今回は歌に特化した新たなチャレンジ~三宅裕司、小倉久寛、野添義弘らによる劇団SET 第60回記念本公演『堕天使たちの鎮魂歌』合同取材会レポート
(左から)野添義弘、三宅裕司、小倉久寛
三宅裕司、小倉久寛らを中心にして結成され、創立43年目を迎えた劇団スーパー・エキセントリック・シアター。誰が観ても楽しめる芝居を目指し、アクションやダンス、歌、笑いをふんだんに取り入れながらも社会に対する警鐘や深いテーマを込めた作品を次々に世に送り出してきた。記念すべき60作品目となる『堕天使たちの鎮魂歌〜夢色ハーモニーは永遠に〜』は、音楽業界を舞台に新旧ディーバたちが熱いバトルを繰り広げる物語だ。上演まで約1ヶ月となったタイミングで、三宅裕司、小倉久寛、野添義弘による合同取材会が行われた。
ーーまずは三宅さんから、本作の紹介をお願いします。
三宅:今回は劇団創立43年目、公演数としては60作目です。とはいえ、「60回目だからすごいことを力を入れてやろう」ということは全くなく、いつも通りの感じで考えています。これまで劇団SETはミュージカル・アクション・コメディということでやってきましたが、今回はその中でも音楽に特化して、音楽爆笑ストーリーをお送りする予定です。当然ダンスもあるので、SETがどこまでできるのか。新たな作品に期待していただけたらと思っています。
ーーどんな作品になるのか、話せる範囲でお願いします。
三宅:現代の日本芸能界を舞台にした物語です。歌の実力が抜群でいろんなアーティストのバックコーラスをやっているすごい女性三人組がいるけど、ヒット曲が全くない。かなり歳をとってきてそろそろ引退してもらおうかというところから話が始まります。そこに小倉扮するグレートプロデューサーが「俺の企画に乗れ」と出てきて、ある若い女性とその三人でひとつのグループを作って売ろうとする。そこから人間関係がもつれ、さまざまな人が絡んできて、ラストは歌で感動させられるようなストーリーになっています。僕と小倉のシーンではアドリブもあるかもしれないけど、他はほぼないですね。台本通りにやれば爆笑が起きるような本を作っています。アドリブをやって客席をシーンとさせたら後ですごく怒りますからね(笑)。
三宅裕司
ーー小倉さんの役所と意気込みを教えてください。
小倉:先程も出たようにプロデューサーです。売れない三人と今から世に出ていこうというアイドル三人。六人でなんとか……なると思います?
一同:(笑)。
三宅:ストーリーの説明じゃないからね。役どころの説明。
小倉:それをやる腕効きのプロデューサーです。
三宅:実在するプロデューサーたちがモデルになっている部分もあるので、そこに注目してもらっても楽しいと思います。
小倉:そうですね。意気込みは……難しいですね。
三宅:敏腕プロデューサーでありつつ、小倉の個性や爆笑を取るためのボケを入れなきゃいけない。ものすごい腕のあるプロデューサーがボケるって言うのは見せ所だと思いますね。あと今回は歌います。
小倉:三宅さんのギターの伴奏に合わせてね。
三宅:上手くできなかったら小倉にやってもらうけど。
小倉:えっ、弾きながらってことですか?
三宅:そう。二人のシーンで歌のギャグをやろうかなと。声が良くて歌がうまいけれどもそれがいいネタになっていて笑えるようにしたいです。
ーー小倉さんは敏腕プロデューサーをどう表現しようと考えていますか?
小倉:とりあえずきちっとしようと思っています。できそうな感じを出したいなと。
三宅:ちょっと短気でイライラするみたいなところはあるかもしれませんね。あと、普通じゃ嫌だってことを常に考えている感じ。ものを作る人やプロデューサーってそうだもんね。
小倉:そうです(笑)!
