生まれ変わった“青エク”がここにある! 舞台『青の祓魔師』京都紅蓮篇ゲネプロレポート
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
舞台『青の祓魔師』京都紅蓮篇が、2016年8月5日よりZeppブルーシアター六本木にて開幕。原作は、シリーズ累計発行部数1500万部突破のメガヒットコミック。すでに11年、14年にも舞台化された人気シリーズだが、今回はキャストを一新し、三たびのお目見えとなる。
初日を前に、このほどマスコミ向けの公開ゲネプロが行われた。原作でも特に人気の高い不浄王との死闘が、Zeppブルーシアター六本木でどのように再現されたのか――燐と雪男、そして仲間たちの壮絶な戦いを完全レポートする。
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
まずは原作を知らない方や、アニメ版や以前の舞台をご覧になったことのない方のためにも、改めて「青の祓魔師」について簡単に説明をさせていただきたい(ご存じの方はこのままスクロールして次のブロックへ)。
『青の祓魔師』は、祓魔師養成機関・祓魔塾を舞台に、悪魔と戦う塾生たちの活躍と友情を描いた学園ダークファンタジーだ。主人公は、奥村燐とその双子の弟・雪男。神父・藤本獅郎のもと、修道院で育てられた燐は、15歳になったある日、自分が「魔神(サタン)の落胤」であることを知る。この世界には、人間の住む「物質界(アッシャー)」と悪魔の棲む「虚無界(ゲヘナ)」が存在し、燐は悪魔の王・魔神と人間のあいだに生まれた子どもだったのだ。
燐を「虚無界」へと連れ去ろうとする魔神から燐を守るべく、養父・獅郎は戦いの末、落命。獅郎の仇を討つべく、燐は祓魔師になることを宣言。名門私立校・正十字学園へと入学する。祓魔塾で訓練を始めた燐の前に現れたのは、弟・雪男。物心つくころから悪魔が見えていた雪男は、7歳から祓魔を学び、13歳にして史上最年少で祓魔師の称号を獲得。講師として、燐を指導することになったのだ。
さらにそこに個性的な塾生仲間が加わり、燐は祓魔師目指して順調に課題をクリアしていくが、敵の襲撃を払うべく、魔神から受け継いだ青い炎の力を使ってしまい、仲間に「魔神の落胤」であることを知られてしまう。
本作は、そんなところから物語がスタートする。
三度目の舞台化となる本作は、これまでとキャスト一新。このことについて、ゲネプロ前の囲み会見で、演出家の西田大輔は「新しいこのメンバーと共につくる、新しい舞台版“青エク”になればいいと誠心誠意尽くしてまいりました。俳優たちがすごく作品を愛してくれて、自分にできること以上の頑張りをしてくれて、醍醐味のある舞台になったんじゃないかと思っております」と自信を見せた。
また、記者からの「演じるキャラクターになりきって意気込みを語ってほしい」という無茶ブリに、燐役の北村諒は思わず「そうだなあ」と思案の表情。周囲からせっつかれ、「青い炎出るけど熱くないんで、でも熱くするんで、楽しんでください!」としどろもどろに回答すると、雪男役の宮崎秋人が「こんな頼りない兄さんを支えたいと思います」と抜群のフォロー。優秀すぎる弟の切り返しに、北村も「完璧です!」と舌を巻いた。
過去に出演経験はあるものの、西田演出の舞台で北村が主演を務めるのは今回が初。西田は「今までとまったく違う心持ちで稽古場に臨んでいたんですね。もともと一生懸命でまっすぐなやつなんですけど、そこに責任が加わって、より大人に近づいて、より男前になってきた印象があります」と高評価。初めて一緒に仕事をするという宮崎に対しても「常にしっかりとしたものを提示しようという気概に溢れているんですね。本当にセンスのいい、これからの将来を担う魅力的な俳優だなと思います」と絶賛。宮崎は小声で「ありがとうございます」と照れながら礼を述べ、「(今のところ)太字でお願いします」とアピールし、取材陣を笑わせた。(宮崎さん、ご要望にお応えし、太字で表記させていただきました)
注目の本編も、主演の北村自ら「すごく熱い物語になっている」と胸を張った通り、序盤から熱気みなぎる展開が続く。
燐が「魔神の落胤」と知った塾生のメンバーは、戸惑いのあまりついよそよそしい態度をとってしまう。ひび割れた仲間の絆。さらにそこに正十字学園最深部に封印されていた「不浄王の左目」が何者かに奪われたという知らせが。燐たちは、京都出張所に封印されている「不浄王の右目」警護の増援部隊として、互いにモヤモヤを抱えたまま京都へ向かう。
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
主人公・燐を演じる北村は、その細い体を大きく使い、喧嘩っ早い燐というキャラクターをダイナミックに表現。そのシャープな眼差しとはちきれそうな笑顔は、つり目の三白眼を爛々と輝せて笑う燐そのものだ。感情をまるごとぶつけるようなエモーショルな演技で、序盤からぐんぐんとストーリーを引っ張っていく。
