s**t kingz 新作舞台『The Library』 ーー僕たちの10年が詰まった「本」の続きを書き続けたい
s**t kingz 撮影=森好弘
昨年、結成10周年を迎えた4人組ダンスパフォーマンスチーム・s**t kingz(シットキングス)。マライア・キャリーをはじめとする著名アーティストのサポートのみならず、アジアやアメリカ、ヨーロッパでのワークショップ、単独公演での全国ツアーなど、ダンスを軸としたさまざまな活動でそのフィールドを広げ続けている。そんな彼らは、セリフがなくダンスのみでストーリーを展開する "無言芝居"を、2013年から三度に渡り上演してきた。前作から2年ぶりとなる新作舞台 『The Library』は、「図書館を舞台に巻き起こる”男の友情”ストーリー」。10年の歳月で深まった彼らの絆から、どんなエンターテイメントが生まれるのだろうか? このインタビューでは新作公演を楽しむためのヒントを、4人の言葉をもとに探っていこう。
ーー『Wonderful Clunker -素晴らしきポンコツ-』以来2年ぶりとなる新作"無言芝居" 『The Library』 が9月からスタートしますが、前作からの2年間、振り返ってみていかがですか?
shoji : 激動の2年間でした! まず、昨年、夏にチームとして初めて、いわゆる夏フェスに出演させていただきました。あと、秋には夜の金閣寺の前で、和楽器の演奏に合わせて踊らせていただきました。そして、昨年末にはビルボードライブで生バンドセットでの単独公演をさせていただきました。初体験がたくさん詰まった2年間だったなぁと思います。
s**t kingz 撮影=森好弘
ーー 初体験でいうと、4人揃って全国を回るワークショップツアーでは、初めてビギナー向けのクラスを開講されたそうですね。
kazuki : 以前から、ダンスをやっていない方も僕らを応援してくださっていることを実感していて、そんな方たちにも気軽に踊って欲しいなという気持ちがありました。ビギナークラスは以前からやってみたいと思っていたので、実現して嬉しいですね。これをキッカケに、ダンスを観ることもs**t kingzのことももっと身近に感じてもらえたらいいなと思います。
NOPPO : 実際にレッスンをしてみると、受けに来てくれるみなさんの吸収が早いです。僕がちょっとふざけたりしても笑って対応してくれる、心の余裕もありますし(笑) 、一口にビギナーといってもいろんな方がいらっしゃるので、教える僕たちも油断せず、みなさんの反応を肌で感じながらレッスンしたいなと思っています。
s**t kingz 撮影=森好弘
ーー 数多くの経験を経て、2年ぶりの公演に挑まれるわけですが、ダンスだけで物語を進める“無言芝居”とセリフがある通常のお芝居と異なる部分や、特に工夫しなければならない部分はどこでしょうか。
NOPPO : 体で表現する上では、「わかりやすくしすぎないほうが面白い」と思うんです。お客さんの目をどこかに注目させたい時に、指差すんじゃなく別の動きで表せないだろうか、というのはリハーサルでよく話し合ってますね。
Oguri : オーバーにやりすぎるとくどい場合もある気がするんです。かと言ってお客さんが「?」となるのも良くないので、「きっとこういうことなんだろうな」と少し想像してもらえるような、動きを読みとる楽しさを意識しています。
shoji : 観る人によっても「わかりやすい」「わかりにくい」の感覚が違ったりしますし、その微妙なボーダーラインを何度も協議しますね。喋らないぶん、このシーンは誰を目線で追っていればストーリーが伝わるのか、そういう細かい点も気を遣いながら作っていきます。
s**t kingz 撮影=森好弘
ーー s**t kingzが作り上げる無言芝居では、これまで「Bar」「工場」「トイレ」などユニークな場所が舞台に選ばれています。そして今回は「図書館」。この舞台設定はどのように決めているのでしょうか。
shoji : 面白そうなシチュエーションをたくさん挙げてみて、その中から「この設定ならこういうパフォーマンスができそうだね」というのを話し合いながら、今の僕たちにいちばん合いそうなものを選んでいます。今回の「図書館」については、僕らの10年の軌跡が詰まった「本」の続きをみんなで書こう! という発想から、「本」がたくさんある図書館になりました。
ーーちなみに s**t kingzのみなさんが図書館に足を運ばれることはありますか?
