Awesome City Club、旧知の仲間never young beachと届けた前向きな気持ち

レポート
音楽
2016.12.1
Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

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Awesome Talks -Vol.6
2016.11.24  TSUTAYA O-EAST

Awesome City Club(以下、ACC)の自主企画シリーズ『Awesome Talks』、今年は大阪と東京にてツーマン形式での開催。11月17日の大阪・umeda AKASO公演には東京カランコロン、11月24日の東京・TSUTAYA –EASTにはnever young beachが招かれた。以下のテキストでは東京公演のレポートをお届けしたい。

TSUTAYA O-EASTのフロアへ入ると、真っ先に目についたのはステージ上の装飾。バルーンアートによる大きなナメクジ、UFO、ポテトフライ、ヤシの木などがまるでおもちゃ箱の中のような世界観を演出する。カラフルでポップな飾りつけには開演前からワクワクさせられた。

never young beach 撮影=古溪 一道

never young beach 撮影=古溪 一道

トップバッターはゲストのnever young beach。「never young beachです、よろしくー!楽しくやろう~」と1曲目「Pink Jungle House」を始めると、場内がじわじわと温かな空気に塗り替わった。ライブでのnever young beachは何というか、天然の包容力がものすごい。本人たちはステージ上でも飾らない様子なのだが、その空気で以ていつの間にか会場まるごと包み込んでしまっている感じだ。古くから伝わる日本のフォークソングと現代の海外インディーシーンのトレンドであるトロピカルなサウンドを掛け合わせたこのバンドのサウンドは、曲数を重ねていくほどに、緩やかに相手の緊張をほぐしていくようなムードがある。

基本的にはそんな調子でライブは続いたのだが、「あまり行かない喫茶店で」以降の後半戦では、サウンドの熱量がさらに上昇し、バンドの肉体性が浮き彫りになっていった。松島皓(G)と阿南智史(G)は立膝状態で向き合いながらガシガシと楽器を鳴らしあい、巽啓伍(B)の低音がバンドを前へ前へとドライブさせ、鈴木健人(Dr)によるビートがどんどん引き締まっていき、サウンドがどんどん分厚くなっていく中、叫ぶわけでもなく絶唱するわけでもなく、平熱を保ったまま浮かび上がるのが安部勇磨(Vo/G)の歌声だ。

「まっちゃん、みんなにあるでしょ? 面白い話」と安部が無茶ぶりをしたり、松島がそれに応えるでもなくチューニングしていたり、「never young beachはジェラート屋っぽいか、和菓子屋っぽいか」という謎の論争を繰り広げたり……とMCではゆる~い調子の5人。照れ隠しなのかそのテンションのまま、ACCのマツザカタクミ (B)やatagi(Vo/G)とは元々知り合いだったことや、時を経てステージで再会できることの喜びを話していた。そして「このあとの2曲は冬の曲です。“あ、never young beachって冬の曲もあるんだ”って気持ちで楽しんでってくれ~」(このタイミングでニット帽を被った松島、芸が細かい)と、「明るい未来」「お別れの歌」を演奏したところで、ACCへバトンタッチ。

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

転換が終わり、いよいよ本日のホスト・ACCが登場――というタイミングでステージ上では折れ曲がっていた黄色のバルーンがビヨーンと伸び、観音様が登場。「おおっ……!」とフロアがざわついたところでメンバーがオンステージだ。

「Children」で一面の手拍子を巻き起こしたあとは、そのまま「4月のマーチ」へ……とオープニングは1stミニアルバム『Awesome City Club』の冒頭を踏襲した流れ。ハンドマイクでステージ上を練り歩いていたPORIN (Vo/Syn)が「みんな、2016年お疲れ様! 今夜ぐらいはハメ外して遊ぼうぜー!」とフロアへ投げかける。ACCのライブには、まずはステージ上の5人自身が全身で音楽を楽しみ、それが自然とフロアへと伝染していっているような空気感がある。だからフロアを埋め尽くす人々のノリ方もバラバラだし、そうやってバンドとオーディエンスが有機的にコミュニケーションをとっているのだ。

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

「外は寒いけど温かくなれるような曲を……」と中盤では「Around The World」をはじめとしたミディアムテンポの楽曲を中心に披露。3rdアルバムのリード曲でありポップな印象も強い「Vampire」は、伴奏はモリシー(G/Syn)が弾くシンセのみ、というほぼアカペラ状態でPORINがサビのフレーズを歌う始まり方。それ以降も抑制を効かせたアレンジでしっとりと聴かせていく。“架空の街 Awesome City のサウンドトラック”をテーマに活動しているこの5人が生み出す音楽はリリースを重ねるたびに間口の開けたものになっていっているが、それと同時に、日常を生きる一人ひとりに寄り添うような“近さ”を獲得していっている。そんなACCの愛すべきパラドックスを堪能できた贅沢な場面だった。

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

大阪公演に出演した東京カランコロンも、この日のゲストだったnever young beachも旧知の仲であることに触れながら、「古くからの知り合い・仲間と人パンパンにできるイベントが打てること、めちゃくちゃ光栄です。やりたいことやれる場所って本当にこういう場所しかないから……楽しんでってくれよ、みんな!」とatagiが伝えた頃には、ライブはもう終盤。ユキエ (Dr)の瑞々しいビートを機に再びアッパーなモードに切り替われば、オーディエンスのハンドワイパーがフロアを彩った「アウトサイダー」、ツインボーカルが炸裂する中でテープキャノンも発射した「Don’t Think, Feel」によって会場のテンションが最高潮に。そこで新曲「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」が投下された。“2016年のデュエットソング決定版”と銘打った同曲は、ディスコファンク的なサウンドと男女の駆け引きを描く歌詞が掛け合わさり、“スタイリッシュなのにコテコテ”“どこかオシャレがすぎる”という絶妙なバランスによって成り立っている。間違いなく、これまでのACCにはなかったタイプの曲であり、同時にACCにしか鳴らせないタイプの曲でもある。相変わらず、彼らはとてもキュートな確信犯だった。

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

アンコールで発表されたように、来年1月25日には4thアルバム『Awesome City Tracks 4』(この作品が“Awesome City Tracks”シリーズの最終章なのだそう)がリリースされ、そのあとには全国ワンマンツアーも開催される。自称“日本一早いイヤーエンドパーティー”こと『Awesome Talks -Vol.6』が私たちにプレゼントしてくれたのは、“来年が待ち遠しいな”という前向きな気持ちだった。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

Awesome City Club 撮影=古溪 一道

 
セットリスト
Awesome Talks -Vol.6
2016.11.24  TSUTAYA O-EAST

●never young beach
0
1.Pink Jungle House
​02.ちょっと待ってよ
​03.なんもない日
​04.Motel
​05.自転車にのって
​06.どんな感じ?
​007.あまり行かない喫茶店で
​08.どうでもいいけど
​09.fam fam
10.夢で逢えたら
11.明るい未来
12.お別れの歌

●Awesome City Club
​01. Children
​02. 4月のマーチ
​03. GOLD
​04. Around The World 
​05. Vampire
​06. what you want
​07. Lesson
​08. エンドロール
​09. アウトサイダー
10. Don’t Think, Feel
11. 今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる 
<encore>
12. 涙の上海ナイト
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