「昭和49年という永遠のループの中でまる子は生きている!」――監督&プロデューサーが語る『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』

まる子は25年生きてきた! キーマンが語る、映画ちびまる子ちゃん

まる子は25年生きてきた! キーマンが語る、映画ちびまる子ちゃん

「まる子は25年生きてきた」――髙木淳監督、田中伸明プロデューサーが語る、『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』

 2015年にテレビシリーズの放送25周年を迎えた、アニメ『ちびまる子ちゃん』。23年ぶりとなる劇場版『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』が、12月23日(祝)に公開となりました。今回、原作者のさくらももこさん自ら脚本を担当して描くのは、まる子とイタリアからやって来た男の子アンドレアの、ちょっぴり切ない出会いと別れ。ファンはもちろん、子どもから大人まで楽しめる映画として注目を集めています。

 髙木淳監督、田中伸明プロデューサーにインタビューを実施! 映画の見どころはもちろん、改めて思う『ちびまる子ちゃん』の魅力や、昭和の世界観について思うところなども伺いました。

 
■ まる子、さくら家、クラスメイト、そしてご近所さん。身近で共感できるキャラクターたち

――アニメ『ちびまる子ちゃん』の放送が始まってから今年で25年になりますが、お二人の作品との出会いはどのような形でしたか?

髙木淳監督(以下、髙木):放送が始まった90年から、演出助手として『ちびまる子ちゃん』に参加しました。原作を初めて読んだのもそのタイミングですね。「少女マンガ」とだけ漠然と聞いていたので、もうちょっと目がキラキラしたような作品なのかなと思っていたんですけど、ああいったシンプルな絵で、お話もギャグタッチだったので、いい意味でビックリしましたね。『りぼん』連載当初は原作者のさくらももこ先生の実体験をもとにしたエッセイのような作風でしたが、とてもおもしろかったです。それから絵コンテや各話演出を経て、2007年に監督になって今に至ります。

田中伸明プロデューサー(以下、田中):私が日本アニメーションに入社したのは90年で、ちょうど『ちびまる子ちゃん』のアニメがスタートした年でした。私は『世界名作劇場』に配属されたので、「ちびまる子ちゃんという作品が始まったのか~」と、同じ会社ですが少し遠目で見るような感じだったかもしれません。その後、あっという間に人気が出て社会現象になり、すごい作品なんだなと思いましたね。当時の社内は『ちびまる子ちゃん』一色でした。それから22年後の2012年に、プロデューサーとして『ちびまる子ちゃん』を担当することになりました。国民的アニメとも言われている作品ですし、スタッフ・キャストも長年やっている人ばかりなので、その輪の中に自分が入れるのかなっていう不安が大きかったですね。

――国民的アニメと言われ始めてから、今日まで人気は続いています。

髙木:ありがたいですね。まる子というキャラクターが、見てくださるお客さんに近しいというか、身近な存在だからこそ、こうして長く受け入れてもらえる作品になれたのかなという気はしています。

まる子って、主人公ですが決してスーパーウーマンではなく、どちらかというとダメな方の子どもですよね。なまけ者だし、ぐうたらしていますし、偉ぶれない子なので。等身大、もしかしたら等身大以下になってしまうかもしれないキャラクターだからこそ、共感を持ってもらえるのかなと思います。さくら家、3年4組、ご近所さんなど、まわりを囲むキャラクターたちも、基本的には等身大のキャラクターが多いですし。……花輪くんみたいな、ちょっと異様なキャラもいますけどね(笑)。「どこにでもいそうであり、でもちょっと変わっている」というようなキャラクターが多いので、変に距離を置いたり身構えたりする必要なく、すんなりと見てもらえているのかなと思います。それが魅力なのかもしれません。

田中:私もやっぱり、まる子たちが身近な存在であるということが、作品の魅力なのかなと思っています。見ている人たちが共感できるというか、「そうそう!」と思ってくれるような。そこは25年間、なんとかお届けできているのかなと思います。

――高木さんは、アニメ『ちびまる子ちゃん』の作り手として、ご自身も25周年ということになります。これまでを振り返ってみていかがですか?

