「清水宏の世界で汗をかく!!~アメリカ・カナダ・エジンバラコメディツアー奮闘記」超やる気満々コメディアン
撮影=渡辺マコト
超やる気満々なコメディアン清水宏にインタビュー!
「俺には日本は狭すぎる!」と言わんばかりに海外へ飛び出し、慣れない土地で人々を笑わせまくる超やる気満々なコメディアン清水宏が今年もやらかした! 去年までは世界中のコメディアンが集まるエジンバラ・フリンジ・フェスティバル1本だったのが、今年はアメリカとカナダのフリンジも加わって、苦労は一気に3倍! フリンジの詳細については前回のインタビューを参考にしていただくとして、そんな彼の激闘の模様を報告する異色のライブが今年も開催される。タイトルは「清水宏の世界で汗をかく!!~アメリカ・カナダ・エジンバラコメディツアー奮闘記」。今回は北米編とイギリス・エジンバラ編に分かれて行われる報告ライブについて、現地での濃厚な体験談と共に清水が吠えた!
――前回はエジンバラへ発つ直前にお話を伺いましたが、今回は旅の全行程が終わってからということで。
終わったんですけど、まだ終わってない感じ。今でも向こうでの出来事がふと頭をよぎるんですよ。「うわ、うわぁぁ~っ!」って。
撮影=渡辺マコト
――トラウマじゃないですか(笑)。一体、どんな経験をしてきたんですか?
全部は話せないんですけど、英語でコメディをやるのは難しいんだってこと。海外の全然知らないところでお客さんを呼ぶのは大変なんだってこと。
――何やら初心に返ったかのような。
初心なのかなんなのか、ひっきりなしにいろんな問題が襲ってくるような状態だったんです。今回のライブは前半が北米編で、後半がスコットランド・エジンバラ編になってるんですけど……。
撮影=渡辺マコト
――ブログを拝見しましたけど、上手い具合に天国と地獄に分かれてる感じがしました。
どちらがどちらか分かりますか?
――それはもう! 北米が天国でエジンバラが地獄。
うわ~! できるだけ伏せようとしてたのに、滲み出ちゃうのね! でも、本当にエグいことは書いてないですよ。「てめぇ、この野郎!」っていう気持ちは押し殺しました。
――ところで、去年はひと月の旅だったのに、今年は4ヶ月というとんでもない長さでした。なんでこんな大変な挑戦をしたんですか?
僕は今、新しいことをやり始めてるんですよ。今回初めて挑戦した北米のフリンジ・フェスティバルは、僕が5年間行き続けたエジンバラ・フリンジ・フェスティバルとは全然違うもので、スタンダップコメディよりもストーリーテリングっていう自分の物語を話すネタの方が評価が高いという話を聞いてたんです。エジンバラではスタンダップコメディで社会を斬るようなネタをやって苦労したから、自分のやり方でやれるなら北米はいつものスタイルで挑戦して、エジンバラではちょっと考えようっていうムシのいいことを考えてたんですけど、こんなに大変だとは思いませんでしたね。
撮影=渡辺マコト
――今回のエジンバラは清水さんのライバルでもある、ドイツの有名なコメディアンの方が出演しなかったそうですね。
彼と話をしたら、「エジンバラはもういいかな……。ドイツでもスタンダップコメディが育ってきてるし、エジンバラだけじゃないっしょ……」みたいなことを言ってて、「おまえも辛かったんだな!」って(笑)。そこで戦友意識を感じましたね。
――そんなすごい人でも避けてしまうエジンバラって一体なんなんですか?
国内の人間と国外の人間では大変さに差があるんですよ。例えば、フリンジ・フェスティバルに変なものを見ようとやって来る地元の人は、俺たちじゃなくて地元のコメディアンのショーを選ぶ傾向があって。それに、しんどいしんどい言っても、国内のコメディアンにはなんだかんだ助けてくれるヤツがいるんですね。友達とかボランティアとか。それに、ハンガリーのヤツなんかは休みの日に彼女が来てたんですよ! 距離が近いから比較的楽に来れる。そういう違いを見せつけられて音を上げたくなるヤツがいるのは分かりますね。
撮影=渡辺マコト
――でも、それはアメリカとカナダでも同じなんじゃないですか?
