LiSAが明かす「新曲とライブ」スペシャル・インタビューを大公開
LiSA
充実の夏を終え、幕張へ――LiSAの想いとは。
――近況というところで、LiSAさんの2015年の夏はいかがでしたか?
「この夏はフェスやイベントや色んなところに出させていただいて、たくさん夢が叶っています。今年はめちゃめちゃライブをやってて、日本武道館2DAYSから始まって、ライブハウスツアーもやって、イベントもたくさん出させてもらって、ず~っとライブやってる感じで。やっぱりライブが一番好きですし、自分たちが作った音楽を出せる場所なので、とても楽しいです。最近、2週間ライブやっていないだけで、「最近ライブやってないなぁ」と思いますからね(笑)」
――うずうずしてくると(笑)。やはり、LiSAさんにとってライブって特別な場所ですか?
「特別な場所です。普段、制作作業とかしてると内に篭っちゃって、良くないことも考えちゃうんですけど、ライブをやるとパーッと発散されて。同じようにライブで発散したいお客さんのために、何か自分が作り出せる物があるなら頑張ろう!と思いますね」
――今年の頭には日本武道館2DAYS、そして年末には幕張メッセでのワンマンライブが決定。ライブの規模がどんどん大きくなっていく現状をご自身ではどう見ていますか?
「自分たちが好きな物を、周りの人にたくさん認めてもらえている感じがあって。誰かに認められたくて音楽をやってきたわけじゃないんですけど、誰かの何かになったら良いなと思ってやってきて。自分たちが好きな物を他人に認めてもらうって嬉しいんだなと、今年になってからすごく感じていて。武道館が終わって、色んなところに呼んでもらったり、声をかけていただいて。それって自分が好きなものを他の人が認めてくれる、知ってくれてるってことだなと思った時、自分の大好きな友達をお母さんに紹介したら、「いい子ね」って言ってもらえた感覚にも似てるなと思って(笑)。自分が好きな物を認めてもらえるのって、すごく嬉しいなと思って。それが広がって武道館が出来たり、幕張メッセでのワンマンが出来たり……自分が自分の音楽を好きって気持ちだったり、誰かがLiSAの音楽が好きって気持ちだったりが広がってるんだろうなと思って、すごく嬉しいです」
――今年になってそう思えたというのは、LiSAさん自身の気持ちに変化があったんだと思いますが。例えば、去年の初武道館と今年の武道館2DAYSでは気持ちも違いました?
「全然違いました。去年は武道館に負けた気がしていたんですが、今年は武道館と友達になれた気がして。心強い仲間が出来たなっていう感覚でしたね。だから、自分自身も強くなったし、ライブがより楽しくなったし、武道館という強い味方も出来たので、強い自信になりました」
――今年の武道館は“PiNK&BLACK”とテーマを持って挑みましたが。大会場でのライブの楽しみ方も分かってきたのでは?
「そうですね。一年目の武道館はライブハウスの延長上で、いつもと同じライブを武道館でやりたかったんです。それで実際、武道館に立った時、ここで出来ることってもっとたくさんあるなと思って。次はライブハウスで出来ないことをやろうと思って、今年の武道館に挑んだんですが。武道館を2日間やったことによって、私は大きなところでやる楽しみを私は知ってしまって。味をしめてしまったんですね(笑)。そこで「もっと大きいところでやりたい!」という気持ちがどんどん強くなってきて、「幕張メッセでやりたい!」と思うようになったんです」
――武道館でこんなに面白いなら、もっと広い会場だったらもっと面白いに違いない!と。
「はい。会場が違えば全然違う作り方が出来るし、違う楽しみ方も出来るし。ここで何が出来るかな? ってことを考えることが、すごく楽しいなと思いました」
――ライブハウスと違って、大会場のライブだと「一番後ろのお客さんまで届いているのかな?」っていう不安や難しさはないですか?
「私はどちらかというと、それがすごい楽しくて。ライブハウスが相撲だとしたら、大会場はガンダムなんです(笑)。ガチンコでぶつかり合うライブハウスに対して、派手に技を決めて派手に武器を使う戦いが大会場で」
――わはは、しっかり魅せる戦いというかね。すごく分かりやすい例えです。
「やった!(笑) カッコいいモビルスーツ着たり、カッコいい武器を使ったり、なんだって出来るじゃないですか。ライブハウスは肌と肌をぶつけ合う感じや、ぐちゃぐちゃになる感じも含めてライブハウスの楽しみだと思うんですけど。大きな会場になると特効やモニタも使って、自分自身の力だけじゃなくて、色んな力も借りるから出来ること、伝わる物もあると思うんです」
――じゃあ、幕張メッセのライブに関しても、LiSAさんがどんどんアイデアを出して?
「そうですね、やりたいことはたくさんあるんで色々お話して。あとは大人の人にもたくさん協力してもらって(笑)」
――3rdアルバム『Launcher』を掲げてのライブハウスツアーはいかがでしたか?
「回を重ねるごとに曲が育ってるのは感じますし、ファンの方もたくさん聴きこんできてくれていて、遊び方がたくさん見えてきた気がします。私にとって、曲ってみんな可愛い子供たちなので。ツアーは子どもたちの行く末をみんなで話し合う感じで。この曲でどう遊ぼうか? この子はどの高校に入れようか? というのを一緒にライブで作っていく感じがしていて。回を重ねるごとに育っていって、『Launcher』の新曲たちはそろそろ完成してきている感もあって」
――実際にライブで披露してみて、意外な反応のあった曲もありました?
「ありますね。私、「こういうコールをして欲しい」というのはわりと決めてしまうんですけど、私が歌うはずだった箇所をみんなが歌ってくれて、言葉の意味が変わってきたり。その場で思いついたことをやって、新しい発見があったり、すごく楽しいです」
――それって、まさにファンと一緒に育ててる感覚ですね。そして、9月にはニューシングル「Empty MERMAiD」がリリース。こちらはどんな作品になったでしょうか?
「私の中では女性がテーマになっていて、女性って絶対に毒を持っていうと思っていると思うんですけど、今作では自分の見せられない“毒”を描きたくて。あまり人には見せられない陰の部分、人に否定されちゃうような感情を私が許す、肯定する曲にしたいと思って。自分の毒の部分を言葉にして歌に乗せることで、肯定したいと思ったんです」
――なるほど。僕はこの曲にすごい痛みを感じたんですが、LiSAさんはそれをさらけ出すことで肯定して受け止めようとしていたんですね。
「私は痛みを感じた分、人の痛みも感じてあげられると思うので。それを否定するんじゃなくて、肯定してあげられる曲があっても良いと思ったんです。そこでマーメイドってハッピーなイメージがあるんですけど、結果的には王子様を奪えなくて泡になって消えてしまいますよね。それってすごく悲しい物語に聞こえるんだけど、彼女が本当に不幸だったのか?って考えると、好きな人のために死んでいったことが本当は幸せだったのかも知れないと思って。ハッピーエンドかバッドエンドかは、人が決めることじゃないと思ったんです。だから、人に否定されるような感情も正しいか間違ってるかは他人が決めることじゃなくて、自分の価値観が決めることで。世間一般からは否定されちゃうような感情も、自分自身が肯定してあげるものになれば良いなと思って」
――逆に他人が肯定してあげることで、報われることもあるかも知れないですしね。そういったテーマは、曲を聴いての発想だった?
「いえ、今回はシングル3曲通して“女の毒”をテーマにしたかったんです。というのも、LiSAってポップで前向きなイメージがあると思うし、そういう部分をここまでで作れてきたと思うんですけど。よりハッピーな部分が人に届けば良いなと思った時、自分の黒い部分をさらけ出すことでハッピーな部分が際立って見えればと思ったんです」
――なるほど。でも、自分の黒い部分を出すのって、覚悟もいったと思います。
「ここまで積み重ねてきた上でこれを出しても、今なら誤解されないと思いました。そこで今回、女性が歌ってカッコいいメロディが欲しくて、UPLIFT SPICEのYOOKEYさんに曲を書いていただきました。女性ボーカルで自分たちのやりたいことを貫いているUPLIFT SPICEは昔から大好きで、今こそ彼女たちの音楽をもっと知って欲しいし、それが私が出来るのならばやりたいと思ったんです」
――出来上がってきた曲は満足出来るものでしたか?
「最高ですよ! 超カッコいいです。今、ライブでもすでに演奏してるんですけど、最初からみんながめちゃくちゃノッてくれたんで、こんなこともやりたいなってイメージも浮かんでいて。ライブの振り幅も広がった気がしますし、これを幕張で歌うんだったらって考えても、やりたいことがいっぱい浮かびますね」
――レコーディングはいかがでしたか?
「タイアップの時はその世界を崩さないように考えるんですけど、ノンタイアップだからこそ出来ることもたくさんあって。今まで、こういう楽曲や歌い方って、アルバムやカップリングにひっそり入れてたんですけど、シングルで表立って出来る機会だったので、思いきり振り切って歌いました。だから、難しかったというよりは、開放された感じの方が近いかも(笑)」
――作品にしてもライブにしても、自分のやりたいことが思い切り出来てて最高ですね。
「そうですね、めちゃくちゃ楽しいです。また、大事な曲がひとつ増えましたね」
――幕張でのライブが決定した時の気持ちはいかがでした?
「「私、すごい欲張りだな」と思いました。武道館をやった後は早くライブハウスツアーがやりたいと思ってたのに、ライブハウスツアーをやってたら、大きなところでやりたいと思ってしまって(笑)」
――人ってそんなもんですね、すぐ無いものねだりをしてしまう(笑)。いま見えている幕張ライブのビジョン、やりたいことはありますか?
「今回、“メガスピーカー”とタイトルが付いていて、「大好きな音楽を大きな音でみんなで楽しむ」っていう“メガなスピーカー”って意味もあるんですけど。「メガな未来をみんなでスピークする」って意味も含まれていて。会場にいるみんなと「俺たち、こんな楽しいこと出来ちゃったけど、次はどんな楽しいことしようか?」って、音楽を通じて対話が出来ればいいなと思っていて。未来にワクワクしちゃうような空間が作れればいいなと思っています」
――まだLiSAさんのライブを見たことない人、初めて見る人にメッセージを送るなら?
「私は自分の好きな音楽をメガなスピーカーで思い切り楽しめる場所って、なかなかないと思ってるんで(笑)。自分たちの大好きな音楽を大きな音で開放的に聴ける場所は限られてると思うんで。好きだって気持ちがあったらぜひ遊びに来てもらって、その気持ちを開放して下さい! いつも一人で聴いてる音楽も、みんなで楽しんだらトリコになると思うし、そこに風景や想い出が重なることでもっと好きになると思うんで。行こうか悩んでる人はぜひ遊びに来て下さい」
インタビュー=フジジュン 撮影=上飯坂 一