“憧れの人”中川晃教の前で柿澤勇人の社会の窓が…… ミュージカル『フランケンシュタイン』製作発表会見
ミュージカル『フランケンシュタイン』
ミュージカル『フランケンシュタイン』の製作発表会見が8月19日(金)都内にて行われ、本作に出演する中川晃教、柿澤勇人、加藤和樹、小西遼生、音月桂、鈴木壮麻、相島一之、濱田めぐみ、そして潤色・演出の板垣恭一が会場に姿を現した。
板垣恭一
本作はゴシック小説「フランケンシュタイン」を元に、韓国で舞台化され、初演以降ロングランを続けているミュージカル。ビクター・フランケンシュタイン博士は殺人事件に巻き込まれ命を落とした親友アンリを生き返らせようと自らの研究の成果を注ぎ込む。しかしそこから生まれたのはアンリの記憶を失った「怪物」だった。「怪物」は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓う……。本作ではメインキャスト全員が一人二役を演じ、1幕と2幕では全く異なるキャラクターが登場し物語を描くことでも話題の作品だ。
本作のオファーを受けたとき、2013年に東京グローブ座でやっていた『フランケンシュタイン』(東山紀之・坂本昌行W主演)、もしくはナショナル・シアター・ライブで上映されている『フランケンシュタイン』(ベネディクト・カンバーバッチ、ジョニー・リー・ミラーW主演)の方をイメージした出演者もおり、「……ではなく、韓国のミュージカルか!」と驚いたとのこと。
ビクター・フランケンシュタイン博士役の中川は、役どころについて「博士はやってはいけないことをやってしまった。そこには人間の倫理を覆してはいけないんじゃないか?という葛藤が見えるが、愛する仲間アンリを生き返らせたいという想いという“理由”がしっかりあったんだろうなあ」と博士の人となりを考えていた。ちなみに8月8日には中川のデビュー15周年記念コンサートで、一足先に本作の楽曲を披露したという。「壮大な音楽、物語も素敵。同じアジアの隣国で作られた作品だ、ということも魅力の一つですね」
中川晃教
中川晃教
そんな中川のことを、劇団四季時代から「憧れの人だった」と語る柿澤は、中川と共にビクター・フランケンシュタイン博士を演じる。「(中川のように)こんなに上手く歌を自在に操れるなら、人生が楽しいだろうなあ」と思っていたそうで、この日の製作発表で披露する歌の稽古のため、中川と一緒になったときには「隣で中川さんが音をとってるんだ……」と、緊張してしまい、その日の記憶がほとんどなかった柿澤。そして「さあ、がんばるぞ!」とふと下を見たら社会の窓が全開になっていた」という裏話を披露していた。
柿澤勇人
その一方で今年6月、自身が主演を務めるミュージカル『ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~』で、右脚アキレス腱を断裂し、大阪公演が中止になったことに触れ、「大千秋楽まで役を全うすることができず、辛く悔しい経験をした。たくさんの人に迷惑をかけ、また支えられて、今かろうじて歩くところまで回復した。本作で皆さんに恩返ししたい」と力強く語り、「手術して、傷口がフランケンシュタイン状態になった。傷口を見るとゾクゾクするので、この感情を本作で使っていけたら」と笑いに変えるくらいタフさを見せていた。
※柿澤さんの脚の具合ですが、壇上への昇降、歩く動きはまだ少し動かしづらそうでしたが、着実に回復している模様!しっかりリハビリして、完全復活をお待ちしております!
ビクターの衣裳、素敵ですよね!
