠玉のコレクションを集めた本展には、20世紀フランス美術を代表する巨匠たちの作品が集っている。

ポンピドゥー・センター 撮影:Yoshiko

ポンピドゥー・センター 撮影:Yoshiko

ポンピドゥー・センターは、1977年に開館した、美術館、公共図書館、パフォーマンス・映画上映用の施設などが複合した総合文化施設だ。その名前は、現代芸術を擁護し、本施設の建設を唱えたジュルジュ・ポンピドゥー大統領から名付けられている。芸術の波がNYへと流れた時代にあって、再びパリ芸術を発展させようとしたのが彼の狙いであったのだ。

ポンピドゥー・センターは、所蔵作品だけでなくその空間もすばらしかった。上階からは、パリ市街が一望でき、今ではフランスを代表する観光名所となっている。

ポンピドゥー・センターからの眺め 撮影:Yoshiko

ポンピドゥー・センターからの眺め 撮影:Yoshiko

ポンピドゥー・センターからの眺め 撮影:Yoshiko

ポンピドゥー・センターからの眺め 撮影:Yoshiko

 

さて、開催中の『ポンピドゥー・センター傑作展』で、まず興味深いのは『1年/1作家/1作品』という展示方法である。1906年から1977年にかけて毎年その年を代表する作家が1人セレクトされている。そして、その作家の作品が1つ選ばれており、また彼らの残した言葉も傍らに大きく書かれているのだ。それにより、作品を味わうことができるのに加えて、パリを生きた作家たちの息遣いをも体感することができる展示となっているのだ。

ⓒgirls Artalk

ⓒgirls Artalk

 

それぞれの時代背景、それぞれの作品、それぞれの残した哲学的な言葉。71年間にわたる、71人の71作品から、ほんの一部紹介しよう。

ラウル・デュフィ《旗で飾られた通り》1906年 ⓒgirls Artalk

ラウル・デュフィ《旗で飾られた通り》1906年 ⓒgirls Artalk

ロベール・ドローネー《エッフェル塔》1926年 ⓒgirls Artalk

ロベール・ドローネー《エッフェル塔》1926年 ⓒgirls Artalk

まずこちらは、ラウル・デュフィ《旗で飾られた通り》とロベール・ドローネー《エッフェル塔》。フランスの街並みやエッフェル塔をモチーフとした作品たちだ。ダイナミックな構図と色使いが、パリの華やかな歓喜に満ちた光景を思わせる。ラッパや人のざわめきも聞こえてくるようだ。

 

セラフィーヌ・ルイ《楽園の樹》1929年 ⓒgirls Artalk

セラフィーヌ・ルイ《楽園の樹》1929年 ⓒgirls Artalk

こちらは、守護天使のお告げで絵を描き始めたという女性画家セラフィーヌ・ルイの作品《楽園の樹》。ひときわ目をひく色合いで描かれているのが印象的だ。

 

オットー・フロイントリッヒ《私の空は赤》1933年 ⓒgirls Artalk

オットー・フロイントリッヒ《私の空は赤》1933年 ⓒgirls Artalk

ユダヤ人画家であるO・フロイントリッヒによって描かれた《私の空は赤》にある赤は、社会主義の赤を象徴している。彼は強制収容所でその生涯を終えたそうだ。作品を通じて、作家が生きた時代が透けてみえる作品となっている。

 

マリー・ローランサン《イル=ド=フランス》1940年 ⓒgirls Artalk

マリー・ローランサン《イル=ド=フランス》1940年 ⓒgirls Artalk

1940年はナチス・ドイツによるフランス占領の年だ。しかし、同年に描かれたマリー・ローランサンの《イル=ド=フランス》は、とても暖かく穏やかな優しいパステルカラーに包まれている。戦時下にあっても、女性らしさや愛らしさの追求をした画家だったのだろう。

 

『1年/1作家/1作品』という展示方法が提示するのは、どの作家であっても、自分が感じたものへの飽くなき追求と情熱があるということだ。また、作家たちの言葉を通じて「彼らがなにを感じていたのか」を、作品を通じて「どのように表現したのか」を、視覚的に知ることができる展覧会になっている。通常のアート展よりも色濃く、各作家からのメッセージを感じることができるだろう。

ⓒgirls Artalk

ⓒgirls Artalk

ⓒgirls Artalk

ⓒgirls Artalk

ⓒgirls Artalk

ⓒgirls Artalk

 

こうした数々の作品・言葉の中から、自分が共鳴するものを見つけることもできる。筆者が自分に近しいと感じたのは、アンリ・マティスによるこの言葉だ。

「私は色彩を通じて感じます。だから私の絵はこれからも色彩によって組織されるでしょう」。

アンリ・マティス《大きな赤い室内》1948年 ⓒgirls Artalk

アンリ・マティス《大きな赤い室内》1948年 ⓒgirls Artalk

この言葉が添えられていたのは、マティスの代表作であり本展のメインビジュアルにも使用されている《大きな赤い室内》。言葉や物事に、視覚的なイメージを用いて思考する筆者は、こういった作品を見ると強く共感してしまうのだ。ぜひ、本展を訪れる際は、シンパシーを感じられる言葉・作品を探してみてはいかがだろうか。きっと、激動のパリ71年間を彩った71名の作家のなかに、あなたの思いを代弁してくれる者を見つけられるだろう。

 
 

文=Yoshiko  撮影=新井まる

イベント情報
ポンピドゥー・センター傑作展   ―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで―

会期:2016年6月11日(土)~9月22日(木・祝)
会場:東京都美術館  企画棟 企画展示室
休室日:月曜日、7月19日(火) ※ただし、7月18日(月・祝)、9月19日(月・祝)は開室
開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室:金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで) 8月5日(金)、6日(土)、12日(金)、13日(土)、9月9日(金)、10日(土)は9:30~21:00
観覧料:
<当日券>一般 1,600円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
<団体券>一般 1,400円 / 大学生・専門学校生 1,100円 / 高校生 600円 / 65歳以上 800円
※団体割引の対象は20名以上
※中学生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください
シェア / 保存先を選択