ストーリー・コンサート『クララ─愛の物語─』に出演!水夏希、佐賀龍彦、渡部玄一インタビュー

インタビュー
クラシック
2021.7.14
水夏希、佐賀龍彦、渡部玄一

水夏希、佐賀龍彦、渡部玄一

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本格的な生演奏と朗読劇が融合する舞台、ストーリー・コンサート『クララ─愛の物語─』が、2021年7月14日(水)・15日(木)彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホールで上演される。

この作品は世界的に有名なドイツの天才作曲家、ロベルト・シューマンとヨハネス・ブラームスの二人を、愛し支えたクララ・シューマンの物語。チェリスト渡部玄一が生み出す本格的な演奏と朗読で構成する新しい表現スタイルの舞台だ。

シューマン、ブラームス二人の天才をこよなく愛したクララ、それぞれの人生を朗読者がものがたり、ソプラノ、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの4人の奏者によって奏でられる数々の名曲で編み出された作品には、長野県上田市での初演、東京よみうり大手町ホールでの公演と、大きな反響が寄せられ、今回、待望の再演が実現する。

そんな作品で再びクララを演じる水夏希、シューマン/ブラームスの2役を演じる、ヴォーカル・グループ「LE VELVETS」の一員としての大活躍はもちろん、俳優活動もますます盛んになっている佐賀龍彦、そしてソリストとして、また室内楽、オーケストラ奏者として幅広く活躍し、この作品の演出とチェロ演奏を手掛ける渡部玄一が、ピアニストとしての才能を開花させながらも、シューマンの妻として共に愛し合い、支え合い、また、ブラームスとは生涯に亘り、崇高な結びつきで共に人生を歩んだクララとシューマン、そしてブラームスの人生を描く、“ストーリー・コンサート”への意気込みを語ってくれた。

音楽と劇的要素が共に奉仕し合う

渡部玄一

渡部玄一

──まず取り組んでいらっしゃる“ストーリー・コンサート”の趣旨からお伺いしたいのですが。

渡部:私はずっと音楽をやってきた人間ですが、例えば演劇に於ける音楽は、劇的効果を高める為といった非常に重要な役割を果たすこともありますし、ミュージカルの場合は一体になっていたりもします。しかし、あくまでも物語重視で成り立っているんですね。それをこの“ストーリー・コンサート”では同格にと言いますか、劇的な部分も音楽に、音楽も劇的な部分にと、お互いに奉仕し合う形で、よりクラシック音楽の優れた作品を多くの人に楽しんでいただきたい。そう考えたのがこのコンサートの狙いです。

──今回の『クララ―愛の物語―』は上演を重ねてこられた作品ですね。

渡部:市毛良枝さんがお一人で朗読をやってくださったバージョンがまずあって、自分でもかなりの手応えがあったのですが、予想以上に「非常に感動した」というお声を多くいただきました。それを受けて、もう少し演劇的な要素を入れていこうと、クララ役、シューマン/ブラームス役を分けて、お二人の俳優さんに朗読を担っていただいたバージョンをつくり、その初演でクララ役をやってくださったのが今回も出演してくださる水夏希さんです。

私達のクラシック音楽に対する思いがある中で、別のジャンルで活躍している俳優さんにお越しいただくので、期待と不安が半々だったのですが、みなさんとても誠実にやってくださいました。特に水さんはクララについては僕より詳しいんじゃないか?(笑)というくらい、すごく調べてきてくださって。プロの素晴らしさを実感し、確かな成果も感じていたので、是非またやりたいと思っていました。今回実現してすごく嬉しいです。演奏面も更にバージョンアップしてお届したいと思っています。

──その初演の思い出はいかがでしたか?

:クラシック音楽と接する機会はなかなかなかったので、新鮮で楽しかったです。生で間近に音楽を聞きながら朗読できるということで、芝居の方も盛り上がりますし、音楽の方も作曲家たちの物語が展開されている中で、彼らが書いた音楽を演奏する。お互いの相乗効果がすごく楽しめる作品だったと思います。

想像を超えた人生を歩んだ人を演じる醍醐味

佐賀龍彦

佐賀龍彦

──そんな作品に今回初参加されることになった佐賀さんはどうですか?

