石井琢磨×髙木竜馬、満員の観客からの大喝采に固い握手交わす~14年来の盟友ふたりが奏でた二台ピアノの夕べ

レポート
クラシック
2022.10.20
石井琢磨、髙木竜馬

石井琢磨、髙木竜馬

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石井琢磨と髙木竜馬はウィーンで日々ともに切磋琢磨し、どんな時も互いに励まし合ってきた盟友だ。その二人が2022年10月14日(金)、東京の浜離宮朝日ホールで二台ピアノによる演奏会を開催した。会場は満席の大盛況。聴衆の期待を裏切ることなく、出演者の二人もこの日を迎えた喜びが隠せない様子だ。演奏会当日の模様をお伝えしよう。

左から 石井琢磨、髙木竜馬

左から 石井琢磨、髙木竜馬

『石井琢磨×髙木竜馬 2台ピアノコンサート』の夕べは、髙木のソロ演奏から始まった。

ショパンの「ワルツ第9番」と「ポロネーズ 第6番≪英雄≫」。髙木にとっては両作品ともに8月からの約2カ月、『ピアノの森 コンサート』のリサイタルツアーでも弾き込んできた自家薬籠中の作品だ。この長期リサイタルツアーを経て、「ワルツ 第9番」はさらに成熟した感がある。憂いに満ちた涙を感じさせる響きとともに、昔日を回顧するように丁寧に一音一音をしたためる様が美しい。一方、「英雄ポロネーズ」は精気あふれる演奏。歯切れの良いリズム感と、対照的に内省的なパートにおいてのメリハリの付け方やダイナミズムの “もってき方” など、すべての点においてさらに手に馴染んでいた感があった。

続いては石井琢磨のソロ演奏による グノー=リスト「歌劇『ファウスト』のワルツ」。9月末開催のリサイタルでも個性あふれる演奏を聴かせ、自他ともに認める石井の十八番ともいえる作品だ。先日のリサイタル時の演奏よりも全体的にテンポの揺れが少なかったようにも思えたが、その分、すべてのパートが丁寧に表現され、特にフィナーレに向けてのカタルシス的な大胆な感情表現が効果的に際立っていたのが印象的だった。

前半のプログラム最後は、ドビュッシーの小組曲。一台4手のための作品だ。演奏の前に二人のトーク。当夜のプログラムはよく見ると、確かにワルツ、ポロネーズ、後半もヨハン・シュトラウスⅡ世によるウィンナ・ワルツにラヴェルの「ラ・ヴァルス」と舞曲尽くしだ。そこで、「先日リリースされた石井のフルアルバム『TANZ』 (ドイツ語でダンスの意) を思わせるプログラム内容では……」と、髙木が指摘すると客席からドッと笑いが起きた。

ちなみに、このドビュッシーの小組曲は二人にとっては思い入れの深い作品だそうだ。出会いから14年。酸いも甘いも互いに知り尽くし、ともに留学先のウィーンで長い時間を共有してきた二人の絶妙なトークもまた会場の聴衆を魅了するに十分だった。

第一曲:小舟にて~たゆたうようなさざ波の静けさを感じさせる叙情性とドビュッシーらしいアンニュイな二面性が、二人のたおやかな息づかいによって客席にも伝わってきた。二人でともに舟遊びを楽しんでいるような雰囲気が微笑ましかった。

第二曲:行列~スカルラッティの同名の名曲を思わせるような作品を二人が息をぴったりと合わせ軽やかに演奏。二人とも童心に帰ったような少年のような姿が感じさせ、何とも可愛らしい。

第三曲:メヌエット~典雅な世界を品よく歌い上げ、第四曲:バレエ~コケティッシュでは細やかにテンポが揺れる曲を二人の一糸乱れぬ息のあった演奏で聴かせ、会場をほのぼのとしたあたたかな空気感で満たした。

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