Brian the Sun 地元・大阪で迎えた熱さもホーム感もたっぷりのツアーファイナル
Brian the Sun 撮影=Mami Naito
TOUR 2016「HEROES」
2016.7.10(Sun)梅田クラブクアトロ
今年6月1日(水)に、シングル「HEROES」でメジャーデビューを果たした大阪発のバンド・Brian the Sun。彼らは、同作を冠したツアーをリリース直後の6月2日(木)からスタートさせ、7月10日(日)ついにファイナルを迎えた。自身最大規模の全18公演となった今ツアー、その充実ぶりをうかがわせる梅田クラブクアトロでの公演をたっぷりレポートする。
会場はメンバーの地元・大阪。開場前から集まる人が笑顔なことに、その期待の高さを感じる。開演直前のSEは、グレゴリー・アンド・ザ・ホーク「Oats We Sow」で、ふわりとした雰囲気のなかスッと入ってきた4人が1曲目に選んだのは「同じ夢」。頭からしっとりと聴かせるこの曲を選ぶあたりはBrian the Sunらしい。“メジャーデビュー後初ツアー”、“ファイナル”のキーワードから“ドカン!”とスタートするだろうという予想を気持ち良く裏切られ、そしてエモーショナルなメロディと言葉にぐんぐん引き込まれる。さらに自然に温度を上げるように「グラストライフル」へ。ずしっと胸に落ちるようでいて、軽やかな流れも感じるナンバーに観客たちが漂いだすと、続けざまに「彼女はゼロフィリア」でテンションをいっきに上げる。ハンズアップでサビの「うるせぇ!」を叫びたくなるのも踊りたくなるのも、必然。“もっと!”という空気が会場を満たすなか、さらに続けて響きだしたのは「アレカラ」。これもまたキャッチーなサビでフロアが歌い出す。もう会場は一つだ。
Brian the Sun 撮影=Mami Naito
そして白山治輝(B/Cho)が、「今日は18本目ファイナルです!」と煽り、会場はお祝いムードに。白山がMCで「7月10日に梅田クアトロのステージに4人で立てるか心配だったんですが……」と言い、森良太 (Vo/Gt)が、「(小川)真司くん(Gt/Cho)は何回かステージから落ちてね」、すると白山が「僕は岩手でなまはげを見てからベースのトラブルが続出するという……」と、どんなツアーだったんだ?(笑)と思わせるエピソードを披露。このくだけた空気もファンが魅了される理由の一つだろう。そして、森が「田中(駿汰)くん(Dr,Cho)、熱いビートをお願いします」とドラムから始まったのは「Noro」。「DADADA…」のイントロ、「1、2、3、4」のカウント、ちょっと粘度のあるボーカルにゾクゾクが止まらない。このヨコのり感からアップテンポな「Suitability」へ。小気味よく刻むリズムに巻き込まれたフロアから「Fu~!」の歓声が上がれば、森が「夏の曲やります!」と「チョコレートブラウニー」へ。くるくる表情を変えるナンバーで観客を夢中にさせると、次の新曲では折り重なる音の心地良さやどこかメロウな匂いなど、一筋縄ではいかない彼ららしいサウンドを繰り広げる。さらに「シュレディンガーの猫」でもうひと騒ぎ。サビが頭をぐるぐると駆け巡り、メロディに身を委ね気持ちよく酔わされる。
Brian the Sun 撮影=Mami Naito
本人たちも気持ちよさは同じのようで、白山から「ステージから見て“この人広島におったな”“九州からこの人来たな”とかわかるんですよ。いろんな所を回って今日があるんだなって思うとすごくエモーショナルな気持ちになりました。ありがとう」という言葉が。またツアーを経て変わったことを発表することに。白山が「フリースタイル、俺は向いてないんやなっていうことがわかった」と話していると、ドラムとギターが鳴りだし、森と白山のフリーラップタイム開始。最終的には直前に用意されたピアノで森がベートーベンの「月光」を奏でるというオチに爆笑が起こる。小川が「一番楽しい、このコーナー」と言うように、この一連の流れはまさにワンマンライブのお楽しみ。観客も大満足だ。
ピアノが出てきたとなれば、後半戦は「はちみつ」「Absolute Zero」のバラードから。これまでと空気が変わり誰もが微動することなく耳を傾け、切なく透き通る曲の世界に迷い込む。すこしハスキーな歌声は、心にそっと跡を付けていくようだ。森が「十分しっぽりしたね」と、今度は「パワーポップ」でアゲモードにチェンジ。森の「タコヤキ!」、白山が「OBEY」といったコール&レスポンス対決(?)もあり、楽しさは200%。それでもまだまだ!とばかりに次は疾走感あふれる「Sunday」で会場をポップに弾けさせる。そしてここからさらにヒートアップ。人気ナンバー「神曲」が鳴りだせば会場はフェスさながら。観客は手を高く掲げ4人のロックを堪能する。そして「早鐘」ではエッジーなギターで煽り、「Sister」ではまばゆいフラッシュライトとメリハリのきいた曲展開でBrian the Sunワールドを全開に。さらに9月7日(水)にリリースされる新曲「Maybe」もお披露目。甘酸っぽさやどこかほっこりするムードを持つメロディアスなミドルテンポのナンバーに、聴く側は体を左右に揺らし楽しむ。曲後には森から「アニメ『甘々と稲妻』のエンディング曲になっておりまして……」という曲の紹介も。
