アイドルからシンガーソングライターへ 井上紗希の初主催ライブ・公式レポートが到着
井上紗希
過去にはSO.ON projectやTokyo Cheer ② Partyの4期生メンバーとしてアイドル活動を行ってきた井上紗希。卒業後は、シンガーソングライターへ表現のスタイルをシフト。ソロ活動と平行する形のもと、secondrateのメンバー(Vo&G)としてバンド活動も行っている。
井上紗希は、ライブハウスと同時に路上でも積極的にライブ活動を実施。今年5月に行った初のワンマンライブでは250人を動員。9月に行われた『SXSW日本1次予選』を2位で通過。10月18日には本戦(http://1091m.com/japannite/)へ挑むことも決定している。
このたび、井上紗希が初の主催ライブ『Tokyo Inouemonakamagadekimasita Fes~ゆるっとぐびっとエモく行きまっせ~』を10月15日(土)に池袋RUIDO K3を舞台に開催。井上紗希のライブはもちろん、secondrate/酒井大輝/PARIS ON THE CITYが出演しイベントに華を添えてくれた。
井上紗希
ライブは、井上紗希のアコギのストロークをリードに幕を開けた。冒頭を飾ったのは、井上紗希自身の姿や心模様が等身大で響いた「可愛い人になりたい」。彼女の胸の内に潜む乙女な想いに触れていると、守ってあげたい気持ちになってゆく。なんてチャーミングな歌なんだ。「君の瞳に映る誰よりも可愛い人になりたい」と彼女は歌いかけてきた。もちろん観客たちの眼には、誰よりも可愛い人(井上紗希)が映し出されていた。
続く「one heart」はアコギの弾き語りからスタート。井上紗希の切々とした歌声へ、演奏陣が優しく寄り添ってゆく。哀切な想いを秘めたミッドメロウな楽曲が、サビへ向かうにつれ温かみを増してゆく。何より、みずからの意志が確かな力を得るごとに、彼女の歌声にも強い存在感がみなぎってゆく。何時しか井上紗希と観客たちが、「one heart 支えあって」の歌のように互いの鼓動を一つのハートとして重ね合あわせ、心と心で抱きしめあっていた。
今にも壊れそうな歌声を場内に響かせるように、井上紗希は心を泣き濡らすバラード「なんてね」を届けてきた。壊れそうな感情だからこそ、彼女は全身を震わせながらも吐きださずにいれなかった。涙を隠すのに必要なのは強がり?! 「なんてね」と彼女は強がることで、胸を揺さぶる痛い心を拭い去っていた。井上紗希は愛しい人に対する未練を歌いかけてきた。それこそが、恋を失いたくない女性の素直な恋心だと伝えるように……。
井上紗希
恋する乙女心がウキウキと爆発するよう軽快に演奏が駆け出した。バクバクとした片思いの恋心を、胸に秘めた本音の感情を、井上紗希はときめいた想いと一緒に「りとるがーる」に乗せ届けてきた。「KISSがしたいのに」と願う少女の気持ちから見えてきたのは、青春という言葉がピッタリなティーンズの妄想した恋心。いいよね、こういう胸をキュンとさせる感情って。
最後は、会場中の人たちとタオルを振まわし無邪気にはしゃいだ「ヒーロー」。触れている間中、心が弾むウキウキとした衝動を抑えきれなかった。身体を揺さぶり笑顔で騒いでいたかった。「たくさんのHAPPYが待ってるんだ」という言葉通り、この歌に触れている間中、身体に嬉しいくらいにパワーが沸き上がり続けていた。なんて気持ちをはしゃがせる歌なんだ。
熱狂を描きながらライブは終了……でも、心の躍動がこのまま収まるわけがない。
止まぬアンコールの声に導かれ、ふたたび井上紗希が舞台に姿を現した。「誰も友達がいない中一人で上京した私にとって、ファンの人たちは東京の家族みたいな存在なんです。何時も逢えるのってファンの人だったんですよ。本当はママからもらった「手紙」のことを書いた歌なんですけど。この気持ちはみんなにも当てはまるなと思って。言えない想いをこの歌に込めて贈ります」。井上紗希は、いろんな記憶を懐かしく呼び戻すように、言葉をひと言ひと言噛みしめながら「手紙」を歌いだした。「今度は私が守っていくから」。互いに本気で相手を求めているからこそ、井上紗希が「手紙」に綴った感謝の言葉が涙の腺を緩めていた。客席にいたすべての人たちが、彼女の告白をしっかり胸で受け止めていた。
井上紗希
「いつも頑張っているみなさんへ。自分が頑張っていることを私のまわりの人らは大切に思ってくれるけど、私のことを知らない人には関係のないこと。自分が正しいと思ってても、他の人にはそうじゃないこともある。それで傷つくこともあるけど、自分が信じたその気持ちを大切にして欲しい。みんなに少しでも一歩が届くといいなと思います」。
最後は、ふたたびバンドスタイルで「幸せの基準~頑張ってる人へ~」を演奏。夢に向かって走り続けている自分自身へ向けて。何より、この歌に触れた観客たち一人一人もその人なりの夢を抱いて明日へ進んでいるはずと彼女は受け止め、「今、信じている想いを胸に一緒に頑張ろうよ」と歌いながら、井上紗希は温かい歌声を通し会場中の人たちを抱きしめていた。温もりを持ったその思いやりが何よりも嬉しかった。
井上紗希の歌は、何時だって触れた人の心に光を灯してくれる。その電池が切れそうになったら、また彼女のライブに触れ、充電していけばいい。井上紗希もまた、ファンの人たちと触れ合うことで心に光を灯し続けている。その関係をこれからも続けていこうじゃないか。「これからもこの場所で歌い続けていきます」という彼女の言葉を信じてさ。
レポート・文=長澤智典