ちなみに背中はこんなデザインになっていました。
さて、博士の親友であり、怪物になってしまうアンリ役をWキャストで勤める加藤と小西は、それぞれに韓国でこのミュージカルを観てきたそうで、加藤は「何とも言えない感情の高ぶりと、自然に涙を流す自分がいた。愛と憎しみと友情がある舞台。ビクターとの関係性などは、男が見ても惚れるというか……自分でも初めての感覚だった。今度は舞台上で自分がその役になるんだ、と思うと気持ちが高ぶった」と語り、小西も「言葉がわからなくても韓国ミュージカル俳優の身体から出てくるあの生命力は何なんだろう、と以前から思っていた。気持ちを強く持ち、命を大切に扱おうという想いがあると、当たり前のように人間は強くなるんだな」と感じ「本作の音楽を聴くと、とてつもなく壮大で、そこに乗っかる人の声や役柄が強く、自分が演じる二役のエネルギーのふり幅も大きく、やりがいがある作品」と本作を表現していた。
加藤和樹
小西遼生
博士を思い続ける婚約者を演じる音月は、「私は明るい人見知り。製作発表が決まった2、3日前から緊張がMAXです」と笑い、「数年前まで宝塚歌劇団で男性として生きてきたので、こんな本格的なドレスを着るのが初めて。なんかスースーするんですけど(笑)」と自身が身に着けているドレスを評すると、他キャストが「なるほど」といった表情で笑っていた。
音月桂
音月桂(スースーするというドレスをぜひご覧ください!)
ビクターの理解者である執事を演じる鈴木は、「一幕と二幕で役がガラッと異なるという舞台の場合、休憩時間は楽屋はどんな壮絶なことになっているのだろう……今から劇場の裏導線が凄まじいことになっていそう」と語り出すと、その様を想像して一斉に苦笑いを浮かべるキャストたちだった。
鈴木壮麻
濵田めぐみ、鈴木壮麻
相島は今でこそ映像の仕事が多いが、そもそもは三谷幸喜主宰の「東京サンシャインボーイズ」に在籍し、長く舞台で活躍してきた大ベテラン。だが「30年くらいお芝居をやっているが、今回は初めてづくし。ほとんどのキャストが初対面だし。(演出の)板垣さんも初めて。ミュージカルはやってきたがほとんどコメディ。(本作が上演される)日生劇場も初めて! こんな素敵な衣裳で製作発表をするのも初めてで……僕は30年以上何をやっていたんだ!」と勢いよく語りだすと、その独特の“相島節”に必死に笑いをこらえるキャストたちだった。
相島一之
相島一之、音月桂
現在、ミュージカル『王家の紋章』で古代エジプト王メンフィスの姉アイシス役で話題を呼ぶ濱田は、本作ではビクターの姉を演じる。姉弟だからこそ「三人目の“フランケンシュタイン”です」と開口一番笑いを誘っていた。
「ビクターが神の領域に触れてしまったことから精神、世界観が雪崩のように崩れていく様を客観的に見守る姉・エレンという立ち位置は、フランケンシュタインという作品にどのくらいの距離感で接していくべきか……姉のエレンはただのお姉さんという役ではなく、ある意味1幕では聖母のようにあったかい存在、2幕では真逆の冷酷な女。その極端な2役を歩みたい」とすでに濱田なりの演技プランが口から出てくると、キャストたちがその話に感心しながら聞き入っていた。
濱田めぐみ
濵田めぐみ、鈴木壮麻
会見の最後には中川と柿澤で劇中曲「偉大なる生命創造の歴史が始まる」を披露。詰めかけた約200名のオーディエンスはもちろん会場の壁がビリビリ反響するくらいの熱量で歌い上げていた。
加藤和樹、中川晃教、柿澤勇人、小西遼生
【東京公演】2017年1月8日(日)~1月29日(日) 日生劇場
【大阪公演】2017年2月2日(木)~2月5日(日) 梅田芸術劇場 メインホール
【福岡公演】2017年2月10日(金)~2月12日(日) キャナルシティ劇場
【愛知公演】2017年2月17日(金)~2月18日(土) 愛知県芸術劇場大ホール
■音楽:イ・ソンジュン
■脚本・歌詞:ワン・ヨンボム
■潤色・演出:板垣恭一
■訳詞:森雪之丞
■音楽監督:島 健
■出演:
中川晃教/柿澤勇人(Wキャスト)
加藤和樹/小西遼生(Wキャスト)
音月桂
鈴木壮麻
相島一之
濱田めぐみ
他