Oguri : 最後に図書館に行ったのは高校3年生のころですかね。甘酸っぱい恋の思い出なんかは全くなくて、ただ受験勉強をしてただけですね(笑)。
NOPPO : 俺は大学生のころ、図書館を寝所にしてました……(笑)。
shoji : 僕も大学生のころ、課題を出すための資料を探しに行ってたくらいですね。今回の舞台のプロモーションビデオは図書館で撮ったんですけど、久しぶりでした。
kazuki : 僕らが知ってる図書館と違ったよね。ビデオの中では本に「貸出カード」がついてるんですけど、実際はもうカードではなくて、本を借りるときに自分で機械を操作するんですよ。
shoji : 逆に、小さい子どもたちが僕らのプロモーションビデオを観たら、「本についてるあのカード何?」って思うかもしれないね。
s**t kingz 撮影=森好弘
ーー なるほど。『The Library』の音楽についてですが、この公演のためにグラミー賞にノミネートされた日本人プロデューサーのstarRo(スターロー)と、LAのラッパー・Duckwrthがテーマソングを書き下ろしています。この2人に依頼するまでにはどういった経緯があったのでしょうか。
Oguri : この舞台のプロモーションビデオを撮るにあたって、「オリジナル楽曲を作りたい」という思いを担当の方に相談した時に、参考楽曲としてstarRoさんの 「Yams feat. Masego」 とDuckwrthの「MICHUUL.」を挙げていたんです。すると、後日、starRoさんが直々に楽曲を作ってくださることになって。starRoさんが楽曲に合うラッパーを探してくださるとのことで待っていたら、starRoさんが選んだラッパーがまさかのDuckwrthだったんです!
shoji : starRoさんは僕らがDuckwrthの楽曲を挙げていたのを知らなかったのに、偶然ですよ!願ったり叶ったりです。
Oguri : 楽曲の完成に合わせて、starRoさんとDuckwrthを招いて東京でコラボライブを行ったのですが、Duckwrthのライブパートの最後のところで僕らを呼び込んでもらって、このテーマソングを披露しました。曲の序盤はDuckwrthのラップに乗せて僕ら4人でプロモーションビデオの再現をして、最後にはみんなで一緒にセッションするという。
NOPPO : Duckwrthはダンスもできるんですが、ノリがズルいくらいかっこいいですし、オラオラしていなくて良いオーラを纏ってるし、スタイルも抜群だし、あとオシャレです! ずっと彼の洋服を見ちゃいました。
s**t kingz 撮影=森好弘
ーー そんな特別な夜、目撃したかったです……。ところで、みなさんは日頃さまざまな音楽や舞台、小説、映画などに触れ、ご自身の作品に活かしていらっしゃると思うのですが、最近目にした芸術作品で印象深かったものがあれば教えてください。
Oguri : 小野寺修二さんのカンパニーデラシネラの舞台ですね。「椿姫」と「分身」の2本立てで上演されていたときに「椿姫」を観に行きました。ダンスのジャンルとしてはコンテンポラリーに近いんですけど、激しく動かなくても、何気ない動きを何人かで同時にするとすごく面白い見えかたをするんです。
shoji : 僕は「椿姫」と「分身」どちらも観ることができたのですが、演者のみなさんのダンスがすごく自然で「人間らしい」んです。それまでコンテンポラリーダンスに抱いていた「難しい」というイメージが変わって、気負わずに観て楽しむことができました。
s**t kingz 撮影=森好弘
ーー さまざまなものに日々刺激を受けながら、新作舞台 『The Library』をこれから作られるわけですが、来場者のみなさんにはどんなふうに楽しんでもらいたいですか。
shoji : ダンスやs**t kingzのことを知らなくても、ふらっと来ていただけたら笑えて楽しめて、嫌なことも忘れて帰れるようなものにしたいなと思っています。s**t kingzとして培ってきたものももちろんなんですけど、とにかく観に来てくださるかたの毎日が少しでも明るくなるような要素を詰め込むので、気楽に観に来てほしいです。心を裸にして!(笑)
Oguri : 心は裸で、服はちょっとオシャレして来てもらえると嬉しいですね!(笑) 「s**t kingzの舞台、何着て行こう?」ってウキウキしてもらいたい。
kazuki : グッズのTシャツを着てもらえたら間違いないですね!
NOPPO : 現段階ではストーリーが完成していて、これから楽曲を決めたりダンスのリハーサルに入っていくんですが、10周年の僕らが贈る舞台なので特別な気合いもあります。初めて僕らを観る方には、公演のあとに「あの人のあの動き、おかしくて笑っちゃったよね〜」と、帰り道の話の種にしてもらえたら嬉しいです。もちろん、これまでの僕らを知っているかたにも「s**t kingzってこんなこともできるんだ!」と思ってもらえるような、チャレンジもしていきたいですね。
ーー "The Library"、楽しみにしています!ありがとうございました。
s**t kingz 撮影=森好弘
取材・文=河嶋奈津実 写真=森好弘