小林幸子がラスボスと呼ばれネットで歌う訳とは?今だからこその本音をインタビューで直撃

インタビュー
音楽
2017.1.17
小林幸子

小林幸子

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動画投稿サイトへと「降臨」を果たし、若いネット世代からも”ラスボス”として親しまれるようになった、歌手の小林幸子。未だに投稿動画は再生回数を伸ばしミリオンを超え、さらに同世代のアーティストにはない試みを続ける彼女に、今だから聞けることを直撃した。なぜこんなにも小林幸子はチャレンジしつづけるのか。

小林幸子

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――ニコニコ動画で小林さんが公開した「サチコサンサチコサン」が、100万回を超える再生回数になっていますが、今すごく楽しんでやっていらっしゃるのが伝わってきます。

本当にそうで、それを感じてもらえた事だけで私は幸せです。今までは歌い手として、「あ、こんな世界があるんだな」と思っても、なかなかチャレンジできませんでしたが、「サチコプレミアレコード」という自分のレーベルを立ち上げた事によって視界が広がり、色々な発見がありました。スタッフと模索しながら「面白い」と思った事に積極的に取り組みました。

――キャリアを積むほど、本人に伝わらずに話が止まることが多いと思いますが、小林さんのチームは違うんですね。

私の耳に入る前に話が終わっていますよね。でも今はスタッフが全部話を持ってきてくれます。時々「えっ」と思うようなものまで(笑)。面白いか面白くないかわからなくても、時代が流れていく中で起きている事がたくさんあって、判断に迷う時はスタッフに「それって面白いの?」と聞くと「面白いですっ!」と即答するので「あなた達に乗った!」という感覚です。

――その一歩がすごいですよね。踏み出す勇気というか……。

皆さん“勇気”とおっしゃいますが、思い込みが過ぎると、新しい知識が入らないし、入れようという気持ちにもならないと思います。その思い込みをなくした事で、今は面白いですね。

――ご本人が楽しんでやっているから、観ている、聴いている側にも伝わってくるのだと思います。

最初の頃は、自分は楽しんでやっているのに周りからは「(ネットって)お金にならないでしょう?」と言われたりもしました。でもお金では買えない、ネットの世界の人達の出会いという大きいものを得ることができました。だってネットの人達は私の歌や演歌をほとんど聴いた事もないし歌ったこともない、そういう人達に「小林幸子? 面白いじゃん!」と思ってもらえる事、これがお金に変えられないものだと思います。

――ひとつの場所で成功すると、そこに安住したくなるものだと思いますが、でも小林さんはそこから変化を求め、外に出た事が大きいですよね。

そのままやっている方が楽なのかもしれませんが、変わっていく事も大事だと思うんです。演歌という世界の中では、ネットの世界に飛び出していったのは私が最初かもしれませんが、なんでも一番最初にやるという事は、本当に大変で疲れます。でもやりがいがあります。ダメだったとしても大変さは同じだと思います。50年間歌っていて思うのは、自分が“怖い”と思うもの=やっていない事にあえて挑戦しなければ、面白くないと思いました。

小林幸子

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――そういった思いで、ネットの世界に来て下さっているので、ネット民もみんな受け入れてくれるのだと思います。ネット民はそういう部分は敏感です。どんどん歩み寄っていっていますよね。

コミケもそうですが、色々な事をやってきてわかった事が、歌う方も歌を聴く方も、一緒なんですよね。私も楽しんで歌っていますが、みなさんが「ボカロの曲歌ってくれてありがとう」って言って楽しんでくれているんです。コミケに行っても「コミケに来てくれてありがとう!」って歓迎してくれて、CDを手に取ってくれるんです。だからどちらも参加者で、かつ、みなさんとっても素直なんです。

――純粋ですよね。歌に関しては相当のレベルを求められますよね? ネット上で歌っている人の中には、生半可なミュージシャンよりもうまい人がいて、でも小林さんのような圧倒的な人が来てくれて、みんな諸手で白旗が振れる感じがいいのだと思います。

みなさん全然年下ですが、だから「脳漿炸裂ガール」を「脳漿炸裂バーサン」って歌えるんです(笑)。最初に「脳漿炸裂ガール」といういい曲があるので歌ってみませんかと言われ、でもこんな早口の曲が歌えるのか不安でした。そうしたら「ちょっと替え歌にしてもいいですか?」と言うので「何でもOK!」と言ったら、出来上がった詞を私と目を合わさないようにスッと渡してきました。見たら「脳漿炸裂ガール」のはずが「~バーサン」になっていて……(笑)。

それで私が「面白いじゃん!」って言ったらみんなが「やった~!」って喜んでくれました(笑)。しかも歌詞の中の「マカロン」という部分が「羊羹」に変わっていたり……。

私の声をモチーフにしたボーカロイド・Sachikoとデュエットしているのですが、Sachikoのレコーディングは、長い間歌手をやっていますが、ああいうレコーディングは初めてでした。もう呪文のような言葉ばかりで(笑)。ボカロでは大抵の声が表現できますが、“こぶし”は表現できないです。これが私はできるので“Sachikobushi”という私の歌い方をデータ化したものが完成しました。

――元々のファンがいて、劇場版『ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』の主題歌、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』の主題歌で、初めて小林さんの歌に触れた人、そしてネット民と、ファンの新規開拓がきちんとできています。

狙っているわけでもなんでもなく、結果的にそういう事をしてきたんだなという感じです。最初はポケモンの事も知らなくて。でもコミックソングではなくて、オーケストラの演奏をバックに歌う曲でしたので、そのためにクラシックの声楽のボイストレーニングに行きました。