髙木:基本的にちびまる子ちゃんは、昭和49年をずっとループしてやっているので、何度となく同じようなイベントがやって来るんですが、かといって同じような話というわけにもいかない……という部分が大変ではありますね。いろいろと切り口を変えつつ、キャラクターの配置も考えながら、どういう話ができるのかと、スタッフやライターの方と一緒に考えながら作っています。相当、絞り出して絞り出して……っていう状況ですかね。

 
――その点は、年数を重ねるごとに大変になっていきそうですね……。

髙木:アニメが生まれて25年が経つので、まる子たちは25年生きているんです。『ちびまる子ちゃん』は、昭和49年の静岡県清水が舞台なので「半架空」のお話といえますが、そこで25年も暮らしていると、彼ら彼女らは一人歩きをするようになって、もはやお話の中で生きているんですよね。我々スタッフはそういう感覚でこの作品を作っています。お話作りの段階で思うのは、まる子たちはあんまりこっちのいうことを聞いてくれないな、ということなんです。彼女たちには彼女たちの動き方があるんですよね。「こっちに動いてくれればお話的におもしろいのにな」と思っても、「この展開じゃこのキャラは動いてくれないな」という感じです。このキャラのひとり歩きに年々苦労をしてきた部分はありますね。特にまる子は、いわゆる主人公然とした主人公ではないというか、自らお話を引っ張っていくようなタイプじゃないので、よりお話を作るのが難しいんです。彼女が動きやすい、動いてくれる方向を探りながら、なおかつお話がどうすればおもしろくなっていくのかを考えないといけません。『ちびまる子ちゃん』はシンプルな絵柄ですけれども、考え方としてはかなりリアリティーをもって作っています。

 
■ 昭和を描くのであれば、あの時代のいいところを描くべき

――昭和49年という時代設定は、制約だと感じる時もありますか?

髙木:メリットとデメリットの両方がありますね。そのシチュエーションを逆手に取って、うまいことドラマが作れたりすることもあります。

――作中の「昭和」の空気に、どこかホッとする方も多いと思います。昭和を描くということに対して、お二人は思うところなどありますか?

田中:もちろん交通手段や通信手段の違いでしたり、細かいところでは紙幣のデザインまで違うといったこともあるんですけど、一番大きいのは、人と人とのつながり方が今よりもちょっと深かったんじゃないか……という部分かもしれません。もちろん一概に昭和だからというわけではないのかもしれませんが。でもやっぱり、友達関係、親子関係、ご近所付き合いも含めて、今よりかは確実に深いような気がするんですよね。ご近所さんからなにかもらったりなんてこともよくありましたしね。まるちゃんでいうと高丸さんみたいな(笑)。そういう要素が今はなかなか希薄というか、昭和の時代にはまだそういう良さが色濃かったんじゃないかなと思います。

髙木:今の時代は今の時代でいいところがありますし、当然、あの頃はあの頃で良さがあると思います。逆算、当時を描かなきゃいけないのであれば、悪いところばかり見せてもしょうがないため、あの時代のいいところを描くべきなのではないかというのは感じています。基本的にまる子の世界には悪人は存在しないんですよ。もちろん当時も犯罪や事件はあったでしょうけど、今よりちょっとシンプルでおおらかな世界だったんじゃないかなと思います。ただ、人間が持ってる根っこ、子どもが持ってる根っこのところは変わらないであろうというスタンスで作っています。

田中:今と時代を隔ててはいますが、そういう部分で共感が得られればうれしいですね。

 
――昭和49年当時を、お二人はどのように過ごされていましたか?

田中:私は当時7歳なんですけど、1年生なのでまだそんなに自由に一人でどこかに行けるという感じではなかったと思います。外で友達と缶蹴りや鬼ごっこをしたり、小川があったのでそこでザリガニを捕まえたりしていましました。昔は遊びと言えばそのくらいしかなかったと思いますね。3年生くらいの時に、まる子でもおなじみの「ローラースルーGOGO」が出てきた記憶がありますね。高学年になると、(山口)百恵ちゃんや(西城)ヒデキの人気がすごかったのをおぼえています。『まる子』の作中で出てくると、懐かしいなと思いますね。

髙木:私は小学校5、6年生でしたね。関東近辺の、都会というよりは郊外で暮らしていたので、『ちびまる子ちゃん』の環境と比較的近いのかもしれません。はまじみたいにカエルやザリガニを獲ったり、セミを捕まえたりというのは日常茶飯事で、駄菓子屋さんにもよく行ってました。なので『ちびまる子ちゃん』の世界観は、90年に参加した当時から、とても身近に感じられるものでしたね。実際にアニメーション作る時も、比較的違和感なくというか、スッと入っていけたと思います。

――ひとりのアニメーション監督としての髙木さんが描きたいものに、近いような部分もあったのでしょうか?

