堤真一、松雪泰子らが人間の尊厳と愚かさを描く A・ミラーの傑作戯曲『るつぼ』ついに開幕

ニュース
舞台
2016.10.7
『るつぼ』 撮影:細野晋司

『るつぼ』 撮影:細野晋司

10月7日(金)Bunkamuraシアターコクーンにて、11月3日(木・祝)から森ノ宮ピロティホールにて、舞台『るつぼ』が上演される。

本作は、トニー賞、ピュリッツァー賞を受賞した『セールスマンの死』をはじめ、数多くの名作を世に送り出してきたアーサー・ミラーによる傑作戯曲。1692年にマサチューセッツ州セイラムで実際に起きた魔女裁判を題材に、集団心理の恐ろしさ、人間の尊厳と愚かさを描く。ミラー自身の50年代の反共産主義運動に対する批判を盛り込みながらも、物語に散りばめられた普遍的な人間の心理や欲望を鮮やかに描き、愛と良心についても問いかける。

ある晩、戒律で禁じられた魔術的な「踊り」を踊る少女たちが森の中で目撃される。その中の一人は原因不明の昏睡状態に。これは魔法の力か? 悪魔の呪いか? 不穏な噂が駆け巡るが、少女アビゲイル(黒木華)は「ただ踊っていただけ」と主張する。彼女の真の目的は農夫プロクター(堤真一)の妻エリザベス(松雪泰子)を呪い殺すことにあった。雇い人だったアビゲイルと一夜の過ちを犯したプロクターは罪の意識に苛まれ、以後、彼女を拒絶していたのだ。
プロクターに執着するアビゲイルは、敬虔なエリザベスを〈魔女〉として告発。周囲の少女たちも悪魔に取り憑かれたように次々と〈魔女〉を告発していく。悪魔祓いのためセイラムに呼ばれた牧師ヘイル(溝端淳平)は、自身が信じる正義のありかが揺らぎ始め――。

『るつぼ』 撮影:細野晋司

『るつぼ』 撮影:細野晋司

本作の演出を手掛けるのは、イギリスの名門「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)」が生んだ気鋭の演出家ジョナサン・マンビィ。マンビィは、同カンパニーの芸術監督グレゴリー・ドーランらに師事し、古典から現代劇まで幅広く精通する実力派だ。そしてマンビィのもとに、堤真一、松雪泰子、黒木華、溝端淳平ほか実力派俳優が集結した。

マンビィは、本作について「言語や文化の違いを超越して、私達の心にまっすぐに語りかける作品だということが分かりました。人間とは何か…人を愛する気持ち、憎む気持ちは普遍的であり、言語や文化、時代を超えて共感できるものであるということを証明している作品です」と語り、「素晴らしいキャストの皆様がいなければ決して成し得なかったこのプロダクションを、私は心から誇りに思っています。日本の最高の俳優達が集まったカンパニーで、私は彼らの才能、寛大さと情熱に圧倒されました。彼らは真実の感情を心に突き刺すことのできる俳優で、私は毎日感動させられていました。また、東洋と西洋がコラボレーションしたクリエイティブチームの素晴らしい作品を皆様にお見せできることにも、非常に興奮を覚えます」とコメントしている。

『るつぼ』

『るつぼ』

以下、出演者からのコメントを紹介する。

ジョン・プロクター役:堤真一
演出のジョナサン・マンビィ氏は、稽古の初期にワークショップを開いたり座学で作品の背景を学んだりというやり方でしたので、作品の共通認識を持って稽古に臨めました。
いよいよお客様に観ていただける日を迎え、ほど良い緊張感の中にいます。
人間の愚かさや欲望、罪の意識や不安感といったものが透けて見えてくる舞台にできればと思います。
今こそ、ぜひ観ていただきたい作品です。劇場でお待ちしております。

 

エリザベス・プロクター役:松雪泰子
初日を前に、今は緊張感と高揚感の中にいます。
稽古中は、ジョナサンと共にアーサー・ミラーの戯曲の世界を綿密に理解して表現する為の時間を沢山過ごしました。ジョナサンは、私達が理解し体現出来る道筋を示し導き続けてくれていました。
先輩方から沢山学ぶ事もあり、素晴らしい現場です。このカンパニーの一員として表現出来る事をとても幸せに感じています。
全員でしっかりと集中力を持って、セイラムに生き、そしてこの物語の本質を届けられる様にカンパニー全員で挑みたいと思ってます。

『るつぼ』

『るつぼ』


 
アビゲイル・ウィリアムズ役:黒木華
いよいよ初日です。
稽古の日々があっという間に過ぎていきました。
ジョナサンさんの稽古は毎日学びや、発見が多く、まだまだ探している最中ですが、観に来てくださるお客さまと一緒に、色々と見つけていければと思います。
共演の皆さまも本当に素晴らしい方ばかりですし、マイクさんの舞台装置、衣裳…この中にいられる事、また、この「るつぼ」という戯曲を一緒に創れる事が幸せです。
アビゲイルを含めた少女達も、(黒田)育世さんの刺激的な振り付けで力強く生きています。
その部分も楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

ジョン・ヘイル牧師役:溝端淳平
世界的に傑作と言われるこの戯曲は、稽古を重ねながら新しい疑問や発見が多々ありました。
遠いようで凄く普遍的なテーマが詰まっていると思います。今の僕たちが今の日本の方々に誠実に届けられればと思います。
ジョナサンはとても紳士で僕の役の素朴な疑問にも真剣に向き合ってくれました。
いい意味で日本的ではない俳優との距離がとても新鮮でありがたく、それがまたすべてを見透かされてるような怖さもありました。答がない演劇の世界で、すべてを否定せず肯定して能動的に取り組む姿勢は素晴らしい。欲を言うならもっとながく稽古をつけてもらいたかったです。
堤さん松雪さんをはじめ尊敬する大先輩の方ばかりだったので、
皆さんの胸を借りながら吸収でき、技術的なことや心情的なことも先輩方にヒントを
もらえるありがたい現場でした。

 

公演情報
シアターコクーン・オンレパートリー2016『るつぼ』
 
■日時・会場
【東京】2016年10月7日(金)~30日(日) Bunkamuraシアターコクーン
【大阪】2016年11月3日(木・祝)~6日(日) 森ノ宮ピロティホール

■作:アーサー・ミラー
■翻訳:広田敦郎
■演出:ジョナサン・マンビィ

■出演:堤真一 松雪泰子 黒木華 溝端淳平 ほか
 

 

シェア / 保存先を選択