映画の担当者の方に「なんでポケモンと小林幸子なんですか?」と聞いたら、「調査をしたのですが、10代から80代までみなさん小林幸子さんの事を知っているからです。なので今回は小林さん以外考えられません」とおっしゃっていただいて、それがすごく嬉しかったです。でもその歌を覚えてくれている人がたくさんいて、以前中川翔子さんのイベントに一緒に出させていただいた時、しょこたんが「どうしても一曲一緒に歌いたい曲があるんです。「風といっしょに」(「ポケットモンスター~」主題歌)を歌わせて下さい」と言うので一緒に歌ったら、しょこたんは泣きながら歌っていて。それがきっかけで、彼女とコラボしました。

先ほども言いましたが、スタッフの判断が冴えているのだと思います。私にプロレスまでやらせますから(笑)。ボブ・サップと戦った後、リング上でパフォーマンスをするという企画で、なかなかリングの上で歌える機会なんてないので、楽しませていただきました。

小林幸子

小林幸子

――冒頭でもお伺いしましたが、ニコ動で公開したナユタン星人「エイリアンエイリアン」の替え歌「サチコサンサチコサン」が、ミリオン再生を超えましたが、今なかなかお目にかかれない数字です。「ロミオとシンデレラ」も話題になりました。「脳漿~」もそうですが、ボカロ曲は文字通り機械が歌っている難しい歌で、それを生であそこまで歌える人は本当にいないと思います。

今までやった事がない種類の、体中の細胞が切れそうな歌ばかりなので(笑)、でもそれが刺激になります。もうこうなるとライバルは機械です(笑)。「ロミオ~」を作ったボカロPのdorikoさんが「人が歌ってくれると思っていなくて作ってしまいました。速くて難しくてすみません」と言っていました(笑)。でもボーカロイド「Sachiko」を作れた事で、私が死んだ後も小林幸子の新曲ができるという事ですよね。これは嬉しいです。存在として残っていくと思うと、得したなと思います。

――小林さんのようなベテランが、先入観は関係なく、楽しい事をみつけてそこにどんどん向かっている姿が素敵です。

今63歳なんですが、もういいでしょ、面白い事だけやらせてもらっても、という感覚です(笑)。あとはひとの役に立てることができればいいです。

――これからもネットの世界でどんどん面白い事をやっていこうという気持ちは強いですか?

よく皆さんに「どこに向かっているんですか?」と聞かれるのですが、私もわからないんです(笑)。ネットの世界で楽しい事をやっていると、世界中の人々とつながる事ができるのも魅了的ですよね。台湾で行われたイベントに出させたもらった時「千本桜」を歌ったら、若い人達がものすごい盛り上がりで、あの人たちは私が演歌歌手だという事を知らないんです。「千本桜」を歌っている小林幸子なんです。これまでの経験からいえることは、今ある事を楽しんでやる事で、必ず違う形で広がっていくと思っています。これから先、ネットの世界で受け入れられなくなったとしても、すごくやりがいがありましたので、やったという事実は自分の中に残ります。

――ネットで色々な歌を歌って、演歌が改めて新鮮に感じる、ということは……?

私はいつも演歌も含めて、色々な歌を歌いたいと思っています。物心がついた時から、本当に色々な音楽を聴いていましたし、ナイトクラブでジャズを歌っていたりもしていました。そうやって自然に色々な引き出しが出来ていきました。だからどんな要望にも応えられると思うし、新しい自分を引き出してくれるどんなジャンルの曲も歌いたいですね。

――今、小林さんのコンサートに足を運ぶ人は、若い人が増えていると聞きましたが、やはりネットの世界の方にもいわゆる演歌・歌謡曲のコンサート観て欲しいという気持ちが強いですか?

親子で来て下さる方が増えたと思いますが、ネットの世界で色々やっているからといって、そっちの方たちを演歌の世界に引っ張ろうとか、その逆もしかりで、そんな事をやっていたら、純粋なネット民は見抜くと思います。だから最初からそこは考えていません。もちろんいいと思ってくれて、コンサートに来てもらえるのは嬉しいですが、要求する事ではないと思います。

小林幸子

小林幸子

 

編集・企画=秤谷建一郎  取材・文=田中久勝  撮影=三輪斉史

CD&書籍情報
ベストアルバム「SACHIKO THE BEST」
昨年の紅白歌合戦で歌唱した「千本桜」が初収録。
おもいで酒、雪椿、もしかしてなどのヒット曲から「千本桜」まで今の小林幸子がギュっと凝縮された一枚。ボーナストラックには、大人気ボーカロイド曲「桜ノ雨」をカバー。

SACHIKO THE BEST

SACHIKO THE BEST

『商品情報』
タイトル:「SACHIKO THE BEST」小林幸子
税込価格:¥3,000(2,778)
企画番号:KSPR-1008
絶賛発売中


『さちさちにしてあげる♪』
ボカロノベルのラスボス降臨!
小林幸子とボカロ楽曲がコラボレーションした奇跡の替え歌
『さちさちにしてあげる♪』がまさかのノベル化!!
 
さちさちにしてあげる♪

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ラスボス 小林幸子
著 石沢克宜(いしざわ かつよし)
イラスト 碧 風羽(みどり ふう)
四六判 400P
税別 1300円
全国の一般書店、Amazon、楽天をはじめとするネット書店でお買い求めいただけます。
 
あらすじ
10億円の当たりくじを嫁に奪われ、トラックにひかれて死んだ東山拓人(ひがしやまたくと)は、気がつくと異世界に転生していた。物に魂が宿った人々が生活しているその世界は、噛んだ相手を小林幸子の姿にしてしまう粘土人間「サチ」の大量発生によって窮地に立たされているという。自分を助けてくれた少女たちに報いるため、拓人はシングルレコードの少女アキとともに、世界を元に戻す鍵である遺跡「メガ幸子」を探す旅に出る――
 

 

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