髙木:そうですね。この世界観の中で、子どもたちを描くというところであれば、そういう部分は絶対に入っていると思います。

 
■ アンドレアのために……。なまけ者のまる子が、映画ではがんばった!?

 
――ここからは今回の映画についてうかがえればと思います。92年公開の『ちびまる子ちゃん 私の好きな歌』以来23年ぶりの映画化ですが、きっかけはどのようなことでしたか?

田中:やはり25周年、節目の年ということで、その中の企画のひとつとしてお話が出てきた形ですね。原作者のさくら先生とも相談しながら、企画が進んでいきました。

髙木:TVシリーズのカンフル剤としても、劇場版はやってみたい気持ちはあったんです。ですが、なかなかこういった企画を立ち上げるのは大変ですので……。今回やると決まった時はビックリしながらも、「よかったよかった!」という感じでしたね。

――まる子役のTARAKOさんにインタビューさせていただいたのですが、最初「ドッキリ」だと思ったとおっしゃっていました。

一同:(笑)

――ドッキリじゃないとわかって、本当にうれしかったと。

田中:TVシリーズのキャストのみなさんにも、とても喜んでもらえましたね。私はまだ『ちびまる子ちゃん』をやりはじめて3年ですけど、その前からずっと、映画やればいいのになとは思ってました。今回、それが本当に実現できてよかったです。

――映画を作るにあたってのテーマなどは、どのように決まっていきましたか?

田中:毎週日曜日にテレビで『ちびまる子ちゃん』を見ることはできます。その前提で、お金を払って見ていただけるにはどういう映画を目指せばいいのか、映画ならではの部分をどうするか、というのはかなり考えましたね。

髙木:その中で、まる子の街に外国から留学生たちがやってくるというアイデアをさくら先生の方からいただきました。おもしろかったので、じゃあそれを軸にしましょうと決まった形ですね。その後も先生がいろいろ考えて、大阪・京都への旅行などの要素をくっつけていただきました。

――清水を飛び出して遠くに出かけるのも、映画ならではですね。

髙木:基本的に、まる子が清水にいる時はいつもどおりの「まる子ワールド」ですので、それほど極端にTVシリーズと変わっていることはないんです。ですが舞台が変わると、通常の美術関係の設定等は当然使えないので、新たに練り上げる必要があり、そのあたりはちょっと大変でしたね。昭和49年ごろの大阪・京都などをいろいろな資料で調べながら、一応ロケハンも行きました。いかんせん時代が違うので、雰囲気はなんとなくつかめてもディティールは違うんですけどね。京都はそこまで変わっていないんですが、大阪は1995年の阪神・淡路大震災後に結構変わっているので難しかったです。

田中:美術の話でいえば、まる子とアンドレアが灯籠流しに行くシーンが映画のチラシにもなっていますが、ここにもスタッフで、清水市の巴川へロケハンに行きました。ディティールにもかなりこだわっていて、そういう意味でも見どころのひとつかと思います。

――留学生のひとりであるイタリアから来た少年、アンドレアとの出会いと別れが、今回の映画の大きな要素としてあると思います。TVシリーズでは、まる子と男の子の交流を描くようなお話は珍しいですよね。

髙木:そうですね。TVシリーズの場合ですと、まる子の恋愛うんぬんというのは基本的にゼロです。そっちの方面にまだまだ全然興味がないんですよね。みぎわさんなどの恋する乙女たちのことを、まる子は傍観するだけというか、そういう事象に出くわす……といった感覚だと思います。


――今回は映画ということで、そこから少し掘り下げてみようといったお考えがあったのでしょうか?