エジンバラは大道芸人と同じような投げ銭制なんですよ。だけど、カナダとアメリカは制で、“わざわざを買ってこいつのことを選んでる”っていう意識があるので、お客さんも居住まいを正して来てくれるんです。エジンバラみたいに「おまえなんてどうでもいいけどよぉ!」って態度で来るヤツはいないんですよ。それに、カナダの人たちは「フェスティバルを育てていきたい!」っていう気持ちが強い。そういう場に参加させてもらえてありがたいなぁと思いましたね。
――その他にそれぞれの国に対して感じたことはありましたか?
全部の国について分かったわけじゃないですけど、違いがありましたね。例えば、カナダ人のアメリカ人に対する「俺とおまえらは違うからね!」っていう意識のすごさ。それがフリンジにも現れてました。あとは、スコットランド(エジンバラ)の良さも発見しましたね。一流のコメディアンを見た時に、「ここは誇り高き国、大人な国なんだな」って。あと、アメリカではいろいろあって……これはライブに来てくれた人たちに話したいんですけど、いつかあの国にはリベンジしてやろうと。
撮影=渡辺マコト
――これだけ海外でショーを重ねてると、次第に清水さんのスタイルも変わってくるでしょうね。
変わってきました。今回は、これまで「英語では伝わらねぇだろ」って言われてきたような表現をショーに採り入れたんですよ。それは空気とか状況の説明。英語を話す人はそういうことを言葉で表現するのが大好きなの。だけど、俺は敢えてそれをせずに、「“あわわわわぁ~!”ってなっちゃった!」っていう曖昧な表現だけで状況を想像させて笑わせることがかなり出来た。「日本から来たヤツはこんなやり方も出来るのか!」っていうレビューがあって、評価も高かったんですよ。でも、まだそれが理解できない観客もいる。だから、もっとそこを分からせたい。
――向こうではいろんな方のショーもご覧になったようで、そこから得ることも大きかったでしょうね。
観ました! このことについても時間が許す限りライブで伝えられたらと思ってます。……フリンジっていうのは民間の誰かがエジンバラで始めたものなんですけど、アメリカのような弱肉強食の国でも、「ここのフリンジはそうじゃない!」ってなんとか守ろうとする人たちがいるんですよ。他にもそれを支える人、参加する人、企画する人、スポンサー……様々な人たちがいるっていうことに胸を打たれました。そういう活動に触れて、僕も日本でフリンジを作っていけたらいいなと思っています。苦しい環境ではそういうポジティブな気持ちが吹き飛ばされたりもしましたけど、世界で汗をかいてきて良かったと思ってるし、今回僕の中に灯った火を皆さんにも受け取ってもらいたいなと思ってます。
撮影=渡辺マコト
――話を伺ってると、なんだか2、3年分ぐらいの濃さを感じる旅だったように思えます。
成田に帰って来て鏡を見たんです。そうしたら、「誰だい?このクソオヤジは」っていう。旅の痕跡が残ってるんですよね。本当に2、3年分ぐらいの気持ちですよ。
――4ヶ月の激闘を経て、今回の報告ライブはどうなるんでしょう?
基本は人間コメディですね。もう笑い飛ばしてください。
――去年の公演前は、「これを観てポジティブになって欲しい」と仰ってました。
簡単にポジティブになる必要もないし、「人生いろいろあるよ!」っていう話を並べたいですね。僕の経験の中からいろんなものを見てもらえたらなって。
撮影=渡辺マコト
――面白いもので、ブログを拝見してると清水さんが苦労してればしてるほどライブが楽しみになってしまうという。
そうなんだよね~! 人がいい思いをしてるのを見て、いつまでも笑ってられないからね! 俺も自分が不調なときに他のパフォーマーが調子いいの見ると、そいつと顔合わせたくなくて逃げたりするもん! 人がひどい目に遭ってるのって面白いんですよねぇ。もう、それでいいです(笑)!
――では、最後にお誘いの言葉を。
観に来てくださいよ! 今回は例えるならば、よく分からない民芸品とか変なお土産も持っていくので、一緒に食べてみたり触ってみたりしましょう! という感じのライブになります。こういうライブは他にないと思うから、本当に観に来て欲しいなぁ。1日だけ観てもちゃんと完結するけど、両日観に来てくれた人にはサービスしちゃう!
撮影=渡辺マコト
[取材・文=阿刀 "DA" 大志]
[撮影=渡辺マコト]