齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第八十九沼 『地上と空を完全制覇!ドローン沼!』

コラム
音楽
2021.2.12

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「welcome to THE沼!」

沼。

皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?

私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。

一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れること

という言葉で比喩される。

底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。

これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。

毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。

齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第八十九沼 『地上と空を完全制覇!ドローン沼!』

最近、割と売れてる。私がプロデュースするgalcid(妻のソロユニット)がキテる。

galcidは海外向けに結成したプロジェクトだが、ここのところ日本のコアなファンが応援してくれている。ありがとう。

昨年はドイツの大名門レーベルForce inc.からシングルを。

そして同じくALVA NOTOなどIDMを中心とした頭いい系電子音楽のこれまた超名門レーベルMille Plateauxから、

なんと!!齋藤夫婦新ユニット。

その名も「SAITO」を結成し、二枚組のフルアルバム”Downfall”をリリースした。

しかし、全く予期せぬコロナ禍に巻き込まれ、プレス工場がストップし、

流通会社も一時閉鎖という信じられない事態に追い込まれた。

が、

時期をずらし、当初は昨年の1月には発売されているはずだった作品を秋に変更し、やっと日本にも輸入された。

コロナ禍で緊急事態宣言が出てしまい、我々のような音楽家やエンターテインメント事業者は「ライブ」をする場所を失なった。

そこで、真っ先に取り入れたのが自宅からの配信システムだ。

昨年は4月からヨーロッパの大規模ツアーが予定されていたgalcid、先方は最後の最後まで頑張ってくれたが、残念ながら全ての公演を中止にせざるをえなくなってしまった。

しかし、配信システムを利用し、自宅から多くのライブ配信を行った。

そ・こ・で........ヤバい沼に入ってしまった。

そう、「カメラ沼」だ。

私たちのスタジオでは、4Kビデオカメラ数台の他、試しに、動画も撮れる一眼レフカメラを導入した。

それが、その後の泥沼に落ちていくとも知らないで。

詳しくはこちら

https://spice.eplus.jp/articles/281100

一眼レフカメラは悪魔だ。

まるで、映像を魔法のように操り撮影する事ができる。

最もヤバいのがレンズだ!!

レンズとカメラの組み合わせで、脳内に描いたイメージを自在に表現できるという事を知ってしまった。

私の使用しているカメラは、けっして高級機の部類に入るものではない。

しかし、全てをマニュアルモードで行えば、まるで絵を描くようににイメージを表現する事ができるのだ。

しかも、音楽同様に「不正解が無い」というのも素晴らしく自由な世界だと感じた。

 

まずは真っ先にジンバル(カメラのブレを失くす魔法のスタビライザー)を導入。

はっきり言ってカメラより高いw

その次に、レールを導入。

レールで撮影すると、被写体と水平を保ちながら滑らかで美しい映像が撮影できる。

そして次々に届くレンズ。galcid(妻)が呆れている。

その呆れ顔を「あっ!」と言わせたくて、密かにミュージックビデオの制作を企て、コンテを制作し撮影した。

動画編集ソフトはAdobe Premiereというメジャーなもの。

しかも、自分を追い込むために、Adobeの全商品(有名なPhotoshopやイラストレーター他)が入ったフルコンボを導入!(バカじゃないの?)

私は音楽プロデューサーだが、音楽は作らないの。

むしろ壊す方。

だからいいの。

映像に手を出してもいいの。(w

そして一本目のミュージックビデオを撮影し、その日のうちに編集した作品を見たgalcidが言った。

 

「許す」

 

何が許すだw。

私はその後も毎日一眼を肌身離さずさず持ち歩き、独自にカメラのテクニックを学んだ。

釣りを始めた時もそうだった。40歳にして釣りを始めたのだが、初心者だって言うのが恥ずかしくて誰にも聞けない。

だから、私は毎日毎日、人知れず、近所の川に出かけて練習していた。

YouTubeを見て研究とか一切無しで。

おかげで、オリジナルの釣りスタイルを習得した。

音楽も全くそうだった。

偏っているが間違いでは無い。

 

ロジックを習得すれば、効率の良い作品に仕上がる事は言うまでもない。

しかし、それは同時に「縛り」になるどころか、「何かの模倣」になってしまう恐れがある。

私は「ド」と「ドのシャープ」の間に無限の音があるから電子楽器が大好きなんだ。

私の教科書は、「日野日出志(全部)」「魔太郎が来る!」「まことちゃん」だ。これで十分だろう!