髙木:さくら先生のアイデアがありました。外国から来た子どもたちのひとり、イタリアから来た少年とまる子がどんどん仲良くなっていき、その先は……というところですね。一応、「恋とか愛とかではないギリギリというラインを目指す」というところではありました。先生の言を借りると、これは愛でも恋でも初恋でもなく、淡い恋心一歩手前くらいの感じかな……と。そこから実際にでき上がったものについては、ぜひ劇場で確かめていただければうれしいです。あとは見る方々にどう受け取ってもらえるかですね。

――『ちびまる子ちゃん』に出てくるキャラクターは、性格や感情が紋切り型ではないというか、生の人間に近い印象を受けます。映画版では、さらに微妙な感情やお芝居が見られた気がしました。

髙木:『ちびまる子ちゃん』は、小学3年生の女の子が主人公ではありますが、基本的にはまる子と取り巻く人々を含めたドラマだと考えています。当然それは、家族、クラスメイト、街の中の大人たちも含めてのドラマなので、そういう人間らしいリアリティーはきっちり描かなくてはいけないなというのは常々考えています。今回の映画でいえば、TVシリーズよりもう少し見せらせるかなと考えてはいました。

田中:先ほど髙木監督から、「まる子は25年生きていて、動きたい方向にしか動かない」、そして「お話を引っ張っていくタイプではない」というお話ありましたが、今回の映画に関しては、まる子はがんばったかなという気はしますね。

髙木:うん、今回は頑張った。

田中:今回は(笑)。

髙木:それもこれも、今回の映画ではアンドレアに対しての思いというのがあるので、それがまる子のモチベーションにはなっていると思うんですよね。彼女は怠け者でぐうたらですから、やりたくないことはできるだけやりたくないし、彼女が動きたい方向にしか動きません。ただし、興味があったりすることには動く子なんです。アンドレアのためにという行動の指針があったので、今回は彼女なりに動いたんだと思います。

 
――最後に、映画を楽しみにされているファンの方へメッセージをいただければと思います。

髙木:TVシリーズは放送25年目、映画は23年ぶりですが、普段とはちょっと違ったちびまる子ちゃんが、間違いなく見られると思います。ちょっと変わったまる子の世界観、そしてまる子たちをぜひぜひ見に来ていただけたらと思います。

田中:テレビの良さもありますけど、映画としてのちびまる子ちゃんをぜひ見て、笑って、泣いていただけたらと思います。先日、親子試写をやらせていただきましたが、そこではご好評をいただけたようでした。気持よく映画館を出れる映画になったなと、そこは自信を持っておすすめできますので、ぜひご覧いただければと思います。

――ありがとうございました!

 
■作品紹介

『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』
公開:12月23日(水・祝)

【STORY】
世界の5ヵ国からやってきた子どもたち。花輪くんのお願いで、みんなの家に外国の子どもたちがホームステイすることになったからさあ大変! まる子の家にはイタリアからやって来たアンドレアが来ることに。学校での授業に参加したり、週末には清水の町を飛び出して、みんなで大阪や京都へと出かけたりと楽しい日々を過ごすまる子たち。始めは、積極的なアンドレアに戸惑いながらも、日本に来た理由を聞いて、アンドレアの気持ちを知るまる子。一緒に行ったお祭りでは「また会えますように」とそれぞれお願い事をする二人。そんな楽しい日々にもいよいよお別れの時が──。

【STAFF】
原作・脚本:さくらももこ
監督:高木淳

【CAST】
まる子:TARAKO
お父さん:屋良有作
お母さん:一龍斎貞友
おじいちゃん:島田敏
おばあちゃん:佐々木優子
お姉ちゃん:水谷優子
たまちゃん:渡辺菜生子
花輪くん:菊池正美
丸尾くん:飛田展男
野口さん:田野めぐみ
はまじ:カシワクラツトム
山田くん:山本圭子
永沢くん;茶風林
藤木くん:中友子
みぎわさん:ならはしみき
山根くん:陶山章央
大野くん:沼田祐介
杉山くん:真山亜子
戸川先生:掛川裕彦
ナレーション:キートン山田
<スペシャルゲスト>
アンドレア:中川大志
シン:劇団ひとり
ネプ:パパイヤ鈴木
ジュリア:渡辺直美
シンニー:ローラ ほか

『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』公式サイト

アニメイトタイムズ
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