元日から京都で初笑い、久本雅美ら松竹新喜劇名作2本立て!
左から、藤山扇治郎、渋谷天外、久本雅美
八坂神社で初詣の後は、南座で初笑い!
京都四條・南座で2016年1月1日(金)~7日(木)まで、「初笑い 松竹新喜劇 新春お年玉公演」が上演される。昨年、劇団創立65周年に沸いた松竹新喜劇がおくる爆笑喜劇2本立て。南座で正月公演が行われるのは50年ぶりのことだ。一幕『えくぼ』は、座長の渋谷天外とゲストの久本雅美が夫婦役を務め、切なくも心温まる人情喜劇を披露する。2幕『浪花の夢 宝の入船』は誤解が誤解を呼ぶドタバタコメディ。劇中で賑々しい新年の挨拶がある他、入団3年目のホープ藤山扇治郎が祖父で“昭和の喜劇王”こと藤山寛美の当り役の一つに初挑戦する。公演に先立ち大阪市内で取材会が開かれ、座長の渋谷天外、藤山扇治郎、ゲストの久本雅美が意気込み語った。
丸福運送店の主人、福三(渋谷天外)は、かつてえくぼの可愛いホステスに惚れ込んでいた。しかしあっけなく失恋して以来、抜け殻状態に。見かねた兄夫婦が秋子(久本雅美)と結婚させるが、好きでもない秋子に福三は「顔を見てると飯がまずくなる」などと言い出す始末。福三のそんな態度にも秋子は愚痴もこぼさず、毎日真っ黒になりながら仕事に精を出していた。そんなある日、職を求めて男がやって来る……。
父が残した石灯篭を売り払い、それを元手に一旗揚げようと、近江・堅田から石工の源造(藤山扇治郎)が灯篭を担いで大坂へやってくる。運よく花街・北新地にある大梅屋の女房に売れたが、据え付けの際にしくじって揉めてしまう。その話を聞いていた米問屋備前屋の大旦那太左衛門は、ひょんなことから源造のおかげで大儲け。礼にと源造を家に招くが、すれ違いや行き違い、勘違いが一斉に押し寄せて、源造の登場が思わぬ事態に発展して……。
◎渋谷天外:コメント
松竹新喜劇座長の渋谷天外
―――『浪花の夢 宝の入船』は藤山寛美さんがお正月に好んで上演した演目。今作で扇治郎さんが祖父の十八番に挑みます。
彼を含め次代を担う若手がどんどん育ってまいりました。昔から役者の世界では、ちょっとしんどいなと思う役をやることでグッと実力が伸びる。役柄が役者を引っ張り上げるということがありまして。『浪花の夢 宝の入船』では扇治郎くんに、寛美さんの十八番という“重荷”を背負ってもらいます。
―――昨年7月と今年9月の新橋演舞場での公演に引き続き、ゲスト出演の久本雅美さんが、関西公演初登場です。
喜劇をされてる方なので、やっぱりセンスがいいですね。新喜劇の品というものをよく分かっていて、品を保ちながら自分の芝居を作って来る。『えくぼ』の秋子役では化粧で顔を崩したり、過去に演じた方々が色々な役作りをされてこられましたが、久本さんはどんな秋子を作り上げるのか楽しみにしています。結婚して3~5年も経つとたいていは連れ合いの顔が不細工に見えてくるもの。そういう意味では作り込まず、素顔のままでもいいんじゃないかな(笑)。松竹新喜劇が南座で元日から開けるのは、昭和34年以来57年ぶりです。八坂神社で初詣して、南座で福を持って帰ってもらいたいですね。
◎藤山扇治郎:コメント
大役に初挑戦する藤山扇治郎
―――寛美さんの当り役・源造役に初挑戦されます。
祖父・藤山寛美は追っても追いつかない神さまのような存在ですが、僕もおじいさんがやってきた面白い芝居ができる役者になることが一番の目標です。役作りの根幹は自己流ではなく、やはり祖父と同じ舞台に立たれてきた天外お兄さんたち諸先輩方から教えを伺うのが一番大事になってくると思います。お正月をお客様と分かち合えるのは素晴らしいこと。元日から元気になってもらって、またお芝居みたいなと思ってもらえるように精一杯頑張らせて頂きます。
―――主人公の源造は滋賀県・堅田の出身。扇治郎さんも堅田にお住まいとか。
