醍醐寺の歴史を寺宝で辿る、『京都・醍醐寺 ―真言密教の宇宙―』展 報道発表会レポート

レポート
アート
2018.4.2
左から、サントリー美術館支配人の勝田哲司氏、真言宗醍醐派管長・総本山醍醐寺座主の仲田順和師、九州国立博物館館長の島谷弘幸氏

左から、サントリー美術館支配人の勝田哲司氏、真言宗醍醐派管長・総本山醍醐寺座主の仲田順和師、九州国立博物館館長の島谷弘幸氏

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京都の東寺や仁和寺と並び、真言密教の大寺院として知られる醍醐寺。2016年にその寺宝の数々が海を渡って初めて中国で展示され、好評を博した。その中国展開催を記念して開かれるのが、『京都・醍醐寺―真言密教の宇宙―』だ。本展に先駆けて開かれた報道発表会から、その全貌をお伝えする。

真言密教の世界観を伝える寺宝の数々

平安時代、貞観16年(874年)に理源大師聖宝(しょうほう)によって創建された醍醐寺。日本に密教をもたらした空海直系の弟子であった聖宝が開祖だったことで、密教の中核寺院として発展していった。

「理源大師坐像」吉野右京作、江戸時代、延宝2年(1674)、醍醐寺蔵

「理源大師坐像」吉野右京作、江戸時代、延宝2年(1674)、醍醐寺蔵

密教の両輪といわれる「教相(教え)」と「実相(実践)」のうち、加持祈祷や修法などの実践を重んじる醍醐寺は、真言密教の二大流派のひとつである小野流の拠点。実践の道場として多くの僧が修行を重ね、修法の本尊である彫刻や絵画をはじめ、修法に関わる仏具や文書が数多く残る。

国宝「薬師如来坐像および両脇侍像」平安時代、醍醐寺蔵

国宝「薬師如来坐像および両脇侍像」平安時代、醍醐寺蔵

重要文化財「如意輪観音坐像」平安時代、醍醐寺蔵

重要文化財「如意輪観音坐像」平安時代、醍醐寺蔵

「醍醐寺の文化財は、祈りによって作られ、守られ、伝承されてきた」と語るのは、醍醐寺座主の仲田順和(なかた・じゅんな)師。「文化財は見てもらうべきもの」との考えから、海外での展示にも積極的に取り組んできた。

本展でもその姿勢は変わらず、醍醐寺に伝わる約15万点の寺宝の中から、国宝36件、重要文化財60件を一挙公開。貴重な文化財を通して、醍醐寺の歩みとともに、密教の世界をいまに伝える。

国宝「文殊渡海図」鎌倉時代、醍醐寺蔵

国宝「文殊渡海図」鎌倉時代、醍醐寺蔵

上が重要文化財「五大明王像」(平安時代)、下が国宝「五大尊像」(鎌倉時代)。いずれも醍醐寺蔵

上が重要文化財「五大明王像」(平安時代)、下が国宝「五大尊像」(鎌倉時代)。いずれも醍醐寺蔵

白描図像を仏像・仏画と対比して展示

加持祈祷や修法などの実践面を大事にする醍醐寺では、さまざまな密教修法が実践され、仏像や仏画の尊像の研究が盛んに行われてきた。そのため、料紙に墨線のみで尊像や曼荼羅を描いた白描図像も数多く残っている。本展では、それらの白描図像を仏像や仏画とあわせて展示し、見比べられるようにするとのこと。設計図ともいえる白描図像とともに見ることで、仏像や仏画に対する理解をより深められそうだ。

右が白描図像

右が白描図像

時の権力者たちとの縁の品々

これまでの日本仏教と異なり、現世利益を説く密教は、時の朝廷や貴族、武士などの為政者たちから厚い信仰を集め、醍醐寺も彼らの帰依を受けてきた。本展では、醍醐寺の歴代座主と時の権力者たちとの深い関わりを示す品々も展示されるという。

中でも、足利尊氏を支えた賢俊や、足利義満以降三代の将軍に仕えた満済など、室町幕府の歴代将軍とのつながりは強く、その関係性を示す文書や書跡からも醍醐寺の繁栄の様子をうかがい知れる。

重要文化財「理趣経」足利尊氏筆、南北朝時代、延文2年(1357)、醍醐寺蔵

重要文化財「理趣経」足利尊氏筆、南北朝時代、延文2年(1357)、醍醐寺蔵

国宝「三国祖師影」鎌倉時代、醍醐寺蔵

国宝「三国祖師影」鎌倉時代、醍醐寺蔵

繁栄の時代が続いたが、応仁の乱で五重塔を残すのみという壊滅的な状況に陥った醍醐寺。その復興に取り組んだ第八十代座主の義演を手厚く保護したのは、天下統一を果たした豊臣秀吉だった。醍醐寺と秀吉とのつながりを物語るのが、かの有名な「醍醐の花見」だ。慶長3年(1598年)3月、秀吉は700本の桜を植えて醍醐寺で盛大な宴を開き、1,000人以上が参加したという。

本展では、花見の際に詠まれた「醍醐花見短冊」や、秀吉の愛用品といわれる「金天目・金天目台」などで秀吉との関わりを紹介するとともに、俵屋宗達の筆と伝わる「扇面散図屏風」や長谷川等伯率いる長谷川派による「三宝院表書院障壁画 柳草花図(上段之間)」などで醍醐寺の復興・繁栄を伝える。

重要文化財「醍醐花見短冊」安土桃山時代、慶長3年(1598)、醍醐寺蔵

重要文化財「醍醐花見短冊」安土桃山時代、慶長3年(1598)、醍醐寺蔵

「金天目・金天目台」安土桃山時代、醍醐寺蔵

「金天目・金天目台」安土桃山時代、醍醐寺蔵

重要文化財「扇面散図屏風」俵屋宗達筆、江戸時代、醍醐寺蔵

重要文化財「扇面散図屏風」俵屋宗達筆、江戸時代、醍醐寺蔵

重要文化財「三宝院表書院障壁画 柳草花図(上段之間)」安土桃山時代、醍醐寺蔵

重要文化財「三宝院表書院障壁画 柳草花図(上段之間)」安土桃山時代、醍醐寺蔵

醍醐寺の変遷を寺宝で辿っていく『京都・醍醐寺 ―真言密教の宇宙―』。東京展は2018年9月19日(水)~11月11日(日)にサントリー美術館で、福岡展は2019年1月29日(火)~3月24日(日)に九州国立博物館で開催される。中国の人々をも魅了した、奥深い密教美術の世界をぜひ体感してもらいたい。

イベント情報

京都・醍醐寺 ―真言密教の宇宙―
【東京展】
会期:2018年9月19日(水)~11月11日(日)

会場:サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4)

【福岡展】

会期:2019年1月29日(火)~3月24日(日)
会場:九州国立博物館(福岡県太宰府市石坂4-7-2)

展覧会公式HP:
http://daigoji.exhn.jp/​
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