宝塚歌劇団所属演出家・原田諒を迎え新解釈のオペラ『椿姫』上演が決定 指揮ジャコモ・サグリパンティが初来日
イラストレーターの宇野亞喜良が書き下ろしたキーヴィジュアル
2020年2月19日(水)~23日(日)まで東京文化会館大ホールにて東京二期会オペラ劇場『椿姫』が上演されることが決定した。演出には、オペラ初演出の宝塚歌劇団所属演出家・原田諒を迎え、新解釈で2020年の『椿姫』を誕生させるという。指揮には、今欧州で注目を集めているイタリア人指揮者ジャコモ・サグリパンティが初来日する。
『椿姫』はヴェルディが1853年に発表した名作オペラ。東京二期会11年ぶりの新制作となる本公演には、世界で活躍する日本屈指のソプラノ・大村博美のヴィオレッタをはじめ、日本を代表する東京二期会精鋭の歌手がキャスティング。「乾杯の歌」など華麗でドラマティックなヴェルディの音楽の魅力を歌い上げる。キーヴィジュアルは日本を代表するイラストレーターの宇野亞喜良氏が書き下ろしたという。
指揮を務めるジャコモ・サグリパンティは、オペラ・アワード2016において最優秀若手指揮者に輝き、すでにパリ・オペラ座、バイエルン州立歌劇場はじめとする欧州一流の歌劇場の常連となっている。この後、英国ロイヤル・オペラでもデビューが決まっている彼が、本公演で初来日を果たす。
ジャコモ・サグリパンティ
演出を務める原田諒は、宝塚歌劇団に所属し、伝統に基づきながら新鮮な舞台を創造し、第42回読売演劇大賞優秀演出家賞・優秀作品賞、第43回菊田一夫演劇賞等多数受賞。オペラは初演出ながら造詣が深いという原田より、コメントが届いた。
原田諒(演出)
原田諒
今回の『椿姫』のお話を頂いた時、自分が宝塚で培ってきた美しさと品格のある舞台、「椿姫らしい」舞台を描き出すことが求められているんだろうなと感じました。
『椿姫』は時代物と世話物の両方の要素がある上に、レビュー的な部分もある作品だと思います。それらの要素がすべて入っているのが面白いですよね。これまでの舞台作りの経験と、二期会の皆さんの持ち味がうまく化学反応できる舞台にしたいと思っています。
『椿姫』に流れるテーマは、日本人がシンパシーを感じやすいものでもあると思います。たとえばヴィオレッタからアルフレードへの絶縁は、歌舞伎で言えば『寵釣瓶※』の縁切りの場のような「心にない愛想尽かし」ですよね。女は泣く泣く別れを告げ、男は彼女の気持ちも知らずに絶望し怒る。現代においてもそういう事件はありますよね。時代が変わろうと『椿姫』の魅力が色祖せないのは、そういった普遍的な人間ドラマが描かれているからだと思います。芝居は演じる人間の感情がいちばん大事です。それが心から発するものでないと、芝居は成り立ちません。舞台という虚構の世界、様式美の世界を、人間が息づくものにしないといけないと思います。そういった本質を見失うことなく、初心に帰って取り組みたいと考えています。
古典は新解釈できる面白さもあると思います。演出家としてだけではなく、ーオペラファンとして、皆さんの期待にお応えできるような「温故知新」の舞台を目指したいと思っています。焼き直しではない「新作の古典」を、自分なりに模索して作っていきたいです。
※「寵釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」:“吉原百人斬り”事件を基に吉原の世界を豪華絢棚に描いた三世河竹新七による世話物の名作。通称「寵釣瓶」。