間宮祥太朗インタビュー「今までやった何かと同じではないことをしなきゃいけない」駆け抜ける俳優が“映画”と向き合う気持ち
間宮祥太朗 撮影=岩間辰徳
「話題作に間宮祥太朗の姿あり」、そんな言葉が、いつからか記者の間でささやかれるようになった。メジャー級大作から、エッジの効いた意欲的な商業映画、幅広い層が楽しめるドラマまで、ノンストップかつ変幻自在に、役ごとに印象を変え、その作品の住人となる。間宮が映画『不能犯』で演じたのは、女刑事・多田(沢尻エリカ)の手により更生した、元不良少年・川端タケル。作品内で次々に湧き起こる変死事件と、その犯人と思しき宇相吹正(松坂桃李)とは、一見、無関係のタケルなのだが「何らかの形で事件に関わってしまうのでは……」と、観る者の心を惑わせてくれる。確かな演技力と、積み重ねてきた実績。引く手あまたの間宮に、駆け抜けている現在の心境を聞くと、リラックスムードでインタビューに応えてくれた。
“サド”な白石晃士監督の演出に「やるだけやってやろう!」
間宮祥太朗 撮影=岩間辰徳
――間宮さんが演じた川端タケルは、ただ更生しただけではない、一筋縄ではいかぬ男の印象です。
タケルは更生して料理人となり、普段は板前をしています。でも、私服では、少年院に入っていた元不良少年らしからぬ几帳面な格好をしているんです。纏っている雰囲気も、穏やかそうな感じはあるかなと思っていました。元々不良だった、逮捕されたことがあるという情報だけではなくて、少年院に入ったことのある人が皆、粗暴な雰囲気というわけでない。そんな見せ方ができればいいかな、と思っていました。そこがひとつ役を演じる上でのヒントになりました。
――タケルは元不良少年ですが、もともとは荒れた雰囲気の人ではなかった、という解釈なんですね。
そうですね。荒れているというより、どちらかと言うと静かなほうというか。静かだったけど、多少行き過ぎるところがあったのかな、とは思います。
――『不能犯』でも別の作品でも、間宮さんは演じる役によってしゃべり方や声のトーンがだいぶ違う印象なのですが、意識して変えていらっしゃるんですか?
そうですね。音の上下というか、音階としてはそんなに上がったり下がったりしないようにはしたかな、と思います。抑揚みたいなものはあってもいいかと思うんですけど。音のイメージは脚本だけではなく、今お話した服の話とかにも着想を得ています。なんとなくなんですけどね。
間宮祥太朗 撮影=岩間辰徳
――今回、白石晃士監督と初めてご一緒されました。印象的な演出はありましたか?
手錠されるところがあって……ネタバレにならないように慎重に話さないと(笑)そこは大丈夫なのかな?
――予告編でも流れているので、大丈夫かと思います!
では、手錠のことを。手錠をはめられる場面で、(つながれている)排水溝みたいなところを、ガンガンガンガンと外そうとするところがあって。えー、非常に痛かったんですけど(笑)。そこで監督は、「大丈夫?無理しないでくださいね」みたいなことを優しく言いつつも、僕が激しければ激しくするほど、「いいっすね!」と燃えていたんです。「サドだな……」って思いましたね(笑)。
――求めてこられてはいたんですね(笑)。
はい。こちらも何か言われる感じを見ていたので、「もう、やるだけやってやろう!」と思ってやっていました。
間宮祥太朗 撮影=岩間辰徳
――完成作をご覧になって、いかがでしたか?
『不能犯』は、ほかの作品に比べても、宇相吹の見せるものに対して映像の効果的なことがたくさんありますよね。だから、撮影現場だけではどういう映像になるのか、分からないことがたくさんあったんです。おそらく僕だけじゃなくて、皆さん……特に松坂さんがそうなんですけど、僕よりもそうした描写のシーンをたくさんやられていたから。だから、本当に上がってきたものを観るまでは、監督の説明の範疇の想像だったので、観るのがずっと楽しみでした。いざ観ると、白石監督独特の映像で語る感じがすごくあって楽しかったです。万華鏡のように奥にいく感じというか、観ていて刺激的な映像体験でした。
――確かに刺激的な映像でした。内容に関しては、間宮さんはどう受け取っていますか?
殺しに対するハードルの低さみたいなものが、僕の中ではひとつ作品のポイントかな、と思っています。自分が殺意を持ったとき、犯人だとバレないためのアリバイを必死に考えたりとか、いろいろなことを準備すると思うんです。こんな言い方はアレですけど、我が身を切って遂行しようとすると、やっぱりすごく労力のかかることなのかな、と。でも、この映画では「誰かを殺してほしい」と思ったら、殺人を依頼する紙を電話ボックスの裏に貼って、宇相吹という怪しげな男と会って、殺したい人間と理由を言って、「その殺意は純粋ですか?」と聞かれて、「純粋です」と言えば、殺してくれる。立証もされなければ、自分に足がつくこともないという、すごくノーリスクな殺人なんですよね。命を奪うとか、奪われるという局面では、人間の一番醜い部分、信じたいけど信じられないみたいな本当に崖っぷちのところ、本質的な部分が見え隠れすると思っています。
「好きな作品を一緒に作っていける監督と出会う」
間宮祥太朗 撮影=岩間辰徳
――間宮さんが映画好き少年だったというお話は、以前からお聞きしています。そもそもは、どういう経緯で俳優になられたんでしょうか?
