『東美アートフェア2018』が開幕! 美術商や注目アーティストと出会って話せる、3日間限定のアートイベントをレポート
会場風景
2018年10月12日から14日までの3日間、東京・新橋の東京美術倶楽部にて、『2018 東美アートフェア』が開催されている。古美術、現代美術、工芸など多岐のジャンルにわたる美術商100店以上が一堂に集まる毎年恒例のこの催し。17回目の今年は「世界が愛した日本美術」をテーマに、今、世界から注目の集まる日本美術の一級品を間近に観ることができる。初日プレスツアーの様子を、ひと足早くレポートしよう。
画廊巡りの入り口にもなる、美術商と出会える恒例イベント
創立100年以上を誇る東京美術倶楽部を会場に行われる『東美アートフェア』。普段、美術館や美術展に足を運ぶアートウォッチャーであっても、このイベントを知らないという方もいるかもしれない。かく言う筆者もそんなひとりだったのだが、会場に足を運ぶと、開場前なのに行列がズラリ。確かな審美眼をお持ちであろう紳士淑女の方々、感度の高そうな外国人の方々、アートフリークであろう若者たち。その属性はさまざまだ。
各階の入り口には生け花が置かれている
会場は1階・3階・4階に各社のブースが設けられ、その数はなんと約100か所。その多くが日本美術や東洋美術を扱っており、ジャンルは古美術、近代美術、現代美術、茶道具、工芸など様々。1か所あたり5分で見たとしても合計8時間以上かかるので、じっくり見たい人は開場時間を目指して行った方がいいだろう。
ここは展覧会の場でも商談の場でもあり、そして出会いの場でもある。美術商の方々との出会いはもちろん、現代美術を扱うブースには各店イチオシのアーティスト本人が在廊していることもあり、作品に込めた思いを直接聞くことができる。
会場風景
さて、プレスツアーでは、約30分で計6つのブースを訪ねた。まず訪れたのは「ギャラリー竹柳堂」のブースだ。漆芸や近代工芸を扱うこの店舗では、漆芸家・三田村自芳の《百合花蒔絵文庫》の説明を聞いた。美術商の藤澤繁さんは「文庫というのはだいたい中は真っ黒なもんなんだけど……」とその場で蓋を裏返し、内側の細工を見せてくれた。この時は駆け足だったので簡単な話しか聞けなかったが、「聞いてくださったら何でも話しますよ」と藤沢さん。藤沢さんは漆工関係の第一人者でもあり、普段ならなかなか近付けそうにもない方だが、ここなら近い距離で話ができる。
三田村自芳の《百合花蒔絵文庫》の説明をしてくれた「ギャラリー竹柳堂」の藤澤繁さん
次に伺ったのは、絵画を扱う「柳井美術」のブースだ。ここでは作家・瀧下和之の作品が展示され、この日は作家本人の姿もあった。「和のモチーフを洋画の技法で描いています。紙は使わず、板に描いた線を彫刻刀で掘って、和紙のように見えるところは和紙っぽく描いています」と瀧下さん。色はアクリル絵の具で塗ったものだという。今回展示されているのは富岳(富士山)をテーマにした作品で、風神や雷神、青鬼や赤鬼など、伝統的な和のモチーフがコミカルかつかわいらしく描かれている。
自らの作品を説明する瀧下和之さん
瀧下和之さんの作品
続いて「西楽堂」のブースを訪問。ここでは“最後の浮世絵師”と呼ばれる小林清親の作品を展示している。「皆さんの想像する江戸時代の浮世絵という感じではないかもしれないが、明治の味、最後の浮世絵氏の粋をご覧頂きたい」と、美術商・西浩之さん。「清親は、水に映る影のように光と影の描写がすごくうまい絵師です。広重にかなり影響を受けていて、細かな描写が上手」と西邦子さんも併せて説明する。また、こちらには清親の弟子で早逝の絵師だった井上安治の作品も展示されている。
「西楽堂」の西浩之さん
世界が愛した「幻のやきもの」眞葛焼も出品
茶道具を扱う「藤井香雲堂」では、美術商・藤井和久さんが、初代宮川香山(眞葛香山)の《春景の図 椿に小禽 高浮彫花瓶 一対》を前に眞葛焼の解説をしてくれた。明治初期に横浜で生まれた眞葛焼は、陶器の表面を動植物の造形物などで装飾した高浮彫を発明。それによって世界中の万博で高い評価を受け、「MAKUZU WARE」の名を轟かせたという。眞葛焼は横浜空襲によって多くが失われたため「幻のやきもの」と言われるが、高浮彫の作品は欧米に渡っていたため、それが近年里帰りを果たして注目を浴びている。作品に近づいてみると、少し触れれば壊れてしまいそうな細工の細かさに、超絶技巧の凄みが一層伝わってくる。
「藤井香雲堂」の藤井和久さん
初代宮川香山(眞葛香山)《春景の図 椿に小禽 高浮彫花瓶 一対》
次の「日興堂」のブースで抽象画家・白髪一雄と注目の若手作家の作品を見た後、そのお隣の「大口美術店 花筥」のブースへ。こちらでは、竹工芸師・三村竹萌の作品が展示され、本人の姿もあった。三村さんの新作は細い竹の紐で編んだ造形物に漆で塗り固めた“尻尾”を付け、金粉を使ってメタリック感を表現したというもの。和の伝統をモダンアートに昇華した作品は、確かに海外で表されるのも納得できる。
三村竹萌さんの作品
最後は、東洋古陶磁を扱う「井上オリエンタルアート」のブースを訪問。こちらでは、主に中国で作られた手の平サイズの陶磁器を拝見してツアーは終了した。
「井上オリエンタルアート」の展示
ちなみに、2階には茶室「済美庵」があり、500円で抹茶をいただくことができる。美しい庭園もあるので、鑑賞途中に足を止めてみてはいかがだろう。
『2018 東美アートフェア』は、10月14日までの開催。わずか3日間のイベントなので、この貴重な機会を逃さぬよう。
イベント情報
日程:2018年10月12日(金)11:00〜20:00、13日(土)11:00〜18:00、14日(日)11:00〜17:00
会場:東京美術倶楽部 東美ミュージアム
入場料:一般1,000 円(700円)/学生(高校生以上)500 円
※ ()内は前売券、または20名以上の団体券
※ 中学生以下、障害者手帳をご持参の方(付添者1名を含む)は無料。
※ 割引・無料には入館の際、学生証、障害者手帳をご提示ください。
※ は入場当日に限り有効です。
出展者:東京美術商協同組合員102軒
出品物:絵画(日本画・洋画)、陶磁器、茶道具、屏風、蒔絵、彫刻、仏教美術、その他美術工芸品