【“SAI”クイックレポ】ACIDMAN バンドの全てを凝縮し、長い1日を締めくくる万感のフィナーレ

レポート
音楽
2017.11.23
ACIDMAN

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ACIDMAN presents 「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」 ACIDMAN

時刻は午後8時を回った。開演から既に9時間を経過したが、会場内の熱はまったく下がらない。みんなが待っていた、長く美しい1日を締めくくるバンドはもちろんACIDMANだ。ざわめき、暗転、歓声。お馴染みのインスト「最後の国」に合わせたオーディエンスのクラップが、音の波に乗って押し寄せる。なんという壮観な眺め。スーパーアリーナを埋め尽くしたすべての人間が、彼らの20年を祝福するためにここに来たのだ。

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1曲目「新世界」、スクリーンに映る大木の顔つきが違う。祝祭の喜びよりも、9組のバンドの熱演に感化された緊迫感みなぎる表情だ。「FREE STAR」ではミラーボールが廻り、一悟のキックに合わせたオーディエンスのジャンプにフロアが揺れる。サトマの煽るクラップがビートの一部になる。包み込み、連れ去る、ACIDMANにしか作れないスペイシーで非日常的な空間が現出する。

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「いつもは“自由に楽しんでください”と言うけれど、今日は自由に楽しまないで。“思い切り”楽しんでください」

大木のMCに続き、「ミレニアム」から「赤橙」へ。十数年の時差のある曲を同じビートでつなげ、力強い四つ打ちがフロアを揺るがす。テンポでいえばミディアムだが、体感は凄まじくラウドでパワフル。ACIDMANの曲にはスローもファストもない、あるのは刻々と変化し続けるエモーションの流れだ。「最後の星」も、ロックバラードの域を超えてどこまでも高く遠く飛ぶ。オーディエンスは立ち尽くし、音の流れに身を任せ、大木の魂振り絞る叫びに聴き入っている。

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「世界は終わる、人は死ぬ。そんな歌ばかり歌ってます。これからもずっと歌い続けます。いつか終わりが来るからこそ、生きている瞬間が素晴らしいという歌を」

曲は「世界が終わる夜」。これもACIDMAN流ロックバラード、エモーションの流れが大きくうねり、1曲の中で遠くまで旅ができる曲。一悟の乱打するシンバル、サトマの正確無比なルート音、大木の掻きむしるディストーション・ギターがまばゆい音のハレーションを引き起こす。と、ここでサプライズが。「この人たちがいなかったら今のACIDMANはありません」と、呼び込んだのは東京スカパラダイスオーケストラの谷中と加藤だ。ファンの間では周知のエピソード、かつてACIDMAN解散の危機を救った二人。強力なバリトン・サックスとエレクトリック・ギター、そこに愛と勇気と信頼を加えた「ある証明」は、今までに聴いたどの「ある証明」よりもエモーショナルな名演だった。さらに「飛光」へと、ACIDMANのラウド・サイドを代表する名曲の連発に、オーディエンスの盛り上がりは最高点に達した。

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「今日出てくれたバンド。本当にありがとう。次は希望を歌った歌です」

ACIDMAN史上最高にエモーショナルな曲の一つ「ALMA」を歌う大木の声が震える。壮麗な照明が眩しく輝く。見上げたスーパーアリーナの天井から、星型のオブジェが無数に舞い降りる。大団円の雰囲気の中、「アンコールはやりません」と前置きした大木が「最後、みんなで一つになりましょう!」叫ぶ。曲は「Your Song」。一悟が最後の力を振り絞る。サトマが満面の笑顔を見せる。大木が何度も「ありがとう!」と声を上げる。10曲、1時間15分の中に2017年11月23日を生きるACIDMANの今を凝縮した、素晴らしいライブ。

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すべてが終わり、明るくなったステージ。極限の緊張と興奮から解き放たれた大木がはしゃいでる。「べタなやつやっていいですか?」と、全バンドを呼び込んでの記念撮影に、オーディエンスも笑顔で参加する。と、大木が止めるのも振り切って、一悟がマイクに向かって叫んだ。
「今日は夢を見てるみたいだった。導いてくれた大木伸夫に拍手を!」

20周年の祝祭は終わり、また新しい1日が始まる。ACIDMANは歌い続ける。人が何かを信じる力、そして音楽の持つ無限の力をまざまざと見せつけられた夜だった。ありがとう。


取材・文=宮本英夫 撮影=三吉ツカサ

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セットリスト
ACIDMAN presents 「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」 ACIDMAN
SE. 最後の国 (introduction)
1. 新世界
2. FREE STAR
3. ミレニアム
4. 赤橙
5. 最後の星
6. 世界が終わる夜
7. ある証明
8. 飛光
9. ALMA
10. Your Song

 

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