ものの見方と味方に出会う展覧会『鈴木康広 始まりの庭』【SPICEコラム連載「アートぐらし」】vol.17 和田永(アーティスト)

コラム
アート
2018.2.6
鈴木康広、和田永

鈴木康広、和田永

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美術家やアーティスト、ライターなど、様々な視点からアートを切り取っていくSPICEコラム連載「アートぐらし」。毎回、“アートがすこし身近になる”ようなエッセイや豆知識などをお届けしていきます。
今回は、アーティストの和田永さんが、京都で展示した自身の作品と、
箱根 彫刻の森美術館で開催されている『鈴木康広 始まりの庭』について語ってくださっています。

古い音楽テープが、音を再生しながら、ゆっくりと透明ケースの中へと落ちていきます。

落ちていくテープは時間とともに折り重なり、独特の模様を空間に織り込んでいきます。

やがて降り積もると、今度は高速で音楽を読み取りながらテープが巻き上がります。

そして、今までの模様は消え去り、再び新たな模様が織り成されていきます。


 

これは、先日京都ロームシアターで開催していた『文化庁メディア芸術祭京都展 Ghost』に出品していた、《時折織成 -Weaving Records-》という僕の展示作品です。今では使われなくなった年代物のオープンリール式テープレコーダーを、音楽・美術作品として蘇生させています。

展示初日には、訪れた幅広い年齢層の反応を見ることができました。まさにこの機械に慣れ親しんだ世代の「懐かしい」という声を聞く一方で、この機械についてほとんど知らない世代が「これは一体何だろう?」と興味を持ちながら、じーっと眺めている様子は、さらに僕の想像を掻き立てました。


 

実はこの作品、「もしも遠い未来でこのロスト・テクノロジーが掘り起こされたとしたら、人々はどんな風に使うだろうか?」という妄想が制作の出発点になっています。

未来人は、「音を録音する機械」と捉える一方で、「時間と空間に関する装置」と捉えるかもしれません。はたまた、「時間を操りながら奏でる民族楽器」「時を測る物差し」「重力を使って絵を描く装置」「音を記録できる時計」「回転するメトロノーム」「音の記録そのものがダンスするオルゴール」「一種の原始的な人工生命」などなど……。色んな誤読をするかもしれません。

一度そんな風に見えてしまうと、それは単なるテープレコーダーではなくなってしまうような感覚が生まれ、とても興奮します。自分が美術展を巡る時の楽しみのひとつに、そんな興奮との出会いがあります。世界の見方や味方は、「空気感染」ならぬ「意識感染」を自分にもたらしてくれるのです。

彫刻の森美術館 温泉と自然が堪能できる箱根にて、数々の珍奇な彫刻が庭園の中に散りばめられている

彫刻の森美術館 温泉と自然が堪能できる箱根にて、数々の珍奇な彫刻が庭園の中に散りばめられている

ちょうど、「○○が△△に見えてしまう」を胞子の如く放出している展覧会が、箱根 彫刻の森美術館で開催されているので行ってきました。アーティスト・鈴木康広さんの展覧会です。鈴木さんは、自分の表現や考え方にも影響を及ぼしている大先輩のアーティストです。

鈴木さんの作品は、身近にあるよく知っているものを、まさに“時間”や“空間”、あるいは“目に見えないけれど確かにそこにあるナニカ”を感じるためのものとして見立てています。そうすることで、捉え方そのものを捉えようとしているように感じられます。

まるで、科学者であり詩人でもあるような彼の邸宅を訪ね、日頃つくり出している珍妙な発明品や道具の数々を眺めて歩いていくような展覧会でした。

中でも想像力を掻き立てられたのは、《近所の地球 旅人の道具》という展示でした。会場中央にどーんと寝転がった巨大な《空気の人》が持ち歩く透明鞄の中には、旅のおともをする道具の数々が詰まっています。

例えば、《りんごのけん玉》《空気の手紙》《日本列島の方位磁針》《境界線を引く鉛筆》《等倍レンズ》《無限の回転体》《未知の判子》《月のゴルフボール》などなど。この旅人の道具を知るだけで、旅の想像と、想像の旅が広がっていきます。

美術館から出て、足下に広がる地球をより近所に感じながら、あの鞄に自分だったらどんな道具を入れるかを空想しながら帰路につきました。

そしてふと空を見上げると、「遠い昔にゴルファーが打ち上げた小さな月」が光っているのです。

「科学は月も無数の原子がえがく現象であることを証明したではありませんか。あの天体に光と闇の神秘を見るのか、それとも、無数の原子を見るのか。もし、人間の意識が、月だと感じなくなれば、それは月ではなくなるのです」(インドの詩人タゴールが、物理学者アインシュタインに語ったとされる言葉)

イベント情報

鈴木康広 始まりの庭

会期:2017年8月5日 (土) 〜 2018年2月25日 (日)
会場:彫刻の森美術館
公式サイト:http://www.hakone-oam.or.jp/specials/2017/spontaneousgarden/

 

和田永出演ライブ情報
ELECTRONICOS FANTASTICOS! 電磁室 in Media Ambition Tokyo

 日時:2018年2月17日(土)〜18日(日)11:00-19:00
 会場:代官山蔦屋ギャラリー
 内容:和田永展示+ミニライブ
 公式サイト:http://mediaambitiontokyo.jp/electronicosfantasticos/
ROPPONGI VARIT 2nd anniversary!​

 日時:2018年3月9日(金)
 会場:六本木VARIT.
 出演者:ASA-CHANG&巡礼、Open Reel Ensemble

 
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