Brian the Sun 撮影=Mami Naito
そしてライブは終盤戦。森が「この(曲前の)MCの持ってき方わかってなくて(笑)」と。すると、白山が「18本やっても(笑)?」と突っ込み、正直過ぎる告白に続いて始まったのが「HEROES」だ。なんせこの曲のリリースツアーなのだから観客も待ってました!の空気。勢いと広がりあるバンドサウンドに会場の空間が膨らんでいくよう。まさに最高潮という雰囲気のなか、今度は叫びのようなボーカルから始まる「白い部屋」で泣かせてくれる。強く優しい音はじわじわとくるボディブローのようだ。そして森が「僕は歌を歌う人間なのでずっと歌っていて、それは嫌いな人にも好きな人にも届くんです。僕の嫌いな人にも届いて、それでも感動を与えられるように作った曲です」と、ラストの「ロックンロールポップギャング」へ繋いだ。今のBrian the Sunの勢いと憤りと喜びと……。いろいろなものが詰まったロックは、圧倒的なパワーとなって心に届く。長くはないこのナンバーを全力でガッとプレイし、潔く4人はステージを去った。
この後腐れのない感じもかっこいいが、もちろん観客がそれを許すはずもなく、アンコールを求める手拍子が起る。そこはサービス精神旺盛なメンバーたち、再登場して延長戦へ。そして森が「このツアーでトートバッグ全然売れてないんですよ。買うて。それだけ言うとく」といい、白山が「小型犬ぐらいは入るから」と、本気とも冗談ともつかぬMCで笑わせる。そして秋の対バンツアーの決定も発表。これには喜びの声が上がり、さらに森が「(アンコールは)何やりましょ?」と投げかければ、会場とのやりとりも盛り上がる。なかには森の母親から「良太!」の声が上がるというハプニング(?)も。すると森が「あれ、おかん。めっちゃ目立ちたがりやねん、俺や俺、俺の出番、ちょっと黙っといて(笑)」と、地元・大阪ならではの光景が。
Brian the Sun 撮影=Mami Naito
どこか得した気分になると、森が「次のシングルのc/wに入る「しゅがーでぃず」をやります!」と、スピード感あるイントロがスタート。ハッピームードのある新曲に思わず体が動き出し、あっと言う間に観客をのせていく。それは4人も同様で、曲後、森が「いい顔で叩くよね(笑)」と田中を見ると、「かわい~」の声がフロアから掛かる。すかさず白山の「それレッサーパンダと同じやから(笑)」と突っ込みが入り、まだまだ爆笑MCが続く。田中の練習熱心な話、森家の母と犬の話、小川のコメント代わりのギターなどネタがつきない。
そこで白山が「そろそろ曲やりません?(笑)」、すると森が「次で最後にします!」と、ついにオーラス。森が最初の音を鳴らすと白山が「それでいいねんな?」の返答に、森は「大阪のみんなやったらついて来てくれるはず! 今回のツアー超楽しかったです。こんなこと言ったらウソくさいけど、このメンバーやから続いてきたんやな、このお客さんやからこのスタイルでできるんやなと思いました。ありがとう! でも、そんなみんなの期待を裏切って全然さわやかじゃなくて、良かったなっていう余韻が残らん曲やります」と「13月の夜明け」へ。怪しげなベースラインに重なるギター、細かに刻むドラム、“廻る…廻る…”のサビの歌声は脳裏にこびりついて離れなくなる。自身の言葉どおり、爽快感は皆無だが、このズシッとくる衝撃を残して終わることができるBrian the Sun。まさに見事!の幕引きだった。
撮影=Mami Naito レポート・文=服田昌子
Brian the Sun 撮影=Mami Naito
01. 同じ夢
02.グラストライフル
03.彼女はゼロフィリア
04.アレカラ
05.Noro
06.Suitability
07.チョコレートブラウニー
08.新曲
09.シュレディンガーの猫
10.はちみつ
11.Absolute Zero
12.パワーポップ
13.Sunday
14.神曲
15.早鐘
16.Sister
17.Maybe
18.HEROES
19.白い部屋
20.ロックンロールポップギャング
[ENCORE]
21.しゅがーでぃず
22.13の夜明け