欧米人と日本人が考える“伝統”の違いとは? 佐々木俊尚氏と佐々木芽生監督が映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』で対談
左から、佐々木芽生監督、佐々木俊尚氏
9月9日(土)から公開される映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』から、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏と同作でメガホンをとった佐々木芽生監督の対談映像が公開された。
『おクジラさま ふたつの正義の物語』は、東京で25週間のロングランヒットを記録したドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』の佐々木芽生監督による最新作。6年の制作期間をかけて、半世紀以上続く“捕鯨論争”に新たな光をあてるドキュメンタリー映画だ。追い込み漁を糾弾した映画『ザ・コーヴ』で注目を集めて以来、世界的な捕鯨論争に巻き込まれた和歌山県太地町について、2010年秋から佐々木監督が映し続けてきた、多種多様な意見を捉えていくドキュメンタリー映画だ。
公開された映像は、佐々木監督が様々な相手と対談していく企画の第一弾。初回は、IT・メディア分野を中心とした取材・ 執筆で活躍し、『キュレーションの時代』(ちくま新書)などの著書で知られる作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏を迎えて対談。映像では、約2年前に佐々木監督の撮影する太地町に同行したという佐々木氏が、当時の様子や今改めて作品を観て感じることなどを語っている。佐々木氏は、太地町の「記号化」について指摘。「『捕鯨の町』とか、『世界中から批判されてる鯨の町』とか。一方で、日本国内にはそれを擁護する人たちもいるけど、擁護する側もする側で、太地町っていうのは『日本文化の、捕鯨文化の伝統の町』みたいな、ある種の記号化があって。我々がメディアを通じて物事を見る時に、どうしても記号で見てしまう、ということが起きる。現場はそこがすごい大事で、記号を抜き去ったところで、現場を見たときに何が見えてくるかっていうのは、ジャーナリストとしては非常に貴重な仕事なんですよね」と語る。
佐々木俊尚氏
また、佐々木監督は、取材していく中で感じた、欧米と日本の”伝統に対する考え方”の違いに言及。「欧米の人の“伝統”と、日本人が考えている“伝統”って、全く違うんです。欧米人にとって、悪い伝統っていうのは、どんどん壊していかなきゃいけない、と。シーシェパードの人が言ってるように、『奴隷制だったり、切腹だったり、おはぐろっていうのも今の近代社会に合わないので廃止したでしょ』と。クジラを捕ったり、イルカを捕ったりすることも同じで、偉大な動物であるクジラやイルカを捕るっていうのは野蛮だ。だから、それは悪い伝統だからやめなさい、と。一方で、日本人にとっては、長く続いてきた“伝統”はできるだけ長く将来に引き継いで、受け継いでいくものだ。日本の伝統なんだから干渉しないで下さい。と、お互いの議論がなく、そこでストップしちゃってるんですよね」と、説明している。
佐々木芽生監督
なお、第二回の対談には、世界中の少数民族を撮影し発表し続けるフォトグラファー・ヨシダナギ氏が登場。映像は、公式サイトにて随時更新されていく。
映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』は9月9日(土)よりユーロスペースにて公開。
原題:A WHALE OF A TALE
(2017 年 / 日本・アメリカ / 96 分 / HD / 16:9)
制作:FINE LINE MEDIA JAPAN
制作協力:ジェンコ、ミュート、朝日新聞社
協賛:アバンティ、オデッセイコミュニケーションズ
配給:エレファントハウス
公式サイト:http://okujirasama.com/
(C)「おクジラさま」プロジェクトチーム