『ラファエル前派の軌跡展』が三菱一号館美術館で開催 ヴィクトリア朝の英国を代表する芸術家が一堂に

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アート
2018.10.22
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》1863-68年頃、 油彩/カンヴァス、83.8×71.2 cm、ラッセル=コーツ美術館   (C) Russell-Cotes Art Gallery & Museum, Bournemouth

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》1863-68年頃、 油彩/カンヴァス、83.8×71.2 cm、ラッセル=コーツ美術館 (C) Russell-Cotes Art Gallery & Museum, Bournemouth

『ラファエル前派の軌跡展』が、2019年3月14日(木)〜6月9日(日)まで、東京・千代田区の三菱一号館美術館で開催される。

1848年、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティらが結成したラファエル前派同盟は、英国美術の全面的な刷新をめざして、世の中にすさまじい衝撃をもたらした。この前衛芸術家たちの作品は、観る者の心に訴えかけ、広く共感を呼んだ。人々は、社会の基盤が移りゆくなかで、彼らの芸術に大きな意義を見出したのだ。

その精神的な指導者であるジョン・ラスキンは、あらゆる人にかかわる芸術の必要性を説く一方で、彼らとエドワード・バーン=ジョーンズやウィリアム・モリスら、そして偉大な風景画家J.M.W.ターナーとを関連づけて考察した。本展では、英米の美術館に所蔵される油彩画や水彩画、素描、ステンドグラス、タペストリ、家具など約150点を通じて、彼らの功績をたどり、この時代のゆたかな成果を展覧する。

ジョン・ラスキン《モンブランの雪――サン・ジェルヴェ・レ・バンで》1849年、 鉛筆・水彩・ボディカラー/紙、25.1×38.4 cm、ラスキン財団(ランカスター大学ラスキン図書館) (C) Ruskin Foundation (Ruskin Library, Lancaster University)

ジョン・ラスキン《モンブランの雪――サン・ジェルヴェ・レ・バンで》1849年、 鉛筆・水彩・ボディカラー/紙、25.1×38.4 cm、ラスキン財団(ランカスター大学ラスキン図書館) (C) Ruskin Foundation (Ruskin Library, Lancaster University)

見どころ1:ヴィクトリア朝の英国を代表する芸術家が一堂に

ラスキンの生誕200年を記念する本展には、彼が見出し、当時のアート・シーンの中心へと引き上げた、前衛芸術家の作品が集う。ターナー《カレの砂浜ーー引き潮時の餌採り》、ロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》、バーン=ジョーンズ《赦しの樹》などの傑作が、海を越えて一堂に会する。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《カレの砂浜――引き潮時の餌採り》1830年、 油彩/カンヴァス、68.8×103.8 cm、ベリ美術館 (C) Bury Art Museum, Greater Manchester, UK

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《カレの砂浜――引き潮時の餌採り》1830年、 油彩/カンヴァス、68.8×103.8 cm、ベリ美術館 (C) Bury Art Museum, Greater Manchester, UK

エドワード・バーン=ジョーンズ《赦しの樹》1881-82年、油彩/カンヴァス、186×111 cm、 リヴァプール国立美術館、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー (C) National Museums Liverpool, Lady Lever Art Gallery

エドワード・バーン=ジョーンズ《赦しの樹》1881-82年、油彩/カンヴァス、186×111 cm、 リヴァプール国立美術館、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー (C) National Museums Liverpool, Lady Lever Art Gallery

見どころ2:すべての人を芸術に近づけた、ラスキンのまなざし

ターナーの先駆的な表現に正当な評価を与え、いち早く前衛のラファエル前派同盟を擁護したラスキン。彼の力強い言葉は、あたたかく、親しみに満ちていて、人々の心を捉えた。とりわけ、その近代社会批判は、モリスらを手工芸の復興へと駆り立て、アーツ・アンド・クラフツ運動につながってゆく。ラスキンの眼を通して、19世紀の英国美術を概観する。

モリス・マーシャル・フォークナー商会《シンデレラ(連作タイル画)――「灰かぶり」と呼ばれていた娘がガラスの靴を与えられ、やがて王女となる物語》1863-64年、6枚の錫釉陶器タイルからなるパネル、56×138 cm、リヴァプール国立美術館、 ウォーカー・アート・ギャラリー (C) National Museums Liverpool, Walker Art Gallery

モリス・マーシャル・フォークナー商会《シンデレラ(連作タイル画)――「灰かぶり」と呼ばれていた娘がガラスの靴を与えられ、やがて王女となる物語》1863-64年、6枚の錫釉陶器タイルからなるパネル、56×138 cm、リヴァプール国立美術館、 ウォーカー・アート・ギャラリー (C) National Museums Liverpool, Walker Art Gallery

モリス商会《3人掛けソファ》1880年頃、クルミ材・毛織生地、96.2×221×77.2 cm、 リヴァプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー (C) National Museums Liverpool, Walker Art Gallery

モリス商会《3人掛けソファ》1880年頃、クルミ材・毛織生地、96.2×221×77.2 cm、 リヴァプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー (C) National Museums Liverpool, Walker Art Gallery

見どころ3:芽生えーーラスキンのまいた種

ラスキンは、美術界の中心となる人物のみに目を注いだわけではない。その思想は、さまざまな周縁の芸術家にも浸透して、豊かな実りをもたらした。本展では、ラスキンが指し示した道から、新たな試みが芽生え、発展してゆくさまを、多彩な秀作によって跡づける。

ジョン・エヴァレット・ミレイ《滝》1853年、油彩/板、23.2×33.3 cm、デラウェア美術館 (C) Delaware Art Museum, Samuel and Mary R. Bancroft Memorial, 1935

ジョン・エヴァレット・ミレイ《滝》1853年、油彩/板、23.2×33.3 cm、デラウェア美術館 (C) Delaware Art Museum, Samuel and Mary R. Bancroft Memorial, 1935

フレデリック・レイトン《母と子(サクランボ)》1864-65年頃、油彩/カンヴァス、48.2×82 cm、 ブラックバーン美術館 (C) Blackburn Museum and Art Gallery

フレデリック・レイトン《母と子(サクランボ)》1864-65年頃、油彩/カンヴァス、48.2×82 cm、 ブラックバーン美術館 (C) Blackburn Museum and Art Gallery

アーサー・ヒューズ《リュートのひび(不和の兆し)》1861-62年、油彩/カンヴァス、52×92 cm、 タリー・ハウス美術館 (C) Tullie House Museum and Art Gallery,Carlisle,UK

アーサー・ヒューズ《リュートのひび(不和の兆し)》1861-62年、油彩/カンヴァス、52×92 cm、 タリー・ハウス美術館 (C) Tullie House Museum and Art Gallery,Carlisle,UK

エドワード・バーン=ジョーンズ《慈悲深き騎士》1863年、水彩、100.3×69.2 cm、 バーミンガム美術館 (C) Birmingham Museums Trust on behalf of Birmingham City Council

エドワード・バーン=ジョーンズ《慈悲深き騎士》1863年、水彩、100.3×69.2 cm、 バーミンガム美術館 (C) Birmingham Museums Trust on behalf of Birmingham City Council

イベント情報

ラファエル前派の軌跡展
会期:2019年3月14日(木)~6月9日(日)
会場:三菱一号館美術館
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで(祝日を除く金曜、第2水曜、6月3日~7日は21:00まで)
休館日:月曜日(但し、4月29日、5月6日、6月3日と、トークフリーデーの3月25日、5月27日は開館)  
公式サイト:https://mimt.jp/ppr/
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