木村達成×須賀健太『血の婚礼』再びのタッグは「興奮が止まらない」
言語化できない「何か」を見つけていきたい。
――今回の『血の婚礼』の上演台本はまだできていないそうですが、あらすじを読んでどう思われましたか?
木村:僕が演じるレオナルドはこれまでトライしたことのないような役ですし、やり甲斐はとても感じています。公私混同しないようにがんばりたいですね。
須賀:おい、いまの見出しになるぞ。
木村:生身の人間がやるんだから、そりゃするでしょう、公私混同。苛立ちとか憎しみとか。
須賀:あ、そっち? びっくりした。
木村:(笑)。僕は過去に上演された際の映像を拝見したのですが、その公演は決闘のシーンは描かれていなかったんです。でも今回はどうやらあるらしいので。僕らの出会いは殺陣ですし、そういう面でもドキドキワクワクが止まらないです。
木村達成
須賀:今回、新しく翻訳された台本で演じられるので、2022年版として翻訳されたそのイメージを大事にしたいなと思っています。この戯曲は、いろいろな国で、いろいろなカタチで上演されているからこそ、そこにとらわれず、僕たちなりの『血の婚礼』みたいなものを模索していく時間が大事になってくるのかなと思っているところです。作品の内容的には、言ってしまえば割と単純というか。「花嫁を奪う」という話で。でもそこにどれくらいそれぞれの人間らしさみたいなものが乗ってくるのかで、物語が深まっていくと思う。そこは役者としては楽しみな部分でもありますし。幕が開いたときにお客様がどんな感想を持ってくれるのかもとても楽しみです。
――木村さんは花嫁を奪うレオナルド、須賀さんは花嫁を奪われる“花婿”という役を演じますが、いまのところどんな印象がありますか?
木村:レオナルドは、強気で勝ち気で「お前は俺しかダメなんだ」というようなセリフがあったりします。だからそのバックボーンを一挙手一投足に滲ませたい。この戯曲をいま舞台でやる意味とか、日本でやる意味とか、僕と健太がやる意味を考えて演じたいです。作品をぶっ壊せるくらいの新しい感覚で届けられたらと思いますし、そういうものをどんどん提示していけたらなと思います。
木村達成、須賀健太
――これまでに何度も上演されてきた作品でそういう新しい感覚のものをつくるのは、エネルギーも必要になってきますよね。
木村:原作がある作品に出演するときにも考えることですが、原作からそのまま抜粋したものをやるんだったら舞台でやる必要はないと思うんですよ。でも舞台のために書かれた脚本をもとにお芝居をつくっていくと、キャラクターの感情も含め原作と違う部分は生まれます。そうすると原作ファンの方は気になるところが出てきて「違う」ということになるとも思う。でも僕らが、それすら超越するようなものを提示できれば、また別の感想を持ってもらえると思うんですね。そのためにはどんどんパンチを撃っていかないといけない、と僕は思っています。この『血の婚礼』も、世界中で上演されてきた作品で、その重圧みたいなものは相当あります。そこで「なんだよ達成と健太、仲良しこよしやってんじゃないよ」と言われないように。憎しみと愛の物語を、できるだけストレートに、お客さんの胸に素早く届くように……いや、じっくり届くでも、ドロッと届くでもいいですけど。そこで確信を突く何か、ハッとさせる瞬間が紡ぎ合わされれば合わされるほど、舞台上で毎日奇跡が起きると思います。
――須賀さんは、“花婿”役にどんな印象がありますか?
須賀:多分、100人いたら100人が「かわいそう」と思うようなポジションじゃないですか。愛していた人を取られちゃう。しかも結婚式というタイミングで。それはかわいそうだなってなると思うんですけど、その「かわいそうだな」におさめたくはないなと僕は思っていて。本当に起きた事件がモデルになった戯曲ですし。人と人が殺し合うということは、「大切な人を取られた」からというだけではなく、やっぱりどこかお互い狂っているというか。花婿の側もなにかを内包していないと、その選択にならないと思うんですよね。そういうところをちゃんと描きたい。だからもしかしたら「かわいそう」と思われているうちは僕の正解ではないのかなと思うので。そこに留まらないようにしたいなっていうのは、自分の中では大事にしたいなと思っています。
須賀健太
>(NEXT)約5年ぶり共演、それぞれが感じる変化とは?