佐賀:お話をいただいた時から、新しい表現方法ですし、お客様にも新しい刺激になるのではないかなと、とても楽しみにしています。いまの時代に流行っている音楽って、作曲家個人も実際に現代に生きていて、色々な情報があり、だいたい誰が書いたものか、人となりも知ることができますよね。いいなと思った時に、すぐ作った人にフォーカスできる。でもクラシック音楽って元々小学校の音楽の授業で習ってきていて、最初から「素晴らしいもの」として教えられるので、子供心にもなんとなく敷居が高いイメージができてしまうんです。僕自身もそうだったので、この朗読劇の脚本を通して、生のシューマンやブラームスを人間として演じ、「あぁ、いまの自分たちと同じように悩んだり、恋をしたりしている。こういう人たちが書いた曲なんだ」と想像しながら聞いていただけると、既知の曲を聴いても、「この曲はこういう時に生まれたのか!」というような新しい感動が生まれるのではないかなと思います。そんなコンサートのワンピースとしてきちんとやっていきたいです。

──大作曲家って、どうしても学校の音楽教室に飾られている肖像画のイメージが一番にきますものね。

佐賀:そうなんですよ!

:本当ですよね。

──そんな作曲家たちを「人間」として演じるお二人に期待されていることは?

渡部:先日1回目の稽古をさせていただいた時に「是非リラックスして楽しみながらやってください」と申し上げたのですが、お二人共素晴らしいので、音楽と一緒に舞台を楽しんで創っていっていただけたらと思っています。

──お二人は、それぞれの役柄についてはいかがですか?

:再演ということで、また新たな、前回にも増して様々な資料に当たったのですが、こんなにも天から才能を与えられた女性が、自身の音楽に邁進するだけでなく、シューマンの才能と向き合って愛し合い支え、そこからつながるブラームスと出会い、音楽と共に生きていく。自分には想像もつかない人生を歩んだ人を演じられるのが大きな醍醐味だと思っています。私も同じように音楽と共に生活していますが、これほどまでに音楽だけと生きてきた女性の人生をどうやって伝えようかという感じです。再演にあたって更に深めていきたいです。

佐賀:今回シューマンとブラームスについて改めて向き合う機会をいただいて、色々な資料を見ていきました。シューマンは頭も良く、でもロマンチストで自分の世界をしっかりと持っているし、自身でその世界を信じている。クララとの結婚をクララのお父さんに認めてもらえない期間が長いのですが、その時間を耐え忍んで、二人の愛を育みつつ、最後に結婚まで持っていく。その忍耐と愛を実現させる為の一途さを感じました。

対してブラームスはとても真面目で思いやりに溢れている。二人共内向的な性格ではあるのですが、この時代としては当たり前のことだったのかも知れません。シューマンは結構派手な女性遍歴ですが、ブラームスにはそういう影もなく、恋愛に対して非常に不器用なんです。ですから真面目で不器用なブラームスと、ロマンチストで爽やかなシューマン、それぞれを表現したいです。

水夏希&佐賀龍彦(上段)、伊波杏樹&渡辺大輔(下段)の2チームにて上演される

水夏希&佐賀龍彦(上段)、伊波杏樹&渡辺大輔(下段)の2チームにて上演される

:シューマンのロマンチストぶりはすごいですよね!

佐賀:本当に!

渡部:幻想的な世界が好きなんですよ。演奏もファンタジックで。

:現実よりも、自分の世界が好きなのかな。

佐賀:ブラームスはベートーヴェンにすごく憧れていて、交響曲を書くのにも「僕はまだベートーヴェンの域に達していない」と言ってなかなか書き上げられないんですが、シューマンは、それまで歌曲は全く書いていなかったのに、クララとの結婚が決まった年にいきなり歌曲を120曲くらい書いていて!

