[Alexandros]川上洋平、一夜の犯罪劇の一部始終を映した94分間ワンカット映画『ナイトライド 時間は嗤う』を語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】
撮影=河本悠貴 ヘア&メイク=坂手マキ(vicca)
大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、一夜の犯罪劇の一部始終を助手席から目撃する驚異の94分間ワンカット映画『ナイトライド 時間は嗤う』について語ります。
『ナイトライド 時間は嗤う』
――『ナイトライド』はどうでしたか?
「とにかくかっこよかった!」っていうのが第一印象ですね。これは文句なしの完全なるワンカット映画ということで。
――そうでしたね。
ワンカット映画ってだけで熱いものを感じてしまう私です。最近だと、この連載でも取り上げた『ボイリング・ポイント』とかね。あの映画は基本はレストランの中で展開されていて屋外シーンは少なかったけど、『ナイトライド』はほぼ屋外ということで大変だっただろうなあと。あと、ちょっと前の『1917 命をかけた伝令』もすごかったけど、複数回の長回しのカットを繋げて作っていて。『ナイトライド』は正真正銘のワンカット。痺れました。
――ロックダウン中に、北アイルランドのベルフェストで1日11時間のリハーサルを一週間やった末、6晩で全6テイクの撮影を行い、一番良いテイクを採用したそうです。
そうなんや。ワンカットを6回って気が遠くなるな……。
――ですよね。ロックダウン中で人気がなかったこともあり、毎晩22時半頃に撮影スタートして、24時過ぎには撮影が終了していたとか。
そっか。撮影自体はワンカットだから短いわけか。途中で警察に車を止められるけど、あれは実際に撮影中に警察に止められたらしいね。でもそのまま撮影していて。だから警察官の顔にモザイクかかってたんだろうね。ある程度は想定していたのかもしれないけど、役者魂を感じる一場面だったな。
――撮影した地域は地元の若者たちと警察との間で騒動が絶えない地域らしく、冒頭で少し映っていた、瓶を投げつけられていたのも実際起きたことだそうです。
あれも本物だったんだ!(笑)。あとちょっと思い出しのがトム・ハーディの『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』って映画でした。それはワンカットではないんですが、ずっと運転しながら演技していて、しかもトム・ハーディしか出てこなくて、それ以外の登場人物は全部声。なかなかシンプルだけど凝った映画だったな。
――まさに、『ナイトライド』のスティーヴン・フィングルトン監督はその映画を意識したらしいです。
あ、そうなんだ! すごい、ぽいなと思った。
――それと、麻薬密売人を描いたニコラス・ウィンディング・レフン監督の『プッシャー』を融合させたら面白くなるんじゃないかという発想から始まったとか。
マッツ・ミケルセンが出てたやつだ! なるほどね、繋がってくるな。いやー、面白かったな。
『ナイトライド 時間は嗤う』より
■色々起こるけど、主人公が安全な場所にいる展開じゃなくなった時にゾクッとした
――一番スリリングだったところというと?
最初、ワンシチュエーションなのかなと思ったんだけど、途中で車から降りて、麻薬密売の仲介役みたいな怖い人と対峙したり襲われそうになったりして、「これ、車の中だけで繰り広げられる映画じゃないんだ」っていう驚きがあった。『THE GUILTY/ギルティ』みたいに色々起こるけど、主人公は安全な場所にいて……みたいな展開じゃなくなった時にゾクッとしましたね。恐怖との距離が一気に近くなったというか。
――確かに。いろんな展開が起きるんだって予感しますよね。
外のシーンも割と長めにあったりするし。まさに『プッシャー』と『オン・ザ・ハイウェイ』って感じ。『THE GUILTY/ギルティ』もそうだけど、どれも寒い地域の映画で。閉塞感が漂っているのも共通点かもね。
――そうかもしれないです。あと、ハードボイルドな雰囲気が強めですよね。
そう。でも結構おしゃれだったよね。全体的な雰囲気とか、エンディングもそうだけどクールだった。
音楽がかかるタイミングも良かったし、音楽自体も良かった。Le Carouselの「It's All About The Balance」という曲がかかるんだけど、80年代のベルリンを彷彿とさせるような音で映画のムードにぴったりだった。全然情報がなくてエンドロール観返して調べたもん(笑)。
『ナイトライド 時間は嗤う』より