最初は事務所にも所属していなくて、読者モデルというわけでもなく、何となく“雑誌に出たことがある中学生”という感じだったんです。あるプロデューサーさんが中学生のドラマを作る際に、資料として僕が出ていた雑誌を読まれて、たまたま目に留めてくださったそうで。それで、今の事務所の人が知り合いで……という流れでした。僕は芸能界と雑誌に出たことが直結するとは思っていなかったんですよ。
――そして即デビューに?
その頃は、ドラマや舞台は全然見ていなかったんですけど、もともと映画が好きで、毎日2~3本観ていたので、何となく「映画業界に携わりたいな~」というぼんやりした思いはあったんです。今の事務所と面接のようになったときには、正直、「よし、俳優として生きていくぞ!」という気持ちというより、ただの中学生として過ごすよりは、事務所に所属して俳優になったほうが「映画業界に近づくかな」と。たとえ、表に出る側の仕事が自分に全然合わなくても、そこで見られるものは大きいと思ったんです。何もない状況よりは近づける、と。あと、やっぱり失うものがないですからね、中学生には。
――そうだったんですね。現在は、しっかりと俳優として活躍していらっしゃいます。この1年、表に出る機会が顕著だった印象ですが、ご自身で変化を感じられましたか?
仕事をもらえて「ありがたいなあ」と思うんですけど。でも、何かが変わったかと言われたら、別にあまり変わってないというか。うーん、何だろう?本当に、ありがたいことにそうやって言ってくださるんですけど。でも、別にそうでもないぞ、というね(笑)。
間宮祥太朗 撮影=岩間辰徳
――役や作品、監督に向かう気持ちなど、内面の変化も「特には」という感じなんでしょうか?
うーん、何だろう……自分のこととなると難しいですね。ひとつ間違いなく言えることは、(今が)楽しいんです。それが一番、いいことだとは思っているんですけど。以前と比べて、例えば2017年を通して何が変わったかと言われたら、もちろん微妙なところでは変わっているかもしれないですけど、大きく「ああ、もうここが変わりましたね!」ということはあまりなくて。もともと15~16歳ぐらいのときは、もちろん仕事がなかったんですけど、それでもドラマで3カ月間”クラスメイト役”みたいなことで入らせていただくと、スケジュール的には忙しかったりもして。クラスメイト役なぶん、ずーっと画面に映っているので。
――なるほど。
当時、マネージャーさんには「仕事がある・ないで、気持ちの浮き沈みがあまりないね」って言われて。そのときは全然意識もしていなかったんですけど、今思えば、もともとそんなに浮き沈みがないほうなのかな、と思うんです。
――だから、「浮き」もしないというか。
そうなんですかね。ただ、作品に新しく携わるときは、毎度、毎度、今までやった何かと同じではないことをしなきゃいけないな、という気持ちはあります。
――例えば今後、間宮さんが製作側にまわる可能性はありますか?
いつか俳優とは違う形で作品に関わりたいと思うタイミングがあるかもしれないですけど、今のところは分からないですね。自分で何かを発足して「やろう」という気は、まだないかなあ。例えば、脚本家さんとかは、自分の体験や想像力で白紙の状態から台本を起こすじゃないですか。0から1にも、10にもしていくような作業ですよね。15歳とかのときは、「自分が見たいものを自分で作れたらいいな、できたらいいな」と思っていたんですけど、今となっては、それが「すごいことだな」と思うんです。自分らがやっている俳優は、監督が導く方向性もありますし、台本という地図みたいなものもあって、書かれている台詞もあるので、どう考えても0からの状態ではない。割とでき上がった状態で入らせていただくので、それとは全然違うことなんですよね。今思うのは、自分がやりたいことというか、自分が思うことだったり、好きな作品を一緒に作っていける監督と出会うことはできるな、ということでしょうか。それもとても楽しみです。
間宮祥太朗 撮影=岩間辰徳
映画『不能犯』は公開中。
インタビュー・文=赤山恭子 撮影=岩間辰徳
間宮祥太朗サイン入り『不能犯』プレス 1名様に
間宮祥太朗 撮影=岩間辰徳
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2018年2月19日(月)11:00
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出演:松坂桃李 沢尻エリカ
新田真剣佑 間宮祥太朗 テット・ワダ 菅谷哲也 岡崎紗絵 真野恵里菜 忍成修吾
水上剣星 水上京香 今野浩喜 堀田茜 芦名星 矢田亜希子 安田顕 小林稔侍
原作:『不能犯』(集英社「グランドジャンプ」連載 原作:宮月新/画:神崎裕也)
監督:白石晃士
脚本:山岡潤平、白石晃士
配給:ショウゲート
公式サイト:http://funohan.jp/
(C)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会