共通言語を持ち合わせない音楽は激しくオリジナリティーが強い。私の最大の武器だ。

 

さて、私はやろうとする物事を口に出して宣言する事で自分を追い込む系人物だ。

だから、ミュージックビデオを毎月一本撮影するとソーシャルメディアで宣言。

そして有言実行した。こちらが2作目のミュージックビデオ。

 
是非是非チャンネル登録をお願いします!まだまだ日本では認知度低いので、皆さんのお力で是非!

そしてこの先日発表した2本めのgalcidのビデオはリリースされるやいなや、早速オランダのメディアに取り上げられ賞賛の声をいただいた。

素人が作った2本目のビデオだよ。

オランダのメディア「AVO Magazine」より抜粋。狙うはアカデミー監督賞。マジで。

オランダのメディア「AVO Magazine」より抜粋。狙うはアカデミー監督賞。マジで。

もし私が映像の学校で学んでいたら、そんな事にはならなかったと思うよ。

きっと、途中で作品作りをやめていたと思う。

素人だからこそ、常識が無いんだよ。

常識はぶち破るために存在する壁なんだから。

68年生まれの私は、子供の頃に70年代を過ごしたため、知らず知らずのうちに当時の映画の影響がモロに出ている。

例えばストップモーションの多用だ。

これは、石原裕次郎さんとかショーケン、そして松田優作さんなんかがエンディングで必ずストップして終わってたでしょ?

アレを利用してgalcidを踊らせてるんだよ。

galcidは動いているだけで、現場では音楽すら流してないの。

ソーシャルディスタンスを保てって政府に言われているから、役者を頼めないので息子を出演させた。

ギャラはコロコロコミックと焼き鳥(皮)二本で

ボス

ボス

そんなこんなで他の映像も毎週2本アップしている。

一つはgalcidが毎週一曲新曲をアップしているパトレオンの告知動画。

これは1ショットで撮影してるからなんて事ない。

で、もう一つが毎週火曜日にアップしている、ほぼ無声VLOG「Daily life of galcid」

こっちは、私がずっとカメラを持ち続けていて、日常のgalcidや家の様子、そして出来事をVLOG的に断片を撮ってつないでいるの。

galcidに言わせれば「油断も隙もありゃしない」っていうけど、油断してるところを撮った方が面白いじゃない?

galcidが腹巻姿でお茶漬け食べながらトラック作ってる映像とか面白いじゃない?

だから私は家族から変態オヂサン呼ばわりされているわけですよ。

気がついたらカメラを持って常に撮影してるからねw

Daily life of galcidはこんな感じ。1分でサクっと1週間の私たちが見れるよ。

そしてつい先日、galcidのセカンドフルアルバムの発売がアナウンスされたと同時に、DISKUNIONでは予約チャートのトップ5にランクイン

まさか、日本で売れるとは思っていなかった(自分たち)

まさか、日本で売れるとは思っていなかった(自分たち)

そしてイギリスのJUNORECORDでは今週のアルバムTOP10にランクインされると言う、未だかつてない勢いをみせ始めたのであった。

すっげ〜丁寧にリスペクトを感じさせるレビュー。サンコス!

すっげ〜丁寧にリスペクトを感じさせるレビュー。サンコス!

正直言って嬉しいけど、この作品、Vinyl(アナログレコード)だからね!

誰が買ってくれてるんだろう。

嬉しいよ。ありがとよ!!

そんな中、昨年リリースしたドイツのレーベルから連絡があった。

レーベル社長:「ビ、ビ、ビ、ビデオみたよ!オメーら最高なことやってんじゃんかよ!な、たのむから去年リリースした”SAITO”のミュージックビデオも作ってくれねえか?たのむよマジで!つーかさあ、去年はコロナで流通が思ったようにいかなかったから、もう一度大告知しようと思ってディストリビューターも一新したんだわさ。おねげーだ!つくってくんろ?よかっぺ?なぁ、なぁ、SAITOたのむよ〜」

オレ達:「わがったわがった、作っからあんしんしろや!すんげ〜の作っからよ〜、腰抜かすんじゃねぇぞ〜い」

なにしろ去年は本当に異常事態だった。

だって、Vinylより先にデジタル配信をリリースするなんて考えられないだろう?

