鹿目由紀インタビュー 走りに走って、全国5都市を駆け抜ける! あおきりみかんの新作公演『ルート67』 

インタビュー
舞台
2017.1.15
 劇団あおきりみかん『ルート67』イメージ写真

劇団あおきりみかん『ルート67』イメージ写真


作・演出を手掛ける鹿目由紀の思い出の情景と憧れ、新たな挑戦が詰まった、疾走する演劇

昨年は『パラドックス・ジャーニー』で重力に逆らい、『僕の居場所』では劇場内に大量の土を持ち込んで洞窟を出現させた、鹿目由紀率いる名古屋の劇団あおきりみかん。さまざまな試みに果敢にチャレンジしていく彼らは、2017年第1弾となる今作でも「走る」ことをメインとした新たな表現に挑戦。昨年末に誕生した名古屋の「昭和文化小劇場」杮落とし公演として1月 13日(金)から『ルート67』を上演し、3月には東京・福島・豊田(愛知)・仙台公演も行う。

チラシ記載の鹿目の文章によれば、本作の発想は“高校時代の思い出の場所”にも起因しているという。その思い出とはどんなものか、タイトルの意味は? そして今作での新たな試みなどについて伺うべく、稽古場を訪ね鹿目から話を聞いた。

前列左から・青木謙樹、山口眞梨、篠原タイヨヲ、鹿目由紀 後列左から・花村広大、平林ももこ、松井真人、松野有加里、カズ祥、内山ネコ、椎葉星亜

前列左から・青木謙樹、山口眞梨、篠原タイヨヲ、鹿目由紀 後列左から・花村広大、平林ももこ、松井真人、松野有加里、カズ祥、内山ネコ、椎葉星亜

── まずこの『ルート67』というタイトルはどこから発想を?

よく映画とかにも出てくる「ルート66」っていうアメリカの国道(アメリカ合衆国の東西、シカゴからサンタモニカを横断する全長3,755kmの旧国道)があるんですけど、周りが荒野でズドーンと走ってる道のイメージを最初に持ったので、「66」から1個ずらして『ルート67』にしようと思ったんです。

── 道のことを書こうと思ったのは、何かきっかけがあるんでしょうか。

最初はとにかくずっと走ってるのがいいなぁと思って、走り続ける絵が最初に浮かんだので、道がいるよなと。それで道の名前がまずバーンと来たらいいんじゃないかと思って。道はふたつ出てくるんですけど、〈ルート67〉という現実のようでいて現実じゃない…近未来なのかパラレルワールドなのか、そういう世界観の話と、現実の〈並木道〉みたいなところが交互に出てきます。高校生の時にすごい好きな道があって、自転車通学の時にいつも通ってたんですけど、そこを通る時だけなぜかアメリカな感じがしたんです。それがすごく印象的で。今思い返すとさほどのことじゃないんですけど、自転車のままそこで立ち止まってずっと居たり、引き返してみたりとかよくしていたので、よっぽど気に入ってたんだなと。

── チラシに書かれていた、ピンクのネオンが美しい宝飾店のある道ですね。

そうです。たぶん田舎だからだと思うんですよね(鹿目は福島県会津若松市出身)。名古屋とかだと都会だからどこもネオンがいっぱいあるし、しかもそのピンクが外国っぽいネオンのような感じがしたんです。その話と似たような話が劇中にも出てくるんですけど、それが自分の中では憧れというか。

稽古風景より

稽古風景より

── 映画だったり何かの作品に触発された部分もあるんですか?

アメリカ映画で女ふたりが旅してる『テルマ&ルイーズ』とか、ロードムービーみたいなものが好きで。『パラドックス・ジャーニー』をやった時に花村(広大)君がすごく映画スターみたいだったんで、映画っぽくしたいなと思ったんですよ。その思いが結構強くなって、映画のモチーフを生かしながら舞台にするっていう作業に今興味が湧いているので、映画を観ているかのような視覚効果とかいろいろな臨場感を芝居で出来ないかなと。ロードムービーが好きなのと、走り続けている人がいるっていうだけでも物語が進みそうだと思ったので今回やってみたという感じです。

── 映画と演劇の違いという点では、どんな表現を意識されているんでしょう。

とにかく肉体が全てだと思うので、誰一人動いていないシーンがほとんどないようにしようと思っています。誰かが歩いてるか走ってるかどっちか。止まるっていうことは、とりあず大事な時以外はないことにしようかなと。惑星ピスタチオとかを観ていた世代なので『破壊ランナー』という作品が有名だと思うんですけど、そういう過去の作品で走っている物語を観て、じゃあ自分なりに「走る」ということをどうやって利用するかを今回はやってみたいなと。映画っぽいカメラワークのような、ステージワークみたいな感じのことも新たに編み出してみようと思っています。

稽古風景より

稽古風景より

── 今回は「昭和文化小劇場」(客席数300)の柿落としになりますが、それを意識した点などは。

最近はずっと「G/pit」の小さな空間で上演していたので、広いところでやれるっていうのが開放感があるというか。例えば、今までだったら狭い中で思い切りやるっていうことがメインになっていたと思うんですけど、今回は広めの会場をどれだけ使えるか考えるきっかけになりましたね。「シアターグリーン」は少し小さめの空間ですけど、他の都市も大きめの会場を回れるので楽しみです。

── 広い空間を生かした特徴的な演出も?