小倉久寛
ーー野添さんはどんな役なんでしょう。
野添:私はソウルシンガー三人組と長年一緒にいるマネージャーです。初めて歌を聴いたときに感動してなんとか売れるように頑張るものの中々売れず、敏腕にはなりきれない。でも三人の実力を一番理解している人ですね。出番も多い役なので、お客さんに楽しんでもらいながら頑張りたいと思います。まさか64になってダンスをするとは思ってなかったですが、踊るとも聞いています。
三宅:しかも、かなり激しいダンスです。
野添:入団した時にジャズ、タップ、クラシックと一通りダンスを習いましたが、普段はアクションの振付メイン。今回はダンスに全力で打ち込もうと思います。
三宅:今、テレビ業界では歌といえば大体ダンスがついている。お客さんも目が肥えていますから、そこを担うメンバーは大変だと思いますね。
ーー三宅さんの役どころは。
三宅:歌はうまいけどヒット曲に恵まれなかった三人組の事務所の社長です。チラシはデザイナーがソウルミュージックのテイストで、ソウルの女王が歌ってるイメージにしたそうです。ストーリーとは関係ないです(笑)。
野添義弘
ーー最近の公演は、若手の方がメインを担っているイメージがあります。
三宅:SETは20歳から70歳までいる劇団。笑いをやる劇団っていうのは、お客さまの前でドッとウケて拍手をいただくとか、ウケると思ってやったらシーンとしちゃって地獄に落ちるみたいな経験をしないと中々笑いのセンスみたいなものが身につかないんです。我々もそんなに長くはできませんから、今いる劇団員にそういうのを味わってほしいと思っています。ストーリー的にも芸能界が舞台でいろんな人が出てくる設定。その中で、ちょい役でも必ず笑いを背負わせて、その一言でお客さんがドッと沸くような設定とセリフをみんなに作れるように頑張っています。ストーリーも感動的で、劇団員全員にちょっとずつでもセリフがあって、しかも何か笑いを背負っていることを目指しています。ここ数年は、我々以外のメンバーにもそういう経験をしてもらえるような公演になっていますね。
ーーその中で、大ベテランである小倉さんや野添さんに期待する役割というのは。
三宅:この二人なんかは、客席がシーンとすることは皆無ですからね。爆笑の連続。
小倉・野添:ちょっと待ってください(笑)。
三宅:それを下の人たちが見て、さすがだなと。劇団員には「ああやればいいのか」という良い手本を示してくれますし、お客さんはヒイヒイ言ってますから。呼吸できないくらい笑わせてくれます。
(左から)野添義弘、三宅裕司、小倉久寛
ーー―野添さんは大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』にも出演されました。三宅さんから見て、いかがでしたか?
三宅:大河ドラマの現場を経験したことで一回りも二回りも大きくなって強くなっていますよね。どんなことがあっても常に全力でお客さんを大爆笑させてくれると思います。ただ、今回は爆笑できつつ非常に感動的なストーリーになっていて、感動の部分を請け負う役を任せています。大河ドラマに出た野添と、泣かせる芝居で対峙できる若い女の子三人組は幸せだと思いますね。若い子たちにはそういう芝居をたくさん見てほしいと思っています。
ーー最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
野添:60回目の本公演ということで、素晴らしいパフォーマンスを披露できるよう劇団員みんな頑張って稽古をしています。元々のファンの方はもちろん、初めての方も本当に楽しめる作品になっていますから、我々と一緒に作品を作るような気持ちで楽しんでいただきたいと思います。
小倉:三宅さんはすごく音楽に思い入れがあるんです。SETはミュージカル・アクション・コメディを40年以上続けてきましたが、その中でも今回は歌に特化した集大成のような感じ。全編というと言い過ぎですが、歌もダンスもたくさんありますしギャグもある。見終わった時は心が高揚し、感動していると思います。ぜひみなさんお越しください!
三宅:二人が言った通り、43年間ミュージカル・アクション・コメディをやってきました。1年くらい前から公演のことを考えるんですが、今回は音楽要素だけをピックアップしたらどうだろうと考え、歌とダンスに特化しようと決めました。今の世の中、欧米や韓流、もちろん日本のダンスもレベルがものすごく高い。歌も、今は小学生でも驚くほど上手い歌を歌う人が多い。40年以上やってきた劇団のダンスと歌を、お客さんに見ていただこうという企画です。それをより感動的にするために、20歳から70歳までの役者がストーリーを運んでいく。ですから、歌とダンスが上手くいかなかったら今回の作品は失敗。それくらいの覚悟でやろうと思っています。爆笑の後、感動の歌とダンスで終わる芝居を、ぜひその目で確認していただきたいなと思っています。今回は歌特化ですが、来年はもしかするとアクション特化にするかも。そういうのもありだと思っていますね。
(左から)野添義弘、三宅裕司、小倉久寛
本作は2022年10月21日(金)より、サンシャイン劇場でスタート。また、11月9日(水)には秋田公演も行われる。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
会場:サンシャイン劇場