『連載40周年記念 ガラスの仮面展』をレポート 待望の続編について、美内すずえが語った!
松屋銀座8階イベントスクエアにて、『連載40周年記念 ガラスの仮面展』(会期:2017年8月23日~9月4日)が開幕した。
23日に行われたオープニングイベントに登場した美内すずえ
会場入り口には紫のバラを飾る粋な演出
オープニングイベントに駆けつけた(左から)吉本実憂と井本彩花。 ひと足先に展示をみた感想は「時間が足りない!」「迫力があった」
初日、プレス向けに行われたオープニングイベントには、作者の美内すずえが登場し、本展の感想を「思っていたより華やかで、ワクワクした。原稿を描いているときは本当に汚い格好で、なんとか仕上げているので、すごく素敵な枠や壁に飾っていただいて、うれしくなった」と笑顔で語った。
「ガラスの仮面」の連載がスタートした号
1976年に連載を開始した少女漫画「ガラスの仮面」は、天才少女・北島マヤと宿命のライバル・姫川亜弓が、演劇界の幻の名作『紅天女』の主役の座をめぐって競い合うストーリーで、演劇漫画の金字塔として今なお不動の人気を誇っている。刊行された単行本は計49巻、累計発行部数は国内で5000万部超の大ベストセラーで、昨年に連載開始40周年を迎えた。
美内は「頭で考えたら長いけど、私自身は昨日のことのよう。気が付いたらそういう年数が経っていた。40年の重みは自分の中にはなくて、だからやり続けていけるんだと思う」と語った。
デビュー作「山の月と子だぬきと」。「別冊マーガレット」で金賞を受賞、高校生漫画家としてデビューした
本展は、貴重なモノクロ原稿やカラー原画を中心に、掲載誌、書籍、舞台の資料など総点数400点以上の展示を通して「ガラスの仮面」の魅力にあらためて迫る内容で、本展のために特別に描き下ろされた原画も公開される。
会場内には「紅天女」キャスト投票所や、“なりきり”フォトスポットも設置。また、展覧会オリジナルのスイーツが堪能できるカフェコーナー「喫茶月影」も特別開店し、「ガラスの仮面」の世界に存分に浸ることができる。
喫茶 月影の看板
グッズはほかにも「大都芸能ビスケット」などひねりのきいたラインナップが並ぶ
最後の発刊から5年。気になる続編のゆくえ
グッズコーナーにて
『ガラスの仮面』と言えば、誰もが真っ先に浮かべる「続編はまだか」というモヤモヤである。単行本の49巻が2012年に発行されて以来、ファンは首を長くして続きの50巻を待っている。
2015年秋に発売された「別冊 花とゆめ」1月号では、「50巻ただいま描いています、お待ちください!」というメッセージが添えられた美内の描き下ろしイラストにいったんはファンが胸をなでおろしたものの、それからさらに2年近くが経過しているのが現状だ。
23日に行われたオープニングイベントでは、司会者から飛んだ「(続編を)待っていて大丈夫でしょうか?」という質問に、美内は「大丈夫です」と答え、「『ガラスの仮面』のラストは20年以上前から最終ページの構図まで決まっている。なぜそこまで行きつかないのかということだけが問題」とし、「すみません皆さん、健康に気を付けてついてきてください」と語りかけた。
読むと止まらなくなる濃厚な劇中劇が筆を遅らせる……?
本展のために撮り下ろした執筆風景映像
さて、少女マンガ版『巨人の星』とも呼ばれる『ガラスの仮面』は何に想起を得たのだろうか。美内は子どもの頃に観たある一本の映画を挙げている。
映画『王将』(1962)は、実在した将棋界の奇才・阪田三吉を三國連太郎が演じたヒューマンドラマ。美内は「人間って何だろう。生きる目的とは……と、観たあとノドがカラカラになった。それからキャラクターがずっと頭の中に居続けた」とその熱烈な印象を語っている。
貴重なアイデアノート
美内が24歳のとき、記憶に焼き付いていた阪田三吉のようなキャラクターを描きたいと考え、以前に短編を描いた「演劇」をテーマに選んだ。こうして誕生したのが『ガラスの仮面』である。
展示のようす
展示のようす
美内は過去のインタビューで「演劇をテーマにしたのは最大のミス」とも語っている。それは「主人公が新しい作品に挑戦するたび、劇中劇のストーリーや舞台構成をイチから作り上げて、どんな小さな芝居でもセリフまで考えるため手間がかかる。通常の3倍は労力がかかる」からだそうだ。
実際、『ガラスの仮面』で描かれた劇中劇の数は30本にも及び、各話が稽古から本番まで丹念に描かれ、読み切り作品並みのボリュームだ。しかも、すべての芝居を実際に舞台で演じられるよう、台本を完成させているというから驚きである。
ラストシーンが20年以上前から決まっているにもかかわらず、未だに完結しないのには美内の強い絵へのこだわりに起因しているようにみえる。だが、名作とよばれる漫画作品の多くが、完璧主義と言ってもいいくらいの作者の決して妥協しない強い姿勢から生まれているのも事実だ。
ラストスパートに向けて「『紅天女』を充実させたい」と意気込む美内。ファンは作者の言葉を信じ、本展で本作の魅力を振り返りつつ静かに続編の吉報を待ちたいところである。
美内すずえの代名詞ともいえる「白目」テクニック。本展ではほかにも「コマ送り」など本作ならではの技法にフォーカスして原画を展示
ちりばめられた名セリフたち。本で読むのとはまた違った感覚で世界観に浸れる
能からギャグアニメまで。世代を超えて愛される作品
オープンしてすぐに人だかりができる盛況ぶりだった
『ガラスの仮面』はこの40年で幾度も舞台化され、
テレビアニメやドラマ化に加え、パロディーまで作られてきた。最近では、「大人のぬりえ ガラスの仮面」や日めくりカレンダー「まいにち、月影先生!」が発売されるなど、新たな楽しみ方も生まれている。
2016年に行われた舞台『ガラスの仮面』の衣装
また、本展開催を記念し、新作能『紅天女』の公演が観世能楽堂(東京・GINZA SIX)で予定されており、その世界観がますます広がりをみせようとしている。
時代を超えて愛される作品の真髄に触れることができる本展。主人公の北島マヤにしかり、作者の美内すずえにしかり、その内に秘められたひたむきな思いにファンならずとも心を動かされるかもしれない。
(C)Miuchi Suzue
※参照ページ
https://www.daily.co.jp/gossip/2016/07/17/0009294439.shtml
http://www.jprime.jp/articles/-/8887
会場:松屋銀座 8Fイベントスクエア(東京都中央区銀座3-6-1)
開場時間:10:00~20:00(最終日は17:00閉場、入場は閉場の30分前まで)
入場料:一般1000円、高校生700円、中学生500円、小学生300円
主催:朝日新聞社
特別協力:美内すずえ事務所(プロダクションベルスタジオ)
協力:白泉社
問い合わせ:松屋銀座 03-3567ー1211(代表)
ウェブサイト:http://www.asahi.com/event/garakameten/