海外ドラマの『24ーTWENTY FOURー』ってあるじゃないですか。あれを意識してるんですよ。シーンが入れ替わる時に4画面並行で出たりする、ああいうのを実際やりたいなと思って。同時進行に見えるように上手くやりたいし、その間もずっと走ってなきゃいけないので結構大変なんですけど、なんかいいなって(笑)。

稽古風景より

稽古風景より

── 役者の皆さんの体力は大丈夫そうですか。

みんなだんだん強くなってきましたね。運動音痴な人も結構いたんで、大丈夫かなと思ってたんですけど、意外とイケてますね。自主練で走り込んだり、みんなアスリートみたいになってきて、ご飯が美味しいって言ってます(笑)。何を目指してるのか、最近わからないんですけど(笑)。

── 走る芝居というと、音楽なども激しい感じに?

そうですね。〈ルート67〉の話は結構激しめの感じです。こちらの話がメインになってくるんですけど、もう一方の〈並木道〉の方は女の子がひとり細い歩道をずっと歩き続けているんです。虚構の話のように展開していって、最終的にどうしてその女の子が歩いているのか、なぜ書いているのかが明らかになることと〈ルート67〉の話がリンクしていく。〈並木道〉の女の子は高校生で、気に入っている道路が無くなると言われて、彼女はそれに反対してるんです。で、〈ルート67〉の方も、「3日後にこの道が消滅する」と言われていて、レースに勝ってゴールを見つけることができれば道が消滅するのを防げるっていう話で、それが並行して交互に展開されていきます。あと、〈ルート67〉の方に出てくるのは、人間と車が融合した形という設定にしてます。だから車の名前とか、タイヤとかもモチーフにしていますね。

稽古風景より

稽古風景より

── 全体的に男っぽい感じの芝居ですね。

そうですね、男っぽくなりましたね。すごく知ってるわけでもないんですけど、なんか車も憧れがあるというか。自分も運転免許を取ろうかと思ってるのもあって、車をモチーフにしてみたいなと思ったんです。

── 舞台美術はどんな感じになりそうですか?

非常にシンプルな、どうとでも使える感じで考えてますね。道がドーンみたいな。見た目は一見、凝った感じではないと思います。道路の脇の看板とかお店とか、スピード感を表すために人間の力で何か立ち上げるというか。『ガラスの仮面』っていう漫画があるじゃないですか。その中に「一角獣」っていう劇団が出てきて、体をうまいこと椅子にしたりするみたいな場面があって。今回だから一番最初に、「一角獣を目指して」ってみんなに一斉メールを(笑)。「はぁ?」みたいな反応でしたけど(笑)。


俳優の肉体を酷使する「走る」という行為をベースに、人間と車の融合、映像表現の演劇化やスピード感の見せ方など、鹿目流のアイデアがどのように表現されるのか楽しみだ。尚、出演を予定していた川本麻里那は骨折のため名古屋公演は降板。代役は平林ももこが務め、元々の平林の役を近藤絵理が務めるという。3月からの他都市公演については、川本の故障が治り次第復帰予定とのこと(詳細及び今後の情報については公式サイトを参照)。

(取材・文:望月勝美)

公演情報
劇団あおきりみかん 其の参拾六『ルート67』

■作・演出:鹿目由紀
■出演:平林ももこ、山口眞梨、松井真人、カズ祥、篠原タイヨヲ、花村広大、みちこ、近藤絵理、真崎鈴子、松野有加里〈Wキャスト〉、ギャバ〈Wキャスト〉、内山ネコ(劇団んいい)、青木謙樹(劇団んいい)、椎葉星亜(劇団んいい)、鹿目由紀

<名古屋公演>
■日時:2017年1月13日(金)19:00 ギャバ、14日(土)14:00 松野・19:00 松野、15日(日)11:00 ★・15:00 ギャバ ※★は昭和区内の小・中学生を対象とした招待公演につき、一般販売はなし
■会場:昭和文化小劇場(名古屋市昭和区花見通り1-41-2)
■料金:前売2,800円、当日3,000円、大学・専門以下1,800円、高校生以下1,200円 ※学割は劇団・劇場予約のみ、当日身分証提示
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「伏見」駅下車、鶴舞線に乗り換え「川名駅」下車、2番出口から北へ徒歩2分

<東京公演>
■日時:2017年3月10日(金)19:30 、11日(土)14:00・19:00、12日(日)11:00 ・15:00 ※Wキャストは全日ギャバ
■会場:池袋シアターグリーンBOX in BOX THEATER(東京都豊島区南池袋2-20-4)
■料金:前売2,800円、大学・専門学生1,800円、高校生以下1,200円 ※当日は500円増し。学割はプレイガイド取り扱いなし、当日身分証提示

<福島公演>
■日時:2017年3月18日(土)14:00 松野
■会場:中央公民館多目的ホール(福島県郡山市麓山1-8-4)
■料金:前売2,300円、ユース(U23)1,500円 ※当日は500円増し。ユースはプレイガイド販売なし

<豊田公演>
■日時:2017年3月25日(土)13:00 松野・17:00 ギャバ
■会場:豊田市民文化会館 小ホール(愛知県豊田市小坂町12-100)
■料金:前売2,800円、学生1,200円 ※前売・当日ともに一律料金

<仙台公演>
■日時:2017年3月30日(木)19:00 松野
■会場:エル・パーク仙台スタジオホール(宮城県仙台市青葉区一番町4-11-1 141ビル6階)
■料金:前売2,300円、ユース(U-23)1,500円 ※当日券は500円増し、ユースはプレイガイド販売なし
 
■問い合わせ:劇団あおきりみかん 090-8075-0683 
mail@aokirimikan.com
■公式サイト:http://www7.plala.or.jp/lifu/#news002
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