渡部:「シューマン歌の年」って音楽史に残っているから。

:すごい!

佐賀:他のピアノ曲なども、あっという間に書いているイメージがあって、天才肌と言いますか、「自分の世界を信じている」と、台詞でもそういうのですが、対照的なところがある二人なので、その辺を上手くクララを中心にして、それぞれの男性の色を出せたらいいなと思います。

渡部:あとは何故ブラームスがそんなにも自分の作品に厳しく、吟味に吟味を重ねていかなければならなかったのか。何しろ書き損じの楽譜が1枚も残されていないんですよ。そこにはもしかしたら自分に罰を与えるような、内的な動機があったのかも知れない。そんなところもこの作品の中には含まれています。若い頃の作品と、シューマンの死後の、後期の作品とでは、明らかに違っているんですよね。

──結局、バッハ、ベートーヴェンに並んで、「ドイツ三大B」と呼ばれ作曲家になる訳ですものね。

渡部:ドイツの偉大な作曲家であることは間違いないです。

芝居として揺れる心と音楽で揺れる心が融合するステージ

水夏希

水夏希

──今回の上演にあたって、バージョンアップするということでしたが、いまお話いただける範囲での変化はどうですか?

渡部:前回の公演にも十分な手応えは感じていたのですが、私自身も含めて更に演奏の向上を目指したいです。演奏曲目も一部ですが増やします。特に水さんが二回目の出演でいらっしゃって、感じたことを色々とお話しくださいますので、細かい手直しも入れながらよりわかりやすく、より一体感のある舞台にしたいと思っています。

──既に共演経験もおありのお二人ですが、是非お互いに感じている魅力を教えて下さい。

佐賀:前回『BLUE RAIN』でご一緒させていただいた時が最初の出会いで、今回もそうですが、台本を誰よりも深く読み込まれてくる方だなと感じました。台詞の一つひとつに役柄の人物の機微が込められていて! 僕は「楽しい、嬉しい、悲しい」で作っているところが多いのですが(爆笑)、人の感情ってそんなはずはないだろうと、一行の台詞にでもドラマを作っていかれるので、前回の作品でも役として気持ちを受けていくことで自分の表現もあがっていったという感覚がありました。ですから今回もそうなれるように頑張りたいです。特に前回はケンカする場面が多かったのですが、今回は仲良くなれる役柄ということで、また違ったテイストで水さんが創りあげる役柄に対峙できるのがすごく楽しみですし、気合いを入れてやっています。

:前回が本当に「はじめまして」で、こんなにもおしゃべりが達者な方だとは思わなかったので、もう一日中喋っているみたいな!(笑)

佐賀:そんなことないでしょう! 稽古中めっちゃ静かにしていましたよ!

:まぁコロナ禍の稽古だったからね。めちゃくちゃ我慢していたでしょう?

佐賀:ええ(笑)。

:明るくて、一生懸命で楽しい方です。

佐賀:全然役に対しての取り組み方とかの話にならない!(笑)人物像ではじまり、人物像でおわる(爆笑)。

:いやいや(笑)。でも、こうやって飄々としていますけれども、とても研究熱心な方で、さっきもシューマンやブラームスに対して深く話されていらしたように、飄々としているところから変化球で色々なことが飛んでくるのがすごく面白いです。今回特に二役ということで、人物像の違いをどうしようかと、一生懸命試行錯誤していらっしゃる姿が可愛らしいなと。

佐賀:そうなの?

:いま、クララだから(笑)。シューマンでありブラームスである彼をある時は持ち上げ、ある時は叱咤し、というようなムードでいるので若き才能を感じてすごく楽しいです。

ストーリー・コンサート『クララ─愛の物語─』

ストーリー・コンサート『クララ─愛の物語─』

──クララとブラームスの書簡集なども、本当に心に染みるものが残っていますからとても楽しみですが、この“ストーリー・コンサート”企画で、今後やってみたいものはありますか?

