『19th DOMANI・明日展』レポート 海外研修を経た若手芸術家の作品から、アートシーンの"明日"を感じる

レポート
アート
2016.12.16
『19th DOMANI・明日展』

『19th DOMANI・明日展』

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2016年12月10日(土)~2017年2月5日(日)まで、国立新美術館では『19th DOMANI・明日展』が開催中だ。『DOMANI・明日展』は1967年から文化庁が実施している新進芸術家海外研修制度の成果発表の機会として始まったもので、今年で19回目を迎える。

今回は2010年以降に研修を終えたアーティスト13名が絵画、写真、映像、インスタレーション、陶芸、メディア・アートなど多様な作品を発表。滞在先もヨーロッパや北米に限らず、アジアや南半球などへ広がりを見せてるなかで、「reconsidering Japan」をテーマに、2020年代の日本のアートシーンを支える人材と出会える機会になっている。

 

新進芸術家による多様な表現が一堂に

例年、天井高に恵まれた会場で様々なアーティストが海外研修の成果を最大限に発揮している『DOMANI・明日展』だが、今年は特に多様な表現形式が集まっている。

まず最初に出会うのは、絵日記のように背後に物語を感じさせる岡田葉の絵画作品だ。どこか親しみを感じさせる穏やかな色彩で描かれた風景や食べ物には、個人的に思い入れのある事柄やネガティブな感情を、フィクションである絵画の表面に変換させる岡田なりの主題と物体の距離感が潜んでいる。

 

奥に進むと、暗い部屋の中に南隆雄による映像作品が浮かび上がってくる。青や黄色で鮮やかに投影される映像は、地中海沿岸部を移動しながら撮影した風景のコラージュになっており、それぞれの場所に横たわる風景の変容がグラデーションとして描かれている。さらにその裏には電球の表面に掘られたシュメールの絵文字をはじめとする古代文字が、拡大鏡を通して映し出されている。並べられた6つの三角柱に双方から異なる作品が投影されることで、建築的なまとまりをもった構成となっている。

 

保科晶子の粘土を用いた作品は、時間や忘却をテーマに制作されたものだ。やわらかく柔軟な粘土だが、窯で焼くことで固く変化する。保科は子供の衣服をモチーフにした作品について、「過ぎ去る瞬間をかたどることを試みた」と語る。本作からは、時間の経過によって在り方を変える粘土の特性を、コンセプチュアルに転化するアーティストの丁寧な姿勢を読み取ることができよう。

 

展示の最後の部屋を占めるのは、金子富之によるアジアの神々を題材にした絵画だ。横幅6mを超える金子の作品については、まずその迫力に圧倒されることだろう。ヒンドゥー教の神々を軸に日本的なイメージが重なるこれらの作品には、土着的な香りがするとともに、宇宙という根源的なものへの関心も感じられる。さらに、さまざまな国で描き続けたという壁一面を覆うドローイングの数々は一枚一枚見応えがあり、異国の地を踏みしめてきた作者の息遣いが伝わってくる。

 

また、数ある出展作品の中でも、特に目を引くのは松井えり菜の絵画だろうか。日本を代表する現代アーティストの作品を多く蒐集する精神科医・高橋龍太郎による『高橋コレクション』でも収蔵されている松井だが、本展に並んだ自画像のシリーズ作品でもそのインパクトを余すことなく発揮している。また、自身が幼少期に憧れていた少女マンガと西洋絵画の共通性に着目して制作された作品では、松井らしいユーモアによって絵画の歴史を考察している。一度見たら忘れられない彼女の作品は、常に自画像の可能性を探求し進化を遂げていく彼女自身が投影されているといえよう。

 

参加アーティストによるトークも開催

会期中には参加アーティストによるトークイベントも予定されており、滞在中の出来事や作品の制作内容について語られるという。またゲストに同研修制度を受けた美術家の中村裕太を迎え、アジア・パシフィック圏内の魅力ついて話し合うスペシャルトークも行われる。展示のみならず滞在中の話を聞くことで、作品への関心をさらに高めてみてはいかがだろうか。

内覧会にて挨拶をする出展アーティストたち

内覧会にて挨拶をする出展アーティストたち

 

日本アート界の"明日"を見通す

新進芸術家海外研修制度は、作家にとっては海外で自身の関心を深めることができる好機である。そして、彼らが海外で吸収してきたものを国内で発表する『DOMANI・明日展』が継続されてきた歴史は、日本のアートシーンを形づくる上で大きな役割を担ってきた。これらの存在は、後続する若いアーティストにとっても大きな刺激となっていることだろう。

『19th DOMANI・明日展』では自身の制作のテーマを海外研修を通すことでさらに磨きをかけ、新たな作品に挑戦しているアーティストたちの試みが伺えた。2020年を前にあらためて日本を考える機会になると同時に、次代を担う芸術家の飛び立ちとなる本展からは日本のアートシーンの"明日"が見えてくるかもしれない。

 

イベント情報
未来を担う美術家たち 19th DOMANI・明日展  文化庁新進芸術家海外研修制度の成果

会 期:2016年12月10日(土)~2017年2月5日(日)
休 館 日: 毎週火曜日、2016 年 12 月 20 日(火)~2017 年 1 月 10 日(火)は年末年始休館
開 館 時 間: 午前 10 時~午後 6 時、毎週金曜日・土曜日は午後 8 時まで(入場は閉館の 30 分前まで)
会 場: 国立新美術館 企画展示室 2E
出演者:池内晶子、岡田葉、南隆雄、秋吉風人、保科晶子、松井えり菜、曽谷朝絵、三原聡一郎、山内光枝、今井智、折笠良、金子富之、平川祐樹
主 催: 文化庁、国立新美術館
制 作: アート・ベンチャー・オフィス ショウ
協 力: 日本航空、ジャパンマテリアル株式会社、株式会社中川ケミカル、株式会社カネカ
観覧料(税込): 一般 1,000 円(800 円)、大学生 500 円(300 円)
※( )内は前売および 20 名以上の団体料金
※高校生、18 歳未満の方(学生証または年齢のわかるものが必要)および障害者手帳をお持ちの方と付添の方 1 名は無料
※団体券は国立新美術館でのみ販売
※前売券は、展覧会ホームページ、ローソンチケット(Lコード:33931)、イープラスでお求めください (10 月 11 日(火)から 12 月 9 日(金)まで販売。以降は当日券を取り扱っております。手数料がかかる場合があります。)
※国立新美術館で開催中の他の企画展および公募展のチケット、またはサントリー美術館、森美術館 (あとろ割対象)で開催中の展覧会チケット(半券可)を提示された方は団体料金でご覧いただけます

展覧会に関するお問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会ホームページ:http://domani-ten.com/

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