Force inc.から出した12inchに関して言えば、Vinylを先行リリースしたものの、まだ焦らしてデジタル配信していない。

こうなったらひと肌脱ぐしかなかっぺ。

これからは齋藤監督と呼んでもらおう。

ドイツとのやりとりをした直後、私はこの前高級ジンバルを買った虎ノ門のDJIに電話していた。

私「齋藤だけんどもよぉ、空飛ぶやつ、アレ、何つったかなぁ?泥?ドロドロ?ヘドローン?あ、ドローン!ドローン送ってくれねっか?」

またはじまった。

私は遂にドローンに手を出してしまった。

もうしょうがないよね。

映像やってるんだし、なんつっても齋藤監督なんだから、空飛べなきゃ話にならんでしょ

そして4k動画がバシっと撮影できるジンバル付きドローーーーーーーーーーーーンが到着!

199g 4K ジンバル搭載 DJI mini2!最強!

199g 4K ジンバル搭載 DJI mini2!最強!

これでアイツ、コイツ、ドイツの社長をビックリさせる準備が出来た。

しかしドローンってすげえ。

でもいきなりプロペラガードを付けずに室内で飛ばし壁に激突!

さっそくプロペラを破損したが、予備の羽は32枚持っている。だってアレだからw

その後、無事に屋外の初フライトを成功させ、ドローンを着地させた。

齋藤スタジオは、こんな田舎にあるんだぜ!良いだろ?

ドローン着陸と同時に海外から(とある国。まだ秘密)連絡が入った。

外国人「おいーっす、オメら元気にしてっぺか?あのツアー以来ご無沙汰しちまってよぉ〜!おらあ元気だぁ〜。ところでおねげえがひとつあるんだわな〜。アー写送ってくれねっぺか?」

オレ達「アー写か〜。何につかうんだ?おい?」

外国人「オメさんたちのプロモ〜ションにつかうんだげんどもよ」

オレ達「んだかぁ〜。そえなら、あだらしい写真がいいっぺ?」

外国人「んだんだ!あだらしいほうさおぐってけろ。」

その外国人と電話を切った後、5分以内に私は自宅を撮影スタジオ化する為に、撮影用の人間が踊っても余裕でカバーできるような巨大な背景紙、そして合成用のグリーン紙、さらにそれを設置する為のオートポールとローラーをポチっていた。

もちろん、照明も。

自宅がいきなり撮影スタジオに!アホか。

自宅がいきなり撮影スタジオに!アホか。

意外にもgalcidは呆れるどころか乗り気だ。

自宅撮影スタジオで撮った初めてのアー写。孫の写真を撮るジイサンの気持ちがわかる。

自宅撮影スタジオで撮った初めてのアー写。孫の写真を撮るジイサンの気持ちがわかる。

よく考えてみる。人間に不可能は無い。キューブリックだって黒澤明だって篠山紀信だって最初は素人だったんだ。

私には怖いものは無い(妻とネコのトイレ以外は)

自宅に音楽スタジオと撮影スタジオを作った。

そして、宅配業者から撮影用の背景紙が届いた。

宅配業者のおじさんは、

「こちらは齋藤スタジオでお間違いないですよね?」

と言った瞬間、妻は爆笑していた。

その瞬間を撮影出来なかったのが残念でならない。

 

「将来何になりたい?」

小学校の卒業文集でよくある質問だ。

多くの生徒達は

「野球の選手になりたい」

「総理大臣になりたい」

と書いていたと記憶している。

私は野球ができないから野球選手にはなれない。

今になってみると総理大臣になれなくてよかったと思っている。

私が文集に書いた将来なりたい事は

「バキュームカーの運転手」か「ミュージシャンになりたい」だった。

 

現在52歳の私の近い将来の夢は

「映画監督になりたい」だ。

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