そうなんです、源造と同じ堅田に住んでいます。そのご縁がありまして、先日はロードバイクでびわ湖を一周するイベントに一泊二日で参加してきました。彦根を出発して堅田を通り、また彦根に返る160キロの道のり。自転車でもへとへとでしたが、源造は滋賀県から大阪までの70、80キロを石を担ぎながら腹ペコで歩いてきた。江戸と平成では時代や町の風景も違いますが、“道中は疲れる”という役柄の気持ちは、勉強になりました(笑)。
―――久本雅美さんとの共演について。
いつもテレビで観ている方なので不思議な感じですが、京都でまたご一緒できるのが嬉しいです。久本お姉さんは凄くキレイな顔立ちをされているのに気持ちが三枚目、だから面白い。僕のおばさん(藤山直美)も顔はキレイ目ですが、気持ち的には下町のおばちゃん的な部分を持っているので、そこは久本お姉さんも同じ。女優さんが喜劇をされることは難しいと思うんですけど、劇団にも溶け込んでいて素晴らしい役者さんだなと感動しました。
◎久本雅美:コメント
ゲスト出演の久本雅美
―――『えくぼ』では主人公の妻、秋子を演じます。
好きで結婚してもらったわけじゃないので切ないですよね。仕事で認めて貰おうと踏ん張ったり、グッとくる場面もある。夫婦にとって一番何が大事なのかと考えさせられる、ホットで素晴らしい芝居です。普段、健気な姿を見せることがないので自分でも楽しみですね。
―――「顔を見ると飯がまずくなる」秋子の役作りについて。
私自身は飯が食えないほどブサイクではないと思うので、メイクで何とかするとか……(場のムードに)半笑いするの止めてもらっていいですか(笑)。全然関係ないですけど「嗚呼!花の応援団」という漫画の登場人物で、めっちゃブサイクな女が「久本」っていう名前なんですよ。どういうことやねん!と思いましたけど。じゃあ「自分を参考にさせていただきます!」ってバカヤロウ(笑)。
―――創立65周年を誇る、松竹新喜劇の魅力とは。
笑って泣かしてまた笑わせるのは、松竹新喜劇でしか描けない世界なんじゃないかなと。最後にドーンと沸かせて幕が下りる。大阪の小気味良い笑いと、その潔さが大好き。お笑い目指す者にとっては基本中の基本ですので、演劇仲間にも「観たほうがいい」と言っています。
―――座長・渋谷天外さん、藤山扇治郎さんとは3回目の共演です。
扇ちゃんはペットにしたいぐらい可愛い。前回、カステラを食べるシーンがあって稽古場では発泡スチロールを使っていたんですが、本気で食べだしたんですよ。それぐらい真面目で天然ちゃん(笑)。若いうちからいい役が付くと、周りから焼きもちでも焼かれそうですが、全然そんなことはない。誠実で人懐っこい扇ちゃんを見てると、みんなが守ってやろう、応援してやろうという気持ちになる。人間的な魅力に溢れた、これからの新喜劇になくてはならない存在です。
天外兄さんは座長としての心配りはもちろん、お客さんや場の空気によって芝居もどんどん変わっていく。「リアルはいいけど、シリアスはアカンで」と前作でも喜劇の神髄を学ばせて頂きました。当初は伝統ある劇団に参加させて頂くことに思い悩みもしましたが、外からの風を受け入れることが大事なんだからと、大きな心で受け止めて貰えた。いつも天外兄さんと組むときは緊張……嘘つきました(笑)。ほんまに自由にやらせて頂けるので。今回も、胸をお借りして自分らしく演じられればと思います。
―――新年の幕開けにぴったりな楽しい公演になりそうです。
お正月は旅行など色々予定を立てられるかと思いますが、新春は南座で初笑いして、良い年明けにしよう!と思って頂けるように全力で頑張ります。今回、生まれて初めて元旦から舞台に立たせて頂くので、お客様と一緒に初笑いして、私自身も良い年明けになればと思います。
ノリ突込みで沸かせる久本さん、話し出すと独特の天然オーラで周囲を和ませる扇治郎さん。そして、2人を大らかな笑顔で見守る天外さん。三者三様の魅力で当日も爆笑と感動の渦に巻き込んでくれるはず!
「初笑い 松竹新喜劇 新春お年玉公演」一幕『えくぼ』、二幕『浪花の夢 宝の入船』
一、『えくぼ』<合作:茂林寺文、館直志 演出:川浪ナミヲ>