渡部:いつくか候補を挙げて検討しているのですが、日本人とクラシック音楽を是非掘り下げたいと思っていて、宮沢賢治とクラシック音楽の構想を進めています。宮沢賢治はとてもクラシック音楽が好きな人だったので。

水・佐賀:へ~~!!

渡部:あるレコード屋さんでやけにレコードが売れると、東京のレコード会社が調査したら、盲学校の先生がせっせと買っているとわかったんです。それが宮沢賢治で。宮沢賢治の家の近くのレコード屋さんだったんですよね。本社がわざわざ調べるくらい買っていたんですよ。そこから『セロ弾きのゴーシュ』につながるので、そういったことを知った上で、彼がどんな音楽を聞いていたか?を共有してもらえれば、宮沢賢治が好きな方にもクラシック音楽に興味を持っていただけるのではないかと考えています。あとは、いずれ絶対にやりたいと思っているのはモーツァルトですね。

──お二人からリクエストや、ご自身でやりたいと思われるものはありますか?

:今のお話から『セロ弾きのゴーシュ』は是非やれたらいいなと思いましたが、私はクラシック音楽に造詣が深いとはとても言えないだけに、こうした機会をいただくことで知らない世界に連れていっていただけるので、すごく嬉しくて楽しいです。逆に私に何が似合うと思っていただけるのかをお聞きしたいなぁと。

渡部:ショパンも是非やりたいと思っていて。

:ジョルジュ・サンドですね!

渡部:ジョルジュ・サンド、水さんピッタリですね! すごくできそう!

佐賀:今回台本をいただいている時に渡部先生が雑談でお話されていた色々な作曲家のバックグラウンドのお話がとても面白かったので、他にもこういう企画で色々な作曲家を取り上げていただきたいです。

──佐賀さんはクラシックの歌曲をご自身で歌われることも可能ですものね?

佐賀:そうですね。

:確かに! 朗読だけでなくてね!

──お話から色々な可能性が広がるのがとても楽しみですが、まずこちらの『クララ―愛の物語―』を楽しみにされている方達にメッセージをお願いします。

:演劇ファンの方、クラシックファンの方、双方から楽しめる新しいエンターテインメントになっておりますので、是非身を委ねる気持ちで、劇場に来ていただけたらいいなと思っています。

佐賀:お芝居として揺れる心の部分と、音楽を聞いて揺れる心の部分とが融合して、何かより大きな、新しい表現のス―ジになると思うので、どんなものになるか期待していただき、劇場にいらしていただけたらと思います。

渡部:私も演奏にも加わるので、舞台に上がったら演奏に集中して、あとは皆さんにお任せしたいと思っています。ひとつ大切にしているのは、来てくださった方に少なくとも「難しかった」と言われないような、わかりやすい良い舞台にしたいと思っていますので、是非楽しみに劇場にいらして下さい。お待ちしています!

取材・文=橘涼香

公演情報

ストーリー・コンサート『クララ-愛の物語-』
 
【日程】
2021年7月14日(水) 14:00開演(Aチーム)/18:00開演(Aチーム)
2021年7月15日(木) 14:00開演(Bチーム)/18:00開演(Bチーム)
*Aチーム(クララ役:伊波杏樹/シューマン・ブラームス役:渡辺大輔)
*Bチーム(クララ役:水夏希/シューマン・ブラームス役:佐賀龍彦)

【会場】彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール
【料金】S席 7,500円(税込)/ A席 5,500円(税込)
 
【作・演出】渡部玄一(読売日本交響楽団)
【出演】
水夏希/佐賀龍彦(LE VELVETS)
伊波杏樹/渡辺大輔
【演奏】
岡田愛(ソプラノ)
枝並千花(ヴァイオリン)
渡部玄一(チェロ)
島田彩乃(ピアノ)
【HP(東京アンサンブルギルドHP)】http://www.tokyo-eg.com/ 
 
【お問い合わせ】サンライズプロモーション東京
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