梅棒、第10回公演は笑って笑ってちょっと泣ける昭和・平成への讃歌 『OFF THE WALL』が開幕

レポート
舞台
2020.2.7
 (C)角田大樹

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ダンス×演劇の極上パフォーマンス集団・梅棒による舞台「10th Anniversary『OFF THE WALL』」が2020年2月6日(木)より、東京・こくみん共済 coop ホール(全労済ホール)/スペース・ゼロにて開幕した。

記念すべき第10回公演はメンバー11名のみ出演の完全新作となる今回は「小学生」をモチーフに、梅棒ならではのバカバカしさ、熱さ、そしてエネルギーに溢れる、笑ってちょっと泣ける世界観を繰り広げるという。
初日直前に行われたゲネプロ(通し稽古)の模様をお伝えする。

懐かしい昭和、平成のJ-POPサウンドが流れる会場に登場したのは伊藤今人演じる博士。どうやら博士は宇宙人と交信しようと電波を探しているらしい……という設定だが、電波が宇宙人との交信を邪魔するのでスマホ・携帯電話の電源を落とすように、と観客に頼み、その流れから一部の観客をこれでもかといわんばかりにいじり倒していた(笑)。なお、ここでいじられた観客は後程忘れた頃にも何度となく博士に狙われていたので、ご油断めさるな、と付け加えておきたい(笑)。
そして博士の前説が終わるや否や、客席通路の至る所から梅棒メンバーがステージに走り込んできて、開幕を告げるように激しく楽しく踊り倒すのだった。

(C)角田大樹

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昭和の最後くらいの時代に公園や教室で遊ぶ子どもたち。子どもたちのグループにはボス的存在の子、その子分や中立派の子、クラスの委員長的女子もいる。その中のちょっと弱気な子の前に、ある日宇宙人が現れた! 宇宙人はその弱虫くんと仲良くなり、やがて他の子どもたちにも受け入れられていくが、輪の中に入れないボスくんはその状態を気に入らず、やがて宇宙人と弱虫くんの仲間割れを企むのだった―。

と、あらすじ的なことをしたためてはみたが、ここに書いてあることはほぼすべて、台詞ではなく梅棒メンバーのユニークかつ高難度なダンスとバックで流れる昭和、平成のJ-POPサウンドの歌詞だけで表現しているから、とにかく驚きの一言だ。その場面場面にぴたっと合う絶妙な選曲が笑いを引き起こし、こんなに人間の身体は自由自在に動かせるのか、自分もこんなに踊れたらと羨ましく感じるくらい、全員が個々に、数人の組で、そして全員で激しく踊る11名。

(C)角田大樹

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子どもならではの楽しさ、喜び、怒り、哀しみ、悔しさ、葛藤、欲望、そして友情が、様々なダンスで表現される。自分も子どもの頃こんな想いをしたなあ、とふとした瞬間に記憶が引き戻されることも。笑って笑って、最後にちょっと泣けるという本作の売り言葉に見事にハマってしまい、まさに昭和、平成時代を体感してきた身としてはエンディングで涙を抑えることが出来なかった。

本公演に向けて、伊藤今人からコメントが寄せられたので紹介しよう。

■伊藤今人(演出)

僕らギリギリ昭和世代が子どもの頃は、J-POPが全盛で流行した曲はみんな知っていてみんな歌える時代でした。対して今は、国民全員歌えちゃうようビッグヒットは生まれにくい状況にあります。

楽曲に限らず、あらゆるものを消費者側が選んで入手できるようになった現代において、幼い頃の”あるある”みたいなものも人それぞれ。今の子供たちは大人になった時の思い出話に花が咲きにくいんじゃないかなあって思ったりします。

梅棒第10回公演の出演者はメンバー11人のみ。全員が30代になったこのタイミングでの完全単独公演。最も我々らしい作品にするべく選んだテーマは「小学生」。
我々を産み、育んでくれた「昭和・平成」という時代への讃歌です。

令和になった今だから、そしてこの11人だけだからこそできる、ノスタルジーと馬鹿馬鹿しさに満ちた我々梅棒の全力投球を、ぜひ劇場で堪能してください!

(C)角田大樹

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取材・文=こむらさき 撮影=角田大樹

公演情報

梅棒 10th Anniversary『OFF THE WALL』
 
■日時・会場:
2020年2月6日(木)~16日(日) こくみん共済 coop ホール(全労済ホール)/スペース・ゼロ
 
■作・総合演出:伊藤今人
■振付:梅棒
■出演:伊藤今人、梅澤裕介、飯野高拓、鶴野輝一、遠山晶司、遠藤誠、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴
 
■公式ホームページ:http://umebou.daa.jp/10th_offthewall/
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