一方、対照的なのが雪男役の宮崎秋人だ。全体的に熱演が印象的な座組みの中で、ひとり抑制の効いた芝居で冷静沈着な雪男を体現。直情的な兄を呆れ気味で突き放すやりとりは、きっと原作ファンから見ても納得の再現率だろう。
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
ド派手なエンターテイメントづくりには定評のある西田演出は今回も健在だ。まず印象的なのが、舞台美術。可動式の階段と格子が縦横無尽に舞台を駆けまわり、躍動感を生み出していく。さらに、この動きに合わせて、予想外なところから人が出てきたり、場面が転換したりすることで、まるでマジックを見ているような驚きと爽快感が観客にもたらされる。最新の映像技術を用いながらも、こうした古典的な演劇手法をいくつも取り入れているところが、西田演出の醍醐味だ。
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
さらに、本作の劇的効果を大きく盛り上げるのが、挿入歌。アニメ同様、UVERworldの「CORE PRIDE」「REVERSI」、そしてROOKiEZ is PUNK'Dの「IN MY WORLD」が華を添える。激しいロックチューンに乗せて燐たちが戦う場面は、アニメファンならば鳥肌モノ。もちろんアニメ未見の人でも身体の奥底からアドレナリンが沸き上がってくるような熱狂を体感できるに違いない。
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
奮闘むなしく「不浄王の右目」まで奪われた燐たち。ついに、江戸時代に数万人を殺したという悪魔・不浄王が現世に復活してしまう。漫画の中で描かれたあの迫力の場面が、劇場でどのように再現されるのか。多くのファンが期待するところだが、ぜひここは実際に劇場に来て体感してほしい。空間全体を使った驚きの演出によって、きっと自分自身もその場で不浄王が立ち現れるのを目撃したような恐怖と臨場感を味わえるはずだ。
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
また、終盤にかけて見どころとなってくるのが、燐と不浄王との激闘、そして悪魔落ちした藤堂と雪男の対決だ。宮崎はこの日のために鍛えた鮮やかなガンアクションで、ゾンビのような藤堂と激突。しかし、その超人的な戦闘能力の前に、終始圧倒されてしまう。追いつめられた雪男の苦悶の表情は、ゾクリとするような色気がある。自分まで一緒に戦っているような興奮は、ライブならでは。雪男のトレードマークである二丁拳銃のさばきっぷりはもちろん、随所で発揮される宮崎の高い身体能力にも注目したい。
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
そして、クライマックスの燐と不浄王の激闘は、次元を超越した迫力が。目には見えないものが、まるでそこにあるように見えてしまう。そんな演劇本来の楽しさを思い出させてくれるような名場面だ。自らの能力をコントロールできず自信を失った燐が、仲間に支えられ、難敵へ立ち向かう姿は、力強く、美しい。きっとあなたも心の中で燐に応援のエールを送らずにはいられなくなるはずだ。
© 2016 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
舞台『青の祓魔師』京都紅蓮篇が2016年8月5日から8月14日までZeppブルーシアター六本木にて上演。この世界の平和をかけた前人未到のバトルの行く末をその目に焼きつけてほしい。
◆日程:2016年8月5日(金)~8月14日(日)
◆会場:Zeppブルーシアター六本木
<スタッフ>
◆原作・脚本協力:加藤和恵(集英社「ジャンプスクエア」連載)
◆脚本・演出:西田大輔
◆音楽:澤野弘之(「青の祓魔師」オリジナルサウンドトラック)
◆挿入歌:「CORE PRIDE」「REVERSI」UVERworld(gr8! records)
「IN MY WORLD」ROOKiEZ is PUNK'D
◆制作:Office ENDLESS
◆主催:舞台「青の祓魔師」プロジェクト(アニプレックス/イープラス/TOKYO MX/Zeepライブ)
奥村 燐:北村 諒
奥村雪男:宮崎秋人
勝呂竜士:山本一慶
志摩廉造:才川コージ
三輪子猫丸:土井裕斗
杜山しえみ:前田希美
神木出雲:加藤雅美
メフィスト・フェレス:鮎川太陽
霧隠シュラ:安枝 瞳
宝生 蝮:田野アサミ
志摩柔造:林田航平
志摩金造:松村龍之介
藤本獅郎:唐橋 充
勝呂達磨:光宣
志摩八百造:増澤ノゾム
藤堂三郎太:松風雅也