川平慈英と浦井健治が父子に扮するミュージカル『ビッグ・フィッシュ』日本版、豪華キャスト陣が製作発表記者会見に勢揃い!

　ティム・バートンが監督した映画版（2003年）で広く知られる『ビッグ・フィッシュ』が、ブロードウェイでミュージカル化されたのが2013年のこと。自らの体験談をとても現実とは思えないほど大げさに語る父親・エドワードと、その話を素直に聞けなくなってしまった息子・ウィル。そんな父子の関係を中心に描くファンタジー色に溢れた物語の魅力はそのままに、全編に渡り美しい歌とダンスで彩った舞台は、大勢の観客にさらなる感動をもたらした。そのミュージカル『ビッグ・フィッシュ』が、待望の日本初上陸を果たす。日本版の演出を手がけるのは、『ロンドン版　ショーシャンクの空に』『アダムス・ファミリー』『No.9―不滅の旋律―』『マハゴニー市の興亡』などで演出家としても高い評価を得ている白井晃。出演陣も川平慈英、浦井健治、霧矢大夢、赤根那奈（夢咲ねね改め）、藤井隆、鈴木福（りょうたとWキャスト）、ROLLYら、個性豊かな顔ぶれが揃った。11月１日、都内某所にて、抽選により選ばれた一般オーディエンスも約100名参加して賑やかに製作発表記者会見が行われたので、その模様をレポートする。

　劇中の印象的な場面を彷彿とさせる鮮やかな黄水仙を背景に、宣伝ヴィジュアルのイメージ同様に各自ブルーを基調にした衣裳に身を包んだ川平、浦井、霧矢、赤根、藤井、鈴木、ROLLYが登壇。ニコニコと笑みを交わしあう和やかな雰囲気の７名の姿に、この冒頭部分だけ撮影が可能だった一般オーディエンスたちのテンションもぐんぐん上がってくる。ここに、さらに演出を担当する白井が呼ばれると勢いよく指笛を鳴らして迎える川平。こうして、まずはこの日本版『ビッグ・フィッシュ』を演出する白井による挨拶から、会見がスタートした。

白井晃

「『ビッグ・フィッシュ』といえばティム・バートン監督の映画で有名ですが、このミュージカル版は映画とも少し違う、ステージならではのオリジナルと考えていただいていいかと思います。映画版よりもさらに父と息子の関係、それと同時に夫婦愛というものが非常に強調された物語になっていますし、またアンドリュー・リッパさんによる楽曲も楽しく素敵な曲ばかりで、ここにいるキャストのみなさんに思い切り歌っていただけるようなナンバーが揃っております。そして今回は川平慈英さんにエドワード、父親を演じていただくわけですが、年老いた姿と若きエドワードの両方をひとりで演じるため、年とって、若くなって、年とって、若くなって、と何度も繰り返しながら活躍してもらいます。まずは、そこがひとつの大きな見どころになるかと。あともうひとつ、僕の中での楽しみは、浦井さんの子供時代が鈴木福ちゃんだということ。この、何とも言えない感覚も本当に楽しみに思っております（笑）」

　また、それぞれに強烈な個性を放つ、魅力溢れるキャスト陣からのコメントは以下の通り。

川平慈英　（エドワード・ブルーム）

「今、ここでいきなり白井さんからプレッシャーかけられて、これはがんばらなきゃいけないな！とまた一念発起しました（笑）。今回のお話を受けた時、最初は「え？　東宝？？　日生劇場？？？」「ムム？とかクゥーッ！とか言っている僕のようなものが？」と思っていたんですが。だけどティム・バートン監督の映画、そしてブロードウェイのステージの映像を見てみるととてもファンタジックで本当に素晴らしい作品だったので「この大きな魚は逃してはいけない！」と。（ここで会場中から「おぉ～！」「うまいこと言う～」の声）　ムムッ！（笑）。それですぐ「やらせてください！」と言って、こうして参加させていただけることになりました。これが自分の代表作、そして勲章になるような作品になるように、この素晴らしいキャストの方々と一緒に楽しみながら、もがきながら、作り上げたいと思います！」

浦井健治　（ウィル・ブルーム）

「ティム・バートンさんの作品の中で『ビッグ・フィッシュ』が自分は一番好きなんです。『チャーリ―とチョコレート工場』とかで知られるティムさんの作品の中では異色だとも言われていますが、すごく深い作品で。最後、父親がなぜそんな風にしていたのかを悟る瞬間の息子の気持ちが僕にはダイレクトに伝わってきて、必ずと言っていいほど自然にホロリと涙が出てしまうんです。そんな作品を今回、白井さんの演出のもと、川平さん主演のミュージカルとして日本で上演するということで「ぜひとも出たい！」と思ったので、こうして参加できてとても光栄です。個人的な楽しみとしては、自分はけん玉をやっているんですが福くんもよくやるというので、今度ふたりでやりたいねとさっき話していまして。別にけん玉をやるシーンはないんですが（笑）、稽古場でがんばりたいと思います」

霧矢大夢　（サンドラ・ブルーム（エドワードの妻））

「私もこの『ビッグ・フィッシュ』の映画版は自分でもDVDを購入して持っていたくらいで、すごく大好きな作品なんです。まさか、その作品の登場人物にこうしてならせていただけるなんて！　しかもサンドラという、とても素敵な女性の役で。そしてこの素敵な共演者の皆様と今日お会いできて、もう早く稽古が始まらないかなと、今からワクワクしております。家族を温かく見守り愛する、素敵なサンドラを演じたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします」

赤根那奈　（ジョセフィーン・ブルーム（ウィルの妻））

「私も映画版を拝見して、とても美しくて素敵なファンタジーだなと思っていました。それをミュージカル化すると聞いて、どうやるんだろう？と不思議に思っていたんですが、いろいろな資料を見てみたらとても素敵な舞台になっていて。そんな作品に携われるなんて幸せだなと、今から楽しみにしています。とても個性の濃いキャストの方ばかりですごい化学反応が起こりそうなので、自分自身も負けないようにがんばりたいと思っています」

藤井隆　（ドン・プライス）

「私は吉本興業の所属ですがこの舞台を機に東宝芸能さんのほうに移籍する……というくらいの気持ちで（笑）、失礼のないようにと思っています。出演者のみなさん、スタッフのみなさん、白井さんにもきっとご迷惑をかけてしまうとは思いますが、ミュージカルを愛されているみなさんの邪魔をしないように、稽古場ではいっぱい楽しませていただきながら、勉強をさせていただき、いろいろなことを教えていただいて、本番では本当にちゃんとしようと思っていますのでどうぞお許しいただきたいと思います（笑）。」

鈴木福　（ヤング・ウィル）

「今回、幼いウィルの役をやらせていただきます、鈴木福です。僕は舞台のお仕事をするのが今回、初めてなんですけど。みなさんにいろいろなことを教えていただきながら、一生懸命がんばります！　よろしくお願いします！！」

ROLLY　（エイモス）

「ティム・バートン作品に惚れこみまして、数十年。『シザーハンズ』『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』そしてこの『ビッグ・フィッシュ』。私の人生において、これは最高に泣ける作品、ティム・バートン作品の中でも最も好きな作品でもあります。実を言いますと数年前にティム・バートン監督のプライベートパーティーで直接「あなたの作品の中では『ビッグ・フィッシュ』が最も好きだ」と告げたことが、自分の人生の中で最も栄光に満ち溢れた瞬間でした（笑）。この作品が大成功し、日本版『ビッグ・フィッシュ』に参加したということがまた私の人生の栄光の１ページになるよう、切磋琢磨してがんばっていきたいと思います」

さらにこのあとの質疑応答では「ありえないくらいに大げさな話をしたことがありますか？」という質問に、川平が28歳の時に乗った飛行機で、離陸直後にハッチが開きそうになったという嘘のような本当の話を激白して盛り上がったり、また座長としての意気込みを熱く語ったり。最後も「日生劇場というのは僕にとっては国立競技場、つまり聖地みたいな場所。素晴らしいゴールを量産できるように毎ステージ毎ステージ務めて、大勝利をみんなで収めたいと思います。お客様も、帰り道に心が軽やかになるような舞台にしたいですね。今、なかなか寛容になれない時代になっているので、この作品を観てくださって、自分の大切な人に優しくなり、なおかつ自分にも優しくなれるような、愛に満ちた気持ちになってもらえたらこんなにうれしいことはありません。ぜひみなさん、日生劇場に来ちゃっていいんです！！」という川平座長ならではの言葉で締めくくり、作品同様に終始あたたかな雰囲気に溢れた会見となった。

SPICEでは、この会見直後にROLLYと鈴木福の単独インタビューを決行！　その模様も近日中に公開予定、どうぞお楽しみに。

（取材・文：田中里津子　　撮影：岩間辰徳）