大坂文化の”華”を描く『没後70年 北野恒富展 なにわの美人図鑑』
「はんなり」。その言葉を耳にすると、女性の着物姿や、淡くて温かな”ほわっ”とした色が思い浮かぶ。大阪画壇で明治から昭和にかけて活躍した画家・北野恒富の展覧会が、あべのハルカス美術館で開催されている。没後70年、この大阪での展覧会は初めてとなる大回顧展。金沢で生まれ、画家を目指し大阪へ来たのは17歳の時。新聞社で挿絵を描く彫刻師として働く傍ら、独学で絵画を研究し、展覧会にも積極的に出品し、大阪画壇の中心人物にまでなった人物である。約180点の作品を観ながら、北野恒富に迫ってみよう。
「画壇の悪魔派」と呼ばれ
「美人画で有名」な恒富だが、展覧会場に入って見渡すと、どの女性像も、ただ優しく、美しいだけではない秘めた空気を纏っている。彼の描く女性の眼は独特だ。モナリザのように鑑賞者と目が合う作品は少なく、少し上目遣いの白目が多い描写からは、ゾクッとする強さを感じる。
≪鏡の前≫大正4年(1915) 滋賀県立近代美術館
≪鏡の前≫という作品をみてみよう。着物の黒と帯の赤が印象的であり、またこの女性の体形も浮世離れしている。後期に出展される≪暖か≫という作品は、赤い襦袢に黒帯。≪鏡の前≫と、≪暖か≫は、「赤と黒の印象」を計画した作品なのだ。アイデアも、実際の作品を前にしても、恒富のセンスと、切れ者であったことを十分に感じることができる。
≪暖か≫大正4年(1915) 滋賀県立近代美術館 ≪鏡の前≫と対に描かれた作品
≪淀君≫大正9年(1920) 耕三寺博物館
その代表作がこの≪淀君≫である。大坂落城の淀君を描いた作品で、約3年かけて完成している。落城寸前の城内の背景と、そこに立つ淀君から出る「気」の対比が、観る者の想像を駆り立てる。
また、どの作品も、近くでみると日本画には珍しく絵具が厚塗りされていることがわかる。絞りの半襟や帯など、生地の質感など感じられるよう、恒富が絵画表現に取り組んでいた姿勢が伺える。
浪速情緒ではんなり
昭和に入り、恒富はその時代を生きる“大阪の女性”を描き続けた。
≪戯れ≫昭和4年(1929) 東京国立近代美術館
≪戯れ≫では、背景の爽やかな緑の中にいる舞妓の白い肌、黒髪に目を奪われるが、彼女が手にしているのは、カメラである。彼は、現代性、大阪の女性の進歩的な部分を追求する。そして恒富の眼は花街の女性だけでなく、商家の家の女性にも向けられていくのであった。
それらの代表作が、≪いとさんこいさん≫と≪星(夕空)≫である。
≪いとさんこいさん≫≪星(夕空)≫2つの傑作が並ぶ展示室はため息が漏れる
この≪いとさんこいさん≫の姉妹をみて、谷崎潤一郎の『細雪』連想する人は多いだろう。実際に公私ともに交流があり、展覧会でも、谷崎からの書簡が展示されている。同じ世界観をもつのは、お互いに大阪に移り住んだということも関係しているそうだ。
≪星≫の作品も、商家の物見台で空を見上げる女性。帯の星柄、そして着物の柄からは花火を連想させる。この女性は、夜空に何をみているのか。筆者は、星と彼女の体の形が七夕の短冊を連想させ、天の川を見上げながら、想い人の顔を頭に浮かべているのではないかと想像する。鑑賞者も楽しんで恒富の世界に入りやすい作品だ。そういう親しみやすさも彼の思う“大阪らしさ”の1つかもしれない。
お客様が求めるものを描くデザイナー
グラフィックデザイナーとしての恒富作品
第4章のグラフィックデザイナーとしての恒富の世界を堪能できることが、今回の展覧会の特徴でもある。現存するポスターで最も古い≪ポスター:貿易製産品共進会≫は、ミュシャの影響が色濃い。しかしそれ以降のポスターは、大正、昭和のモダニズムが漂う独特のモデルが中心に描かれている。菊正宗、月桂冠、髙島屋などからの依頼で妖艶な女性が描かれていて、中でも高島屋での催事用に作られた大胆な作品には驚かされる。NHKの朝の連続テレビ小説で赤玉ポートワインのポスターにふれた件があったことを思い出し、その時代の文化力の強さや伸びも感じずにはいられなかった。
髙島屋が催事用に発注したポスター 右端の作品は、森村泰昌の作品≪北野恒富・考/壱≫平成23年
いついつまでも大大阪
大阪画壇を牽引してきた恒富は、展覧会への出品、顧客からの注文制作と、精力的に活動していたのだが、もう一つ彼が力を注いでいたのは、画塾「白耀社」での継承者育成である。技術だけでなく、大阪らしさを受け継いだ島成園、生田花朝などの女性画家、また中村貞以や息子の北野以悦など、大阪を代表する画家の作品が今回揃っている。島成園の≪祭りのよそおい≫は、かわいらしい子どもたちを描いた作品であるが、後姿の少女と、座っている少女たちの着物を比較して、貧富の差や、立っている少女が抱くうらやましさなどが描かれていることがわかる。
島成園≪祭りのよそおい≫大正2年
その時代の大阪、そのままが日常を描くことで伝わっている。それは、大阪らしさを追求した恒富の想いが、残されている門下生に継承されていたからだと改めて感じる。
彼が愛用した筆を納めた筆塚が大阪市内に存在する。恒富が、その筆を使って、今ならどんな女性を描くのか、ふと興味が湧いた。
取材・文=カワユカ 撮影=K兄、YUMI KONO
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