「歌舞伎オンデマンド」が英語副音声付き配信を3/1より開始　歌舞伎俳優・中村鴈治郎に配信への想いも聞く

歌舞伎の公式有料動画配信サービス「歌舞伎オンデマンド」にて、在留・訪日外国人向けに歌舞伎公演映像の英語副音声付き配信を2023年3月1日（水）より開始することが発表された。

本サービスは、日本の伝統芸能・歌舞伎を外国人の方にもわかりやすく、より身近に感じてもらえるよう、あらすじや衣裳、立廻り・見得などの歌舞伎独特の約束事について、内容の理解を助ける英語での副音声解説を付け、好きな場所・好きなタイミングで気軽に歌舞伎を楽しめるというもの。

配信ラインナップは、日本のシェイクスピアとも称される近松門左衛門が描いた心中物の傑作『曽根崎心中』(2009年4月 歌舞伎座上演）、絶海の孤島に残された男の孤独と悲劇をドラマチックに描き出す『平家女護島 俊寛』（2009年1月 歌舞伎座上演）ほか、過去の海外の歌舞伎公演でも反響を集めた人気作品全4演目が揃った。

『曽根崎心中』は、遊女お初と青年・徳兵衛の儚くも美しい恋の物語。一途な恋ゆえの葛藤から心中へと向かっていく姿が思わず観客の涙を誘います。鴈治郎は「好きなもの同士が最後は心中をしていくという、すごくショッキングなストーリーですよね。自ら命を絶つことは絶対的なタブーだと。しかし、それには理由があっていわゆるロミオとジュリエットのような“純愛”であるということなんですね」と作品のテーマを語る。本作は1953年に宇野信夫が脚色演出を加え復活上演、日本で社会現象を巻き起こすほどの反響を得た。徳兵衛の伯父久右衛門が二人の心中のきっかけとなった事件の裏側を暴いていく場面が追加され、「伯父さんの場面がついたことでドラマとして救われる部分ができたんですよね。イギリスで上演（2001年5月近松座上演）した際、このショッキングなストーリーが海外で受け入れられるか心配でしたが、ドラマとして認めてもらえたなと感じました。この作品は世界に通用する、皆様に楽しんでいただけるものだと思っています」と、海外公演での反響に触れながら、作品への自信をのぞかせた。

歌舞伎オンデマンドで『曽根崎心中』が配信されることについて、「（英語の解説があることで）お互いの気持ちを死ぬことでもって表すということがわかっていただけると思います。海外の方にも、そして日本にお住いの外国人の方にも副音声があることで歌舞伎を観ようと思っていただけるかもしれない」と、配信を通じて今後の歌舞伎の裾野が広がっていくことに期待を寄せる。また、「配信なら、今日はここまでにしておこうかと好きなタイミングで止められたり、自分の好きな時に観られたり、お風呂の中でだって観られるかもしれない、それっていいよね」とライブでの観劇とは異なる、配信ならではの歌舞伎の楽しみ方をすすめた。

「歌舞伎の魅力って、もう観ていただくしかありません！　歌舞伎というものの壁が無くなってくれればいいなと思う。やっぱり日本の誇るエンターテイメント、娯楽であるということをわかっていただければいいなと思いますね」。

なお、松竹公式動画配信サービス「歌舞伎オンデマンド」は動画配信サービス「MIRAIL（ミレール）」とシステム連携。「MIRAIL」内で無料の会員登録を行い、作品の視聴ページにて購入・決済手続きをすると、7日間何